③ ラーメンの話

 これを語るのを忘れてました。

 そもそも僕がなぜラーメンに執着するのか。 


 まあもちろんラーメンが好きだからというのがあるのですが、問題なのはなぜ好きなのか、という話。

 それは僕の地元の文化が大いに関係しています。


 ちなみにここからの文章は僕が勝手に解釈して出力するものなのでソースとかはありません。悪しからず。


 僕の地元は九州の中でも異質で、いわゆる博多豚骨系統の影響を受けていないラーメンスープ、麺、具材で構成されています。

 あっさりした豚骨スープに中太麺、トッピングはもやしにキャベツ、それに焦がしネギが添えられる。豚が有名な県なのでどんなに外れのラーメン屋に入ってもチャーシューだけは美味い。ちなみに県外の人間は豚骨が主流だと思っているでしょうが、実はしれっとほとんどのラーメン屋にある味噌のほうが美味いという、そんな地元です。


 今でこそ県外資本のラーメン屋が入り込んできた結果、ここ10年で僕の地元でもラーメンの多様性が一気に生まれましたが、僕がまだ幼い頃は、上記の昔ながらの豚骨ラーメンを出すラーメン屋がほとんどで、4つほどの有名な屋号のラーメン屋を注進に(県外民からすればどこも似たようなラーメンにも関わらず)やれどこ派だと言い争いが起きるような時代でした。


 しかし僕の地元のラーメン文化は、その味に起因するものではなく、ラーメン屋という場所に対して根ざしたものがあります。


 僕の地元の昔ながらのラーメン屋は、言ってしまえばファミリーレストランと同等の場所なんですよ。カウンター席はもちろんなのですが、広い店内にそれ以外にテーブル席、座敷席が用意され、家族連れで来店することが想定されている。それも親子だけでなく、じいちゃんばあちゃん含めた三世代で利用できるような空間。家族総出で訪れ、そしてラーメンをおかずにごはんを食べる。家族で餃子をシェアする。ラーメン屋によってはラーメンだけじゃなくて豊富な種類の定食も用意されており、ラーメンを食べない人間のニーズにも対応できるようになっている。

 いわば、僕の地元のラーメンとは、家族団らんの味がするラーメンであり、ラーメン屋とは家族団らんの場なのです。


 外から来た濃い味のラーメンに慣れた人間からすれば、うちの県のラーメンはあっさりめで物足りないかもしれない。ラーメンは宗教なので人様の県のラーメンを否定する人間のことを否定する気はありませんが、この前提を無視して味だけ非難する県外民のことは心の底から軽蔑すると思います。はい。


 で、僕がなぜラーメンを好きなのか、という話なのですが、ラーメンというよりもラーメンを食べるという行為が好きなのです。

 僕のラーメン初体験は3歳のときです。じいちゃんばあちゃんに連れられて行ったのが最初で、幼稚園に入る4歳まで相当回数ラーメン屋に連れて行かれました。

 その結果、ラーメンを食べる=家族団らん=楽しいという思考回路が形成され、さらにそこからラーメンを食べる=楽しいと省略が発生し、趣味のひとつとしてラーメンを食べる行為を楽しむ僕が完成したというわけです。


 だから僕は美味い不味いくらいの評価はくだしますが、不味いからといって二度と行かないということは滅多にありません。なぜなら食べるという行為に楽しみを見出しているので、不味いからといってその興が削がれることはないからです。逆に「二度と行かない」というラーメン屋もあるにはあるのですが、それは「ラーメンは美味いのに店員の態度が最悪で楽しい時間が汚された」みたいなパターンしかないですね。


 浪人時代は原付を駆使して地元のラーメン屋を巡りましたし、大学時代は関西でも屈指のラーメン激戦区に住んだことで毎日のようにラーメンを食べ歩く大学生が完成しました。


 僕にとってラーメンを食べる行為は、映画鑑賞に等しき人生の中でも大切な趣味のひとつなのです。


 しかしクローン病という難病に冒された結果、僕の大切な趣味が取り上げられようとしている。

 しかも治らないと宣告を受けた。

 これが絶望せずにいられるでしょうか。


 かくして僕は、クローン病という診断を受けたあの日、おいおいと泣いたわけです。


 まあとはいえ、結局ラーメンは食べられている(食べられていた)わけで。実はラーメンを食べるためのリハビリみたいなこともやってますが、それは近いうちに書くことになると思います。


 さらに言えば、ラーメンが食べられなくなるというのは実はほんの序の口であり、ここから7年半が経過したときにさらなる地獄が始まるのですが、そのことをまだ2015年当時の僕は知る由もありませんでした。

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