第9話 僕は今日から指名手配犯罪者。

 うるさい。ものすごい音だ。

「ぶぅぅぅぅうーーん。ぶろぶろぶん。」

 圭くんは今飲酒運転をしている、犯罪者とバイクでタンデムをしている。つまりは二人乗りだ。

「立派な犯罪だぞ圭くん。」

「飛ばしすぎだぞ圭くん。」

 圭くんが飲酒運転をしているのを僕は初めて見た。プロのバイクレーサーである圭くんは、僕たちの地元岡山の交通安全ポスターにもなっている。以前一度だけ圭くんに冗談で、飲酒運転を促した事があるが、ものすごく怒られたのを覚えている。

「俺はプロだぞ?一生懸命沢山支えてくれている人や、沢山のスポンサーがいるんだぞ?そんな事したらレーサー失格だ。」

 そんな事を言っていた彼は今ノリノリで飲酒運転をしている。

 彼のバイクのエンジン音はとても静かで、レース以外の時くらい、スピードが出なくても良いから、静かなバイクに乗りたいと言って、この静かでスピードので無いバイクを買っていた。そんな彼は今大きな声で叫んでいる。

「ぶぅぅぅぅうーーん。ぶろぶろぶ!。」

 圭くんはあの短時間でこんなになるまで呑んでいたか?お酒というのは恐ろしい。

 仕方ない、飲酒運転で捕まった時は探偵業で鍛えた嘘を駆使して圭くんを逃そう。

 そんな事を考えていると、喫茶ココロマデまで、南に150メートルの距離だ。


 行きたく無い。逢いたくない。帰りたい。怖い。


2対との接触は御法度だぞ、探偵失格だぞ、拾ってくれた国米さんに対して失礼だ。

帰らなければ行けない。後ろを向いて走って、この場を離れなければ行けない。走らなければ歩いてでも良い、匍匐前進でも何でもいい。

ただ、身体は正直だ。

頑張って首を後ろに回してみるが、回らない。目線だけ後ろを見る様に、身体は喫茶ココロマデに向かっていく。


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

失格探偵の恋心 蜂屋二男 @hachi843

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