06 ENDmarker.

 彼からの連絡は。無かった。

 通信端末は、よく分からなくて。さわるのをやめた。彼のことを思い出しそうだったから。


 結局。彼はいなくなる。どうせいなくなるのなら。わたしの前から消えるなら。あのとき、彼に殺されていればよかった。


 手に入れた自由。若さを浪費する権利。女としての全て。

 彼と比べれば、やるせないほどに。軽い。彼がいなければ、何の意味もなかった。


 バーの、屋上というかベランダというか。女どもはうるさいから追い出した。

 床。

 あのときのコインが、挟まっている。コイントスは、裏でも表でもなかった。だから殺した。自由を得た。若さのままに騒いで、そして彼に。


 結局。彼がいなければ、何も成立しない。


 夜。

 指を鳴らせば、彼が来てくれたり、しないだろうか。人差し指と中指を合わせて。

 ぱちっ、という音。彼のように、掠れた感じにはならない。


 ただ夜がそこにあるだけだった。

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