第3話 洗うよろこび

//SE:かぽーんと風呂の音

//※風呂場なので全体の台詞がくぐもって聞こえます

//ボイス位置:真後ろ


【大家さん】

「ベタつきすぎ、ボサボサすぎ、匂いもどぶ。

 不潔欲張り三点セットコンプリートおめでとう」



【大家さん】

「ああ、言っておくけど、けなしているわけじゃないわよ。

 汚いのなら、とことん綺麗にすればいいということ」



【大家さん】

「まあ、不満な顔をしたということは

 綺麗にしたいという意思があるから、まだいいけど……」



【大家さん】

「もし、これでどこ吹く風みたいな態度を取っていたら、

 それこそバカ、アホ、マヌケのレッテルを貼り付けつつ

 文字通りの『しつけ』をするつもりだったけど……」


//ボイス位置:真後ろ⇒左

//演技:耳元でサディスティックに笑いつつささやき


【大家さん】

「綺麗になりたいのなら、髪も私に任せて、

 安心して『しつけ』られなさい♪」


//ボイス位置:左⇒真後ろ


【大家さん】

「さて、まずはシャンプーね。

 私が普段使いしてるものを使うわ」


//SE:近くに置いてあった炭酸泡シャンプーのエアゾールを手に取る

//SE:エアゾールから泡を手のひろに出す

//SE:主人公の両耳元で手に出したシャンプーをランダムで軽く泡立たせる


【大家さん】

「どう? 両耳で聞くマイクロ泡の聞き心地は?

 シュワシュワ、パチパチと弾けた音が気持ちいいでしょ」



【大家さん】

「今から不健康極まりないこの髪にまんべんなくつけ、

 しっかり染み込ませて洗い流してあげる」



【大家さん】

「それを終えたら……その先は秘密ね♪

 まあ、今はおとなしくシャンプーされなさい」


//SE:主人公の頭全体に炭酸泡シャンプーをつける

//ボイス位置:右、真後ろ、左 ランダムに移動してシャンプーをする


【大家さん】

「右……左……左……右……。

 爪はもちろん……立てないわ」



【大家さん】

「爪を立てると洗った気はするけど、実際は頭皮に傷をつけるてるの。

 だから、こうして髪に染み込ませるだけ……」


//演技:丁寧にシャンプーを頭皮に染み込ませる


【大家さん】

「…………」


//SE:主人公の頭全体にシャンプーをつけ終える


【大家さん】

「これぐらいかしらね。

 それじゃあ、お待ちかねの『その先』をやるわよ」


【大家さん】

「それは今までと違って、

 文字通り刺激と痛みがたーっぷりな『しつけ』ね。

 具体的になにをやるかというと……」


//ボイス位置:左

//演技:ささやき 可愛らしく言う

【大家さん】

「し・あ・つ♪」


【大家さん】

「指で圧すと書く、ワンちゃんがだーいすきなあの指圧。

 さあ、こっちも張りきって圧してあげるわね」


//SE:頭皮マッサージ

//ボイス位置:右、左、ランダムに移動しながらシャンプー&頭皮マッサージ

【大家さん】

「右にグッグッグッ……左にグッグッグッ……。

 今度は左にグリッグリッ……右にグリッグリッ」


//演技:熱心に力を込めて指圧

【大家さん】

「…………」


//演技:鏡越しから痛がる様子を見ては、目が爛々として少しハイテンションになる

【大家さん】

「あはは、苦痛に満ちた顔にきったないうめき、最高ね♪

 ほら、こことここも痛くてたまらないわよね~?」


//演技:熱心に力を込めて指圧

【大家さん】

「…………」


【大家さん】

「あら? うめきがいきなり止まったわね。

 まだ良くなってないのにおかしいわね?」


【大家さん】

「まさか愚かにもやせ我慢?

