第5話 ため息の正しい吐き方。
僕は6時に起床し、ラジヲを付ける。
洗面台の椅子に腰掛け1本目のタバコをふかす。息を吐くたび、呼吸している事を感じる。根元まで吸って、洗面台に捨てる。洗面台に昨日から残っている水分がジュと音を立てて空気中に広がる。その空気を紛らわす様に2本目のタバコに火をつける、3回だけ吸って、灰皿に押し付ける。シャワーを浴びて、パンを食べて、歯を磨いて、ラジオ体操をする。7時30分に、家を出る予定なのでまだ1時間程ある、いつもならYouTubeを観て時間を潰すが、今日は一人なので、先程押しつけた2本目のタバコに火をつける。
相方がタバコ嫌いなので、シャワーを浴びる前にしか普段は吸わない。
予定より少し早く7時19分に家を出る。
ブロブロとアルトの音が響く車内で初の一人仕事に緊張しながら、車を走らせる。道中、仕事の段取りを頭で考えながら運転していると、信号を無視しかけ幸先が悪いなとため息を吐く。
「あ」
ため息は上手くいった時に吐くものだった。
彼女にそう教えられたのだ。
慌てて、吐き出したため息を吸い込む。
落ち着かなくなり、このアルトを買って以来初めて車内でタバコを吸った。
「ふーーっ」
これはため息じゃない、煙を吐き出しただけだ。
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