06 ENDmarker.
彼からの連絡は。無かった。
通信端末は、よく分からなくて。さわるのをやめた。彼のことを思い出しそうだったから。
結局。彼はいなくなる。どうせいなくなるのなら。わたしの前から消えるなら。あのとき、彼に殺されていればよかった。
手に入れた自由。若さを浪費する権利。女としての全て。
彼と比べれば、やるせないほどに。軽い。彼がいなければ、何の意味もなかった。
バーの、屋上というかベランダというか。女どもはうるさいから追い出した。
床。
あのときのコインが、挟まっている。コイントスは、裏でも表でもなかった。だから殺した。自由を得た。若さのままに騒いで、そして彼に。
結局。彼がいなければ、何も成立しない。
夜。
指を鳴らせば、彼が来てくれたり、しないだろうか。人差し指と中指を合わせて。
ぱちっ、という音。彼のように、掠れた感じにはならない。
ただ夜がそこにあるだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます