② 発熱無限ループ

 僕の地元は九州なので、京都の大学に通うためにひとり暮らしをしていました。研究室に入ってからは学部の友人付き合いもめっきりなくなり、発掘のバイトをするためにTSUTAYAのバイトをやめた結果バイト仲間との付き合いもなく、そして当時は付き合っている子とかもいなかったので、マジで孤独でした。いや、サークルの人間との付き合いはあったけれども、僕の部屋まで来る人間はほとんどいなかったですね。

 

 正確な日付は思い出せないんですが、たしか10月5日前後くらいのことでした。突然発熱し、体温が38度台に上昇しました。

「あちゃー、風邪ひいちゃったか」と、そう思いました。


 疲れが出たのか、そのせいで風邪をひいたのか。もちろん思い当たる節はあります。11月下旬に開催される学祭に向けたサークルの機関誌作成にあたり、投稿作品の締め切りは9月末です。サークルの人間がその締め切りを守ることはほとんどないのですが、僕は創作狂だったので、8月末には提出しており、9月中に先輩方(4回生なのに先輩方という表現が気になると思いますが、とにかくうちのサークルは先輩方に恵まれていました)に一通り読んでもらい、それをさらに改稿したものを9月末に提出するということをやったんですね。創作ってのはなぜか夜中に筆が進むので、真夜中の作業が多くなりがち。だからそのせいで免疫力が下がって風邪を引いたんだろうなあ、と。


 そういえば、東京で弟の部屋でも40度近くなる熱発があったのですが、そのときは二日ほど寝たら直りました。あのときは原因不明でしたが、今回も同じようにしておけば大丈夫だろう。今回も熱以外の症状がないし、問題なし。

 そんな浅はかな考えでした。


 今でこそ何かあると医者にかかるような性格になりましたが、当時は熱が出たくらいで医者にかかるのはもったいないという人間でした。

 熱が出たときの対処法は、水分を取りまくってとにかく汗をかくこと。そう教えられて育ってきたので、近所のココカラファインで大量のアクエリアスを買ってきて、毛布にくるまって、汗をかきながら何度も着替えました。


 次の日の朝、嘘のように熱が下がっていました。


 ほらね、見たことか。なんてことはない。

 熱が下がったその日、元気に大学(というかサークル)へ遊びに出かけに行きました。


 その日の夜、また熱が38度台まで上昇しました。


 おかしいな。一度下がった熱がまた上がるなんて今まで経験したことがないぞ。きっとしっかりと治りきっていないのに外へ遊びに出たからか。ならばもう一度同じ手を使おう。

 熱にうなされながら、汗だくになりながら、朝になりました。

 結果、また熱は下がっていました。


 なんだったんだろう。一日くらい安静にしておくか。

 その日は家でゲームをしていました。たぶんゴッドイーターリザレクションの発売が近かったから、ゴッドイーター2レイジバーストをプレイしていたんじゃないかな、と。


 そして、また熱が上がりました。38度台。

 さらに朝になると、また熱が36度台まで下がりました。


 さすがにおかしい。上がったり下がったり。こんな風邪が存在するのか?

 そのときくらいから、なんかお腹も痛いかもしれないな、と思い始めました。


 自転車で五分もかからない場所に、インフルエンザの予防接種でのみ通っていた内科クリニックがありました。僕はそこに行ってみることにしました。

 一回目の診察で、症状を伝えると、風邪かもしれないけど、胃炎かもしれないですね、みたいな反応でした。一応血液検査をしてもらいました。血液検査はすぐにはわからないので、次の日もう一度来てくれと言われました。解熱剤だけもらいました。


 もちろんその日の夜も熱が上がり、そして朝には下がりました。


 次の日、血液検査の反応を見るためにクリニックへ足を運びました。

 炎症反応が10くらいありました。炎症反応ってのは、身体の中で白血球が頑張ってウイルスや細菌と戦っているときに上がる数値で、医療機関によって違うと思うのですが、だいた0.3以下くらいが正常値です。1を超えるとなんか微熱があるような感覚になります。それが10もある。

「どこかが炎症を起こしているのかもしれない」

 そんな当たり前のことを言われました。胃炎なのか何なのか。とにかく炎症を抑える薬をもらいました。


 熱が一週間以上下がりませんでした。

 そこから週に二回とかのペースで、同じクリニックにいってはいろんな検査をしてもらいました。甲状腺とかなんとか。全部違いました。


 一方、サークルでは、『修羅場』と呼ばれる、機関誌完成のためにサークル会員の部屋に押しかけて最後の編集作業を全員で行う作業が始まりました。僕は作品を寄稿している身ですし、さらに元編集長という立場でもあったので、毎日詰めかけました。感染性のものではないとは言われていましたが、他人に移したらまずいよなあ、と思ったので、マスク着用で。額には熱さまシートを貼って。金曜の夜に始まり、だいたい次の週の水曜とか木曜に終わります。その年は特に問題なく進み、週の中頃には終わったんじゃないかなと思います。

 その間もずっと熱は下がりませんでした。

 10月末、冬に向けて京都は寒くなってきます。


 そんな寒空の中、熱もあるのに、修羅場が終わったということで、サークルの先輩とGo!プリンセスプリキュアの新作映画を公開日に観に行きました。すごく良かったです。


 10月末、ゴッドイーターリザレクションも発売されました。熱がある中、ちまちま進めていきました。これも素晴らしいゲームでしたね。


 このころから、発熱、腹痛以外の症状として、まともな食事ができなくなるというものが顕現し、僕を苦しめ始めました。

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