無名配信者である俺の異名は【氷の王子】〜有名ダンジョン配信者を助けたのだが、それ全部仕組まれてたってマジですか!? 仕方ない、こうなったら世界中にこの異名を轟かせてやる!〜

如月ちょこ

有名配信者を助けたけど、それが全部仕組まれてた上に配信をわざと切り忘れてたとか聞いてないって…!

第1話 底辺の俺、ヤンデレの私

 「全部、全部仕組まれてたのかよぉっ…!」




 

________




 




 世の中には、20年ほど前にダンジョンというものが出来た。


 そこからは、石油やレアメタルなどなどの鉱産資源が多数採れ、ダンジョン大国がそのまま世界での大国となっている。


 そんな世の中では、ダンジョンの中の様子を配信する『ダンジョン配信者』という職業が出来た。


 ヨーチューブというサイトで、リアルタイムで配信をするのだ。


 たまには放送事故も起こったりするが、それもまたスリルだと人気を博している。


 そして今では、ダンジョン内から鉱産資源を採集できるダンジョン探索者の力が年々強くなってきている。


 最近聞いたところだと、なんかダンジョン探索者出身の国会議員まで誕生したとかなんとか。




 そんな中で、俺はダンジョン配信者をしている。……底辺中の底辺だけども。なんで配信者になったかって…?


 それは――妹のためだ。妹は、重病にかかっている。


 『体温上昇病』、日々体温が上がっていく病気で、早いことだと2年くらいで死に至る。また、遺伝性の病気だとも言われている。


 そして――完治の方法はない。なったら最後、不治の病だ。


 けど、進行を遅らせる方法はある。今は、妹が発症してから4ヶ月くらい。だから、まだまだ進行を遅らせる方法を取ることができる。


 それをするためには、お金が必要なんだ。それを集めるためにダンジョンに潜っている。レアアイテムや鉱産資源とかを集めてな?


 それで、配信したら伸びるかもしれない、儲かるかもしれない。今ってダンジョン配信が人気だし。


 そう思って始めたんだ。


 ちなみに、お母さんはいる。いるけど、妹のお世話をしているんだ。


 そして、お父さんは、亡くなった。


 妹と同じ、体温上昇病で。


 


 まぁそれはよくて、俺の登録者は脅威の1人。


 ダンジョン配信者は軒並みチャンネル登録者が最低でも4桁に到達している中で、俺はまだ1人だぞ?


 登録者が一桁のダンジョン配信者なんてたぶん探してもいないぜ?


 それくらい、俺は逆に珍しい配信者なのだ。


 最近は、一桁だということを逆にアイデンティティにしてチャンネルを伸ばしていこうかな?とも考えている。自虐ネタだよな。


 けど、そんな俺にもファンがいて。それが、さっき言った1人。


 名前は、『レイカ』さん。


 そして、その人は俺が配信を始めたらすぐに駆けつけてくれるのだ。


 いい人だよ、ほんと。


 その人がいるから、俺はダンジョン配信を諦めて、お金を稼ぐこと、その一本に集中できずに今日も配信を始めるんだ――






 _______






 私は自分で言うのもなんだけど、超絶有名ダンジョン配信者のレイア。なんと登録者は85万人。


 えぇ、ダンジョン配信者の中ではトップね。


 そんな私は、世間のファンたちからは同じダンジョン配信者さんと仲良くして、日々楽しそうなんだろうなー。なんて思われてると思う。


 けどね、そんな私は好きな配信者がいるの。


 しかもその配信者は、まだ


 名前は『レン』。彼はイケメンなのに、なぜかチャンネル登録者が1人と昨今のダンジョン配信者の中では稀に見る少なさなのよ。


 ――ワタシだけど。


 いやいや、けどね?私はその才能を見抜いてる。


 彼は日本の中でもトップレベルに強いわ。まだ本人はそれに気づいてないみたいだけど。


 だから私は、彼を応援することにした。


 ヨーチューブチャンネルもサブを作って、彼のチャンネル登録者を1人増やした。……もともとが0だったから1人だけなんだけどね。


 それで、ずーっと配信をみていたら、彼が時折見せる笑顔が眩しくて。


 もう私は彼の虜になった。


 そして私は考えたの。私が最初に見つけたこの配信者を、どうやったら有名にできるのかなー?って。


 私が配信でレン君を紹介する?? いやいや、それじゃあ意味がないんじゃないの?


