第17話「自称でござる」
等高線も入れ終えさらにイムの言葉で文字も書き終えたが、まだ時間があったゆえネージュと
思えばあれが――――良くなかった。
何事も勢いが大事と考えるのが妾の常じゃが、
個人差があるらしいが、師匠は大層痛かったそうな。
師匠はチビ、レガンは長月以上の大男。
だからかも知らんが、股も腰も
それでも幸せな痛みだったと頬を染めて乙女の顔で言ったネージュは大層可愛いく羨ましくもあったが、今日の妾はそういう訳にもいかん。
明日には
股が痛うて仕事が出来ん、とは言えんのじゃ。
長月にはまたしょんぼり顔をさせてしもうた。すまん、許せ長月。これも民草のためじゃ。
「――良いではないか! 良いではないか!」
あまりの出来栄えに叫んだのは妾じゃ。
「フォジョン! 素晴らしい出来栄えじゃ!」
場所は鍛治ギルド。こないだの炉のある
「お気に召された様でホッとした。使ってみて具合の悪いところがあれば言ってくれ。メンテナンスまで混みでの料金を頂いておるでな」
ふむ。そうは言うてくれるがな、期待以上の出来栄えぞ?
「しかしオヌシ。一本一本に刻まれたナンバリングもそうじゃし、この鉄筒五〇本と鉄棒一本の全てが入る太筒もな、依頼以上の仕事じゃろうに」
ソファに座る妾らの
その中に五〇本の鉄筒と、一本の細い鉄棒が綺麗に収まっておる。
さらに中から何本か取り出すと、端部に
一から五〇のナンバリングじゃ。
「どれも必要だろうと思って追加したが、要らぬ気遣いだったか?」
「太筒はこの腹に巻いたロープで事足りるかとは思っておったが、ナンバリングは大層助かる。墨で書いたんじゃ消えるじゃろうからな」
ぽん、っと腹を叩いてそう言うが、実際にロープで束ねれば筒が抜けたりロープが切れたり、きっとわちゃわちゃしたであろう。だから太筒も実は大層助かる。
「なら良かった。まぁ、この太筒やらはサービスだと思ってくれたら良い」
顔は髭もじゃでよう分からんが、心根が男前じゃのぉフォジョンよ。実に助かるわ。
妾の考えではな、このナンバリングも重要なんじゃ。
「ところでヤヨイ」
「なんじゃ?」
「この間の金貨もそうだが、小遣いでやるには限界があるだろう。ギルドを興してみてはどうだ?」
……ギルドを、興す? どういう意味じゃ?
「ヤヨイから聞いた限りじゃ調査はともかく今後は一人でやるのは難しい様に思う」
ふむ、そうかも知れん。
「竜の瀬ギルドでも土砂崩れ対策ギルドでも適当に名前を付けてだな、
なるほど、ギルドとはそういうものか。
『官民』で言えばギルドとは『民』、土木ギルドも当然『民』。
しかし土木
「何から何まですまん、助言感謝する。ヌシの言う通りにしよう。しかし――」
「しかし? 何か問題があるか?」
妾としては、妾がこれから叩き出す結果を持って予算を引き出したい。
そう、先ずはテラスモを唸らせて、さらに
「とりあえずは妾ひとりの――たった一人の
にっ、と口の端を持ち上げながらフォジョンを見遣ってそう言うてやれば、妾の真意を汲んだらしい髭もじゃも負けじと言いよったわ。
「あぁ、そうするが良い。上手くいけば儂ら鍛冶ギルドは協力を惜しまん。儲かる予感もするしな」
「期待しておる。恐らくは大いに助力を請うことになろうと思う」
わははははがはははは、と笑いあう。なんとも気持ちのいい男よの、フォジョンは。
背に太筒を負う。む、こりゃかなりの重さじゃな。
二本で
まぁ、だからと言って妾が持てんという事はない。よって特に問題はない。
「ではな。誠に助かった。また頼むぞフォジョン」
「お――さすがだな……ヤヨイ。な、なんでも気軽に頼ってくれ」
儂でも運ぶのに難儀したが――とかどうとか言いよるが、とにかく早う試してみたいゆえな、そそくさと鍛冶ギルドを後にした。
向かうのはもちろん竜の瀬じゃ!
さっそく鉄筒調査を試すぞ!
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