夜、指が鳴ったら (Hi-sensibility)

第5話

　夜。指を鳴らす。

「やったか？」

「やりました。全員」

「俺もだ」

　全員。殺した。

「晴れて自由の身だな」

「ええ」

　夜。

「あんまり嬉しくなさそうだな」

「あなたが」

　無言。

「あなたが、いなくなるような気がして」

「よく分かったな。これから海外だ」

　無言。

「そんな顔するなよ。これをやる」

　通信端末。

「今の若い者は、これで連絡とるんだろ」

「わたしも行きます」

「だめだ」

　無言。

「死にに行くわけじゃない。待ってろよ」

「うそつき」

「嘘じゃないって」

　無言。通信端末の光。

「つかいかたわかんない」

「若い者なのに？」

「うるせえじじぃ」

「あはは」

　通信端末。もうひとつ。

「俺のプロフィールを送信した。見てみろ」

　通信端末をいじる音。

「そう。そこの横のやつを、そう」

「は？」

「まぁ、世の中そういうもんだな」

「おいてめぇ」

「おおこわいこわい」