 それで何人の人がレン君のことを登録してくれるのか。それに、せいぜい私が宣伝したならいつもの私の宣伝力。


 それじゃ、嫌なの。


 私は彼を有名にしたい。それこそ、ゆくゆくは私を越えてもらうくらいに。


 だったら、そんな簡単なことじゃあいけないと思う。バズらせる、そして彼を伸ばす。


 なら、簡単。話題を作ってしまえばいい。


 そこで思いついたのが、ってこと。


 そう、私を助けた得体のしれない配信者、絶対に注目を浴びるでしょ?


 そしたら彼は一躍有名になれる。


 えぇ。私は彼のためなら何でもするわ。だから自分の命を危険に晒すのも構わない。


 もし彼が私を助けてくれなくても。私は仕方ないって思ってる。


 彼を信じてるのはほかでもない私だから。


 あ!彼が配信始めたわ。


 いい風吹いてるんじゃない?よし、行くわよ!!私も配信をつけて……っと。


 けど私の彼が皆に知られたら変な虫がついちゃうかもしれないわね。


 いやいや、そしたら私が既成事実作って自分のものにするから。


 「えーっと!?君はそのダンジョンにいるんだね?よし、私が君を有名にしてあげるから…!待っててね?レン君??」








 _______






「こんちはー!レンです。今日も配信やっていきますよー!」


 俺がきたのは手頃なそこら辺にあるダンジョン。


 ここなら俺が死ぬこともないし、何よりここはドロップアイテムが美味しいのだ。ちゃんと鉱産資源もあるし。


 売れば1日で2万円位は稼ぐことができるんだ。まぁ、深層のアイテムは使い道が多いから売らないけど。しかも、Dランクだぜ? ここのダンジョン。


 Dランクなんて目つぶりながらでも勝てるレベルなんだ。


 だから今日もきてるんだけど……?


 いつものレイカさんがこないなぁ…? いや、さっき一瞬だけちらっと一人来たのはわかったんだけど、すぐ抜けてったから名前が見れなかった……。


 こんなこと今までなかったんだけど。なんでなんだ?


 なに? ついに俺レイカさんからも見限られたの? チャンネル登録0になるの!?


 それ逆にすごくないか!?


「……とまぁ今日もいつものとこ入りますよ。まだ人来てくれてないですけど……」


 と言って、Dランクダンジョンの中へ入っていく。


 すると、何やら今までにこのダンジョンでは見たことがない配信者の人がいる。


 あぁ。あの人もどうせ俺より登録者がいっぱいいるんだろうなぁ…。


 羨ましいや。


 なんて思いながら俺はその配信者さんの邪魔にならないようにダンジョンの奥へと進もうとしたのだが…?


 なぁちょっと待てよ。あの配信者さんの後ろに、モンスターいるよな?


 なんかでっかいやつ。……あー。このダンジョンだったらあれかな、キングスライム。


 ……いやそんなんじゃなくて!! 助けないといけねぇじゃんか!!


 俺は助けに行こうと近づいていくが、いかんせんじゃまにならないようにと遠くを通っていたので、すぐにはキングスライムに届かない。


 あー面倒くさ。物理的に殺すのも無理じゃねぇか。


 仕方ないけどな、じゃあ魔法の方にしようか。


 人命救助が最優先。よし、橘廉也、本気出します!!


 まずは、配信者さんに魔法が当たらないように大声で声をかける。


「そこの配信者さん!! どいて!!」


 これでどいてくれるかどうかはわからないけど、どいてくれるものだと思って行動するしかないからな。


 次に、高速で魔力を練る。キングスライムには、氷魔法で凍らせて砕くのが一番早い。


 よっしゃ行くぞ!?




「――氷結」




 よし、凍ったな!?それに、あの配信者さんもちゃんと逃げてくれてる。


 俺は成し遂げた…! ……いや、キングスライム砕かなきゃいけねぇか。


 ドォン!!


 はい、砕きました。やりきった……


 




 ________





 新作となっております。どうか一章の終わりまで(8話)読んでいただけると絶対に引き込みます。


 面白いです。保証します。


 では、今日よりよろしくお願い致します。

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