第2話 有名配信者は俺の唯一のファン

「ありがとうございました! 助けてくださって!!!」


 俺がキングスライムを倒したあと、そう言って近づいてきたのは、女性の方。なかなかかわいいな?


 揺れてるし。どこがとは言わないけど。


「いや、当然のことをしたまでですよ。」


「それでも、ありがとうございました。あ、配信してらっしゃるんですか??」


「そうなんですよ…。全然登録者はいないんですけどね。」


「あー。名前を聞かせてもらっても?」


「レンです。」


 ……教えないほうが良かったかな?恥ずかしいもんな。1人とか見られるの。同接0だぜ?絶対笑われるに決まってる。


 そんなことを考えている間も、名前も教えてしまったから目の前の配信者さんは俺の名前を調べている。


「あ! 見つけました……アハ」


 あれ?? 見つけるの早くないか??


 ……それと、やめろ。そういう反応って心に来るんだよ。まじでやめてほしい。これだから言いたくなかった……


 けど、この後目の前の方は衝撃的な行動に出る。


「私の配信をみてるみなさん! レンさんですよ?? 調べてチャンネル登録してあげてください!! あと、この事をバズらせてください!!」


「えぇ!?いやいや、そんな宣伝させるなんて申し訳無い…。」


「だって…!!私の命の恩人ですよ!?この後まだお礼するつもりだったんですから…!じゃあ行きますよ!?」






 _______






「ってことで、改めて、私を助けてくれてありがとうございました…。」


 その後、ダンジョンの外に行って、改めて目の前の配信者さんからお礼を言われる。


「それはもういいんですけど…。まず名前を教えてもらってもいいですか…?」


「あー、そうですねぇ…。」


 そこで一旦言葉を切った彼女は、ニヤッとしたのち、正体を明かしてきたのだ――


「私は、レイカでもあり、そして配信をするときはレイアっていう名前で活動してますよ?」


 ……? え? あの俺のファンの??


「すみませんもう一度。」


「私は、ずーっとあなたのファンだった、レイカ、の中の人ってことですよ?」


 なんかこの人変なこと言ってるなー? あれあれー? 俺に助けられて頭がおかしくなったのかなー?


 そんな、そんなわけないじゃない、俺のファンの正体が、あの有名な配信者であるレイアさんだったなんて。まぁレイアさんの顔見たことないから知らなかったんだけど。


 そしてうん、今のはきっと幻聴だな、よし。早く家まで送り届けて帰ろう。


「俺に助けられておかしくなったのかも知れませんけど、今日のところは早く帰りますよ??」


「……おかしい? 私、間違ったこと言ってますか??」


 ……そう。まじで目の前の……レイアさんか。レイアさん、ほんとうに間違ったことは一言も言ってないんだよな。多分、おそらく、メイビー。


「いや……とりあえず、家まで送ります。その道中に色々話しましょう。」


 ここで話していてもただ時間が無駄になるだけだと判断した俺は、一旦家まで送ることを提案する。


 まぁレイアさん、嫌そうな顔してたけど、俺のいうことに従ったほうがいいって思ったのか、文句は言わずについてきてくれた。






 _______






「……ふむふむ。つまり、レイアさんは俺の固定視聴者さんだった人の中の人だったってことですね?」


「そうそう!! だから今日会えて……キャー!! って感じなんです!!」


 ……レイアさんの家に向かっている途中、改めてレイアさんからファンだということを聞く。


 めちゃめちゃ嬉しい。うん、嬉しいんだけどね…?


「それはわかったけどなんでわざわざサブアカウントで…? 普通にメインじゃだめだったのですか…?」


「そんなの! 迷惑かもしれないって思って! だってあなたのことが……す……なんでもないっ!! とにかく!! 今日はお礼するから私の家に泊まっていって!!」


「いやいや!! そんな…!」


 俺男だぞ?わかってるのかこの人は…。


 たしかに俺は理性を強く保っていると自負しているが、(童貞なだけ)そんな、女の人の家に泊まるなんて…。


 しかも、揺れてるし。


 ……うん、だめじゃねぇかな、やっぱりさ。


「いいですから!! ほら! ここ私の家なので!!」


 ……と、そのまま家に連れ込まれてしまったのだった…。


 ―――うん!? 家に連れ込まれた!? 何が起こってるの!?

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