第12話 心臓を取ったら異変が
さて、心臓をくり抜けそうな敵を探しに深層の奥の方まで進んできているのだが……。
『誰ならくり抜けるん?』
『誰でも無理なんですか』
『ってかDランクダンジョンのモンスターの心臓とるなんてそんな無謀な…』
『戻るなら今のうちだぞ!!【氷の王子】!!』
「戻りませんから。さっさと行ってくり抜かないとですよねぇ…!」
『怖』
『ニマニマしてる』
『とにかく怖い』
『悪魔』
『【氷の王子】、心の中が氷説』
『ある』
『たしかし』
『たしかし…?』
『たしかし』
『たしかに』
『↑おい流れ壊すなァ…!!』
「俺の、心の中が、氷…?いやいや、あたたか~い太陽に包まれてるみたいな感じですよ?」
『自分で言う人はそうじゃない定期』
『今の発言でそうではないことが確定』
『流石にちがう気がする』
『いやいや!!レンくんは優しいよ!!【レイア】』
『恋は盲目』
『恋は盲目やね……』
『やはりと言うべきか』
『違う!!優しいの!!【レイア】』
……バレたか。俺がそこまで優しくないっての。
それよりも、だ。いいキャラが来ましたねぇ…! 俺が今までに何回も心臓くり抜いてる格好の敵。
そう、マッスルオークだ。
筋肉の鎧に覆われた、顔が緑色のでっかいやつ。まぁ大きさは3メートルって言ったところか。
「さぁてと、俺がいつも心臓を頂戴してる敵が来ましたよー?」
『……』
『えっこれ?』
『なにこれ。オークの突然変異?』
『いや違う、Dランク以上の深層にしか出ないと言われてるマッスルオークだ』
『なんでこれから心臓とるって言ってるの?【氷の王子】は?』
『無理ですね、いや、無理だろ!!いけたら俺が1日街を上裸で歩いてやる!!』
『↑お前、言ったからな?』
『はい言質とったー!』
『なんかこれ見て急に【氷の王子】応援したくなってきた』
「いやいや、こんな宣言みなくても俺のこと応援しててほしかったんだけどなぁ…! あと、マッスルオークであってますね、まぁ見ててくださいよ!」
マッスルオークDランクだから、こんなんも倒せなかったら俺Cランク名乗れねぇからなぁ!!
あと上裸ニキが逮捕されないことを祈って……!
――さぁ、行こうか。
「みなさーん!! こいつは、皮膚が分厚いので基本的に魔法が通りません!! ほら、こんなふうに!」
俺はみんなに魔法が通らないということを見てもらうために、手始めに『氷結』をマッスルオークへ放つ。
『うわァ…!』
『ええ?弾いてるじゃん』
『怖ァ…! え、これ倒すの?』
『無理じゃね?』
『うん、え……』
『俺、上裸にならなくていい説【上裸ニキ】』
「あーいや、ちゃんと上裸になってもらいますからね! さて、けどですね、こんなマッスルオークにも弱点がありまして…。それが、脛ですね」
『脛…?』
『なにそれ』
『脛なんて当たらねぇだろ』
『え??脛??』
『脛に魔法当てるの??いや的小さすぎない??』
「うん? まぁ接近すればいいですからねぇ…!」
さて、と。そろそろ心臓くり抜きに行かないとな…!
“ヴォォ!!”
なんて大きい声で叫んで俺のことを威嚇してはいるが、所詮はDランク。
俺はCランクだから、こんなところで苦戦することはないんだよなぁ…!!
こいつの弱点は脛だ。そして、他のモンスターに比べて相対的にスピードは遅い。
つまり、思いっきり距離を詰めてしまえばいいんだよな。
「――『神速』」
ということで、まず一発。
「みなさん、いいですか?こいつはスピードが遅いので、一発ジャブを入れましょう!するとですね……!!」
“ベリッ!!”
「こんなふうに、こいつの分厚い皮膚が破れます!!」
『うおおお!!』
『すげぇ!!!』
『これ新しい攻略方法なのでは…?』
『いや、そもそも攻略されてない件について』
『それはそう』
『ということはこれから倒せる人が出てくるかも…?』
『いや、そもそもCランク以外は深層にたどり着けねぇだろ』
『あー?ってことは最初で最後の攻略者?』
『さす【氷の王子】』
『あぁ…!俺のだらしねぇ体が…!【上裸ニキ】』
『もう諦めろ』
『ちゃんと証拠上げろよ』
「はい、ここまできたらもう消化試合ですね!心臓部分以外を凍らしましょう!!『――氷化』」
……えーっと、上裸ニキには申し訳ないけど、みんなに心臓取り出せるって見せないといけないからな、許して??
あと、え?マッスルオーク攻略されてないってまじ??こんなに雑魚なのに??
『うわァ…!』
『凍らせる場所まで選べるのやばくね?』
『一部分を除くとかできるんだ…!』
『これ、商業に活用できそうじゃね?』
『そう…!そうやけど、そもそも同じ練度、同じ技術でこんな事ができる人が【氷の王子】以外にいるのか』
『あーそっか。【氷の王子】が特別なのか』
『そう!私のレンくんは特別なの!【レイア】』
なんかレイアさんコメント欄の人たちに無視されるようになった?まぁいいや。
「よし、これで心臓以外が凍ったので動きも止まりました!心臓くり抜いていきましょう!!あ、こういうのが苦手っていう人は気をつけてくださいねー!!」
さぁてと。マッスルオーク、皮膚が剥がれたとはいえまだ意外と硬いんだよなぁ…。
だからここは、
「では!まず胸に穴を開けていきますねー!!『――氷柱』」
『ここでも氷柱か!』
『たしかにそれなら穴開けられるか』
『それにしても氷魔法って万能だな』
『な、床一面凍らせたら移動早くできそう』
『たしかに!! ……結局【氷の王子】がいないと成立しないけど』
「じゃあ穴が空いたので、心臓くり抜いて行きましょうー!!まぁ、普通に剣でいけますよね」
『いけない』
『無理』
『常人は力が足りないから』
『無理だぞー!!』
『……お?やっぱり俺上裸ならなくてもいい?』
と、コメント欄の人々はやっぱり俺のことまだ信じてないみたいだな。
うん、まぁまだ俺色んな人にみられて配信するの初めてだしな。
じゃあ、今回の配信を通じて信じてもらおうか!
「はい、そうこう言ってるうちに心臓とれましたね!」
『………』
『……』
『なぁ、?【氷の王子】?知らないかもしれないけどさ、それって人類史上初の快挙だぜ?』
『いやそれな?たぶんそのうち国からよばれると思う』
『いや呼ばれないとおかしいだろ』
『俺が国からお呼ばれする説【ガチホモニキ】』
『お前は警察だよ笑笑』
『警察に行くのは俺定期【上裸ニキ】』
『草』
『はよ警察行け』
……あぁ。ガチホモニキ、上裸ニキよ永遠に。
「えええ!?そうなんですか!?……呼ばれたくないんですけど」
『草』
『草』
『完璧に国のことめんどいって思ってて草』
『頑張れよ……』
「まぁはい、頑張りますねと…。」
俺がマッスルオークの心臓をとり終えて、なんか人類史上初の快挙をしたところで配信を終えようと思ってたんだけど……?
“ドォォン!!!”
どうやらそれは許してくれないみたいだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます