春霞
松嶋豊弐
壱
薄刃の
狂える鳥居の向こうに
「糸切り鋏が紡ぐよう、傀儡が回るよう、
うなされる夜の夢は誰にも分かれしまへんよってに」
お歯黒の笑みを残し、巫女は消えた。
あゝ、我が
生皮剥がされた我らはけだものでおまっしゃろうか。
おゝ、帝国の遠き星よ。見てはりくださりませ。
人の過ちにより、甘う腐りゆくが如く遂に西空の黄昏は潰えます。
息も耐えだえに、
この世すべては我らが
愛おしみの心は、流した涙は……血よりも濃い。
怨みも憎しみも枯れ果て、
「春は死ぬによい
鏡向こうの星影は
麗しの常世で巡り会うことを誓い、
痛まぬようにと、せめてもの慈しみをかけん。
さいなら、さいなら……。
勾玉双つは
春霞 松嶋豊弐 @MatsushimaToyo
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