第8話 おっかない親友。

 急遽決まった2連休の初日に家にストックしてある故郷の地酒を持って親友の家に行く。


 親友の名前は岡松圭、僕と同い年で幼稚園からの付き合いだ。元々こいつが名古屋に住んでいたから、失恋の傷を癒すべく2ヶ月居候することになって、その時に暇つぶしに就活していたら探偵になっていた。

 暇つぶしに就活するべきじゃ無いと圭くんに怒られていたが、就職したので文句は無いだろう。


 インターホンも鳴らさず、ズカズカと勝手に入る。少し前までここに住んでいたのだから実家に帰省した様な物だ、当然圭くんもその様子で、ボサボサの頭を振るいながら、手を振ってくる。

「おはよ、田中は酒持ってきたよな、昼間から飲もや」

 圭くんはプロのバイクレーサーで、今はこっちのチーム?スポンサー?にお世話になっている。最近は海外に頻繁に出向いている事から、いつかは海外に住んでしまうのかもしれない。まさにカッコいい男だ。バイクレーサーというだけあって、危機管理能力は完全に欠陥している事を除けば、完璧な男だ。二人で酒を呑みながら昨日の失態を話す。圭くんと呑んでいると全てが楽しいことの様に感じる。

「それは、大変じゃったなぁ」

「じゃぁじやぁ、大変じゃったけえな。」

 酔いが回ると普段隠している岡山弁が出てくる。別に恥ずかしいわけではなく、何となく周りに二人とも合わせている。

 他愛も無い話を繰り返し笑う。こんなに楽しい時間はない。

 ピロン!

 机の上に置いているスマホの通知、急遽仕事入る事があるので、いつも通知の設定は大音量にしている。

 スマホを見ると2対からInstagramのフォローが返っていた。慌ててスマホを開く、こちらがフォローされた事で、2対のアカウントが観れる。

 バクバクと鼓動音が聴こえる。酒と多少の罪悪感と緊張が途轍もない音になって聴こえてくる。

「圭くん、例の2対のインスタフォロー返された…」

「田中!おい!マジかよ」

 二人してスマホを覗き込む

 だが、投稿内容は空の写真が1枚だけだった。何故か安心する。

Instagramにはストーリーという投稿方法がある24時間で自動的に削除されるので、気軽に投稿できる機能だ。

 2対のストーリーには1つだけ2分前に投稿があった。「最近気に入ってる喫茶店!」という文章と共に、店の看板が載っていた。

 喫茶ココロマデ。

「田中行くぞ!」

「どこに」

「喫茶ココロマデだよ!」

「ダメだよ!勤務中以外で対象者と接触は…」

 強引に僕の手を引っ張って圭くんは家から飛び出る。






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