 へぇ~そういうことするのね。なら――」


//ボイス位置:右

//演技:サディスティックにささやき

【大家さん】

「ますますうめき声が聞きたなるでしょ」


//ボイス位置:右⇒真後ろ

【大家さん】

「そら、うなじから後頭部へ変えると……」


【大家さん】

「きゃははは♪ もっとうめいた。

 そら、ここも割り増しで指圧~♪」


//演技:熱心に力を込めて指圧

【大家さん】

「…………」


【大家さん】

「ん、痛みに……慣れてきたかしらね……。

 まあ抵抗せずとも痛みはいずれ消えていくのが世界の真理」


//演技:熱心に力を込めて指圧

【大家さん】

「…………」


//SE:頭皮マッサージ終わり

【大家さん】

「おしまい。頭全体が軽くなったでしょ」


【大家さん】

「そしたら、頭は終わり。次は――」


//SE:主人公の両耳を引っ張る

//ボイス位置:背後⇒右耳元⇒左耳元

//演技:最初の「こ」は右耳元、最後の「こ」は左耳元に移動してささやき

【大家さん】

「こ・こ♪」


//演技:心底サディスティックに笑う

【大家さん】

「引っ張った瞬間、うめきが止まないこり固まったこの耳♪」


【大家さん】

「耳には全身の臓器に対応するツボが集中しているの。

 おまけに体のバランスを保つのも耳と言われているでしょ?」


【大家さん】

「つまり耳を揉みほぐせば、全身もほぐれるといえる」


【大家さん】

「さらに風水じゃ、運気が集う器官なんて言われてる。

 ケアがおろそかな耳はもれなく運も悪い」


【大家さん】

「迷信だとしても、耳元は意外と人が見てるの。

 なら、しっかりケアしたほうがいいに限るわよね」


【大家さん】

「そんなわけで、次はシャンプーの泡を利用して、

 耳をもみほぐしつつ、耳に貼り付いた汚れを取るわね」


//SE:頭についた炭酸泡シャンプーの泡を指で取り耳につける

//SE:炭酸泡シャンプーで耳を洗う&マッサージ

【大家さん】「付け根の部分、汚れがたまっているわね。

 なら、指先で……しっかり泡を塗り込んで……」


//演技:指と泡を使って耳を洗浄しつつ、丁寧にマッサージ

【大家さん】「…………」


//演技:痛がる主人公を見ながら声を弾ませる

【大家さん】

「あ~♪ 痛すぎて死んじゃいそぉ~ね~。

 自分を大切にしないからこの結果になったのよ。まさに――」


//ボイス位置:真後ろ⇒右

//演技:皮肉を込めてささやき

【大家さん】

「耳の痛い話ね」


//ボイス位置:右⇒真後ろ

【大家さん】

「なーんてね。若干違う気もするけど、

 とにかく自分を労わらないからこうなる」


【大家さん】

「そら、今度はこねくり回したり……ギョウザにしたり……」


//演技:主人公の耳を曲げたりしながら楽しそうにマッサージ

【大家さん】

「…………」


//演技:手ごたえを感じながら様子を探るようにマッサージ

【大家さん】

「ふむ……これだけほぐせば、体もほぐれたんじゃないの。

 なら、もう少しだけほぐしてあげれば……」


//演技:熱心にマッサージ

【大家さん】

「…………」


//SE:耳のマッサージを終える

【大家さん】

「終わり。最後らへんはあまり痛みも覚えなかったでしょ?

 これぐらいは自分でも簡単にできるから、自分でやりなさい」


【大家さん】

「そしたら、綺麗にシャンプーを洗い流すからね、

 せいぜい目が大惨事にならないよう、しっかり閉じてなさい」


//SE:シャワーからお湯を出す

//SE:温度調節ハンドルをひねり、シャワーの温度を調整

//SE:シャワーを主人公の頭にかける

//演技:シャワーをかけながら会話

【大家さん】

「……右から頭にかけて……左へ……ゴシゴシ……。

 頭皮や髪が……さっぱりとしていくように……」


//演技:シャワーを丁寧に楽しくしてあげる

【大家さん】

「…………」


【大家さん】

「顔についた泡も……しっかり洗い落として……」


//演技:シャワーを丁寧に行う

【大家さん】

「…………」


//SE:シャワーを止める

//SE:用意してあった乾いたタオルを手に取り、主人公の顔や頭を拭く

//演技:熱心に主人公の顔や頭を拭く

【大家さん】

「…………」


//SE:タオルで主人公の顔や頭を拭き終える

【大家さん】

「……はい、これで拭き終えたわ。

 さあ目を開けて、鏡に映った自分の姿をご覧なさいな」


【大家さん】

「ね? シャンプーしただけなのに、

 髪がずいぶんと健康的なものになったでしょ?」


【大家さん】

「あとはしっかり整えれば、それだけで信頼や良い印象を勝ち取れる」


【大家さん】

「なにより自分自身も気分が心地いい」


【大家さん】

「その心地よさは自分次第でいつでも作れる。

 その気持ちをしかと心に留めておきなさい」


//SE:『お耳』で主人公の耳を触る

【大家さん】

「さあ髪が綺麗になったら、引き続き

 『お耳』をさっぱりしていくわよ」

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