本作は、鬼の黄平が鬼の住む山里を追放されるところから始まります。山の主である白い大蛇から山を救うためにと依頼されますが、黄平が応えたのは山を救うためだったのか。読めば読むほど、黄平が抱く、居場所を失った苦悩、居場所を求める渇望が迫ります。果たして心中にあるのは、皆を救う博愛なのか、自分を救うエゴなのか。答えは出ません。それでも動かないではいられません。それが自ら進んで生きることですから。読むと衝動と苦悩の塊をぶつけられます。そして読者は心地よく倒れます。