024
アオネは受話器を置いて部屋に戻った。電話はいたずら電話だろうが、なんだか部屋の中で独りでいるとそわそわとしてしまう。
「ちょっと出かけようかな」
アオネは肩掛けカバンを持つと、家を出た。玄関のひさしから一歩踏み出すと、あたまのてっぺんを太陽が容赦なく焼く。日傘をさす。庭から出て、道に出る。ガードレール越しに町を上から見下ろすことができる。右に行けば山道を下りて下町に降りることもできたが、町で特にしたいことも思いつかなかったので、左に進むことにする。左の道は上り坂になっていて、山の頂上の神社に繋がっている。今夜は神社で夜祭があるので、古く、ひび割れたコンクリートの道の両側には等間隔でぼんぼりが吊るされている。
10分ほど歩くと、神社の前に到着した。日傘をたたみ、大木に囲まれた、苔むした石段をゆっくりと上っていく。大木の葉が落とす影は濃く、少し緑色にさえ見えた。赤い鳥居をくぐり、見渡すと、境内にはいくつか屋台のテントが立っていて、祭の準備をする人々がちらほら作業をしていた。境内は大きな木のおかげでどこにいても陰になっていて、ずいぶん涼しかった。神社の静かで神聖な雰囲気のせいのようにも思えた。頭にタオルを巻いたおじさんが笑顔で人懐こく挨拶をしてくれるので、思わずこちらも笑顔で挨拶を返す。
作業の邪魔になるといけないので、神社の中心の建物である
御社殿の横に古ぼけた看板がある。看板はこの先の池と墓地の方向を示していた。幼少期はこの神社や池でよくかくれんぼなどをして遊んだものだった。町の方で昼花火の音がした。夜祭にはまだ時間がある。辺りをもう少し散策してみてもいいかもしれない。
①池に行く 007へ
②墓地に行く 094へ
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