第10話 深層ワープの裏技
実は俺には、配信者として有名になったら一回やってみたかったことがあったんだよな。
それは――
「一気にダンジョンの深層まで降りる方法ー!!」
ダンジョンは、上層、中層、下層、深層の4つに分かれている。
それを書いた順に踏破していって、ようやく深層に到達することができる。
けど、俺はそれを全部無視していきなり深層に行く方法を知っているのだ。
『うん?』
『なんか良く聞こえませんでした()』
『なにそれ』
『そんなんできるわけねぇだろ!!徒歩じゃねぇと行けねぇって相場が決まってる!!』
『いやいや、え?なに?そんなんあるん?』
「はい、まぁ聞こえなかった人のためにもう一回言っておくと、ダンジョンの深層に一気に飛ぶ方法です!!徒歩じゃなくても、行けます!」
まぁみんなは徒歩じゃないと行けないって思ってるらしいな。
それは常識。普通なら。けどもし、みんながやってみてもない方法をとってみたなら?
「じゃあ早速行きますねー?」
『いやいや、ないだろ?』
『えっなに最初の配信でCG使うん?』
『うわぁ…。見損ないました』
『えええ……できるの??』
「よーく見といてくださいね??まずは、ダンジョンの上層真ん中に行きます!」
『え?』
『上層にはなにもないだろ…?』
『いやいや、そもそも上層でも苦戦すること多いじゃないですか!』
『……なにをするんだ…!』
よしよし、みんな何がなんだかわからずに混乱してるな…?
そう、そっちのほうが衝撃が強いだろ?何て言ったって、これは俺だけの方法だろうから。
常識を打破した俺だけの技。のはず。
「そして、そこの下の壁を破壊します!!」
『……うん?』
『いや、毎回うん?しか言えてないけどほんとにうん?』
『できっこない、引き返すなら今のうち』
『やめといたほうがいいんじゃ?』
『そんなんだめだろ!!いや!壊せねぇって!!』
「まぁまぁ見ててください?『――氷柱』」
『うおおお!!!』
『【氷の王子】、氷の技だー!!』
『かっけぇ…!!』
『【氷の王子】の名にふさわしい…!!』
『さすが!!』
『かっけぇって!!』
コメント欄が今日1の盛り上がりを見せている中、俺はほんの少しの力を入れて『氷柱』を発動する。
今まではこれで壁破壊されたからなぁ…! 『氷柱』は先端が尖ってるから壊しやすいんだ!
「ほら、壊れましたよね?」
『うおおお!!!』
『すげeeeeeeee!!』
『すげぇ……』
『え?ダンジョンの壁って壊れんの?』
『普通はないだろ』
『⚠普通はダンジョンの壁は壊れません』
『まぁまぁ?? ダンジョンの壁って壊れますよね?? うん、俺知ってたぞ?』
『まぁ…? 俺も知ってたぞ?』
『笑笑』
『嘘つきしかいないよこのコメント欄』
「けど、ここから深層まで降りたら落下死すると思いませんか?」
『それはそう』
『いやまあ穴開けただけなら意味ないもんな』
『普通にそれは気になる』
『たしかになぁ』
『けど、耐える方法なんてないよな?』
「――耐える方法、ありますよ??」
『え』
『え』
『知ってた』
『まぁ【氷の王子】だしぃ…?』
『さっき壁壊されたからな、もうなにされても驚かないぞ…!!』
『うん、驚かないから』
『よし、どうするか言ってみろ!』
「うーんじゃあ、驚いてほしいからみんなが思ってる方法教えてもらっていいか?」
『落ちる。そして回復薬を使う』
『それもう死んでて草』
『うーん、?なんだろう…?』
『頑張る』
『どうにかする』
「おうおう根性論ばっかりだな…!まぁ、全部違いますよね!」
『じゃあ何なんだよ()』
『あ! 人を下敷きにして耐える!!』
『↑それはやべぇ』
『結局ふたりとも死ぬだろそれ笑笑』
『俺の屍を超えて行けっ…!!』
『すでに死んでて草』
「はい、まぁすでに死んじゃったリスナーさんの屍を超えていくのではなく! 風魔法を使うんです!!」
『……?』
『やばい。この配信始まってから言ってること半分くらいわかんねぇ』
『日本人に理解できる話ししてもらってもいいですかね?』
『ねぇ風魔法使ってなにするんですかね?』
『怖い怖い風魔法は敵倒すために使ってくれ…!』
「うい~! じゃあ行きますよ…? 画面酔いは注意です!! では!!『――竜巻』」
俺は風魔法を提供すると同時にあけた穴の中に飛び込み、急いで下に向けて『竜巻』を撃つ。
そう、竜巻。そこに自ら入ることで、落ちる威力を軽減するんだ。
その分目が回るのはご愛嬌ってことで。
『うわっ!?』
『竜巻!?』
『……落ちたぁぁぁ!!!!』
『あああぁぁぁぁ!!!!』
『怖いいいいい!!!!!』
『やめてぇぇぇぇ!!!!』
『ああぁぁぁ!!死ぬぅ!!!!』
コメント欄は阿鼻叫喚になってるけど、俺の方はそろそろ集中しないと…!!
あと少し…!あと少しで竜巻に入るぞ…?
よし!竜巻に入った俺は、まず少し竜巻に巻き込まれた後、下にどんどん向かう。
竜巻に逆らえれば、こんなの容易いことだ。
……よし!! 行けたぞ!! いつも通りに成功できた!!
さあさあコメント欄の反応は…?
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