013
「あなたはまだわからないんですか」
アオネは銃口を突き付ける男に一歩近づいた。
「何度も繰り返しているからあなたも覚えているでしょう。あなたは私に殺されている。そして私もあなたに殺されている。無意味なんですよ。私たちがいくら殺し合おうともまた繰り返すんです。もうやめませんか?」
男の目が泳ぐ。やがて男は観念したかのようにピストルをしまった。
「じゃあどうしようっていうんだよ。この無意味な日々の中でどうやって過ごしたらいいんだよ」
「私にだってわかりません。でも、繰り返しの記憶を持っている私たちが出会えたのはずいぶん幸運なことに思えますね」
「たしかに永遠に時をすごすなら、一人より二人の方がいい。そして、殺し合うよりは、何か楽しい気分になれるようなことをしたほうがいい」
「そうですね」
男は肩をすくめた。
「じゃあ、遊ぼう。俺は一人で宝探しのためにこの町に来たわけじゃなくて、仲間と一緒に来てたんだ。仲間たちは繰り返す日常を早々に諦めて永遠の時の中で遊び続けてる」
「どんな遊び?」
「まあついて来いよ」
男はギャングのような覆面を取った。大学生くらいの若さの、まだ少しあどけなさが残る顔だった。男は山の裏へと歩いて行った。そこには古い地下道のようなトンネルがあった。トンネルの壁にはスプレーで落書きがびっしりとされており、点滅しながらもかろうじてついている蛍光灯には蛾がとまっていた。男はポケットからスマートフォンを取り出してライトをつけて前を照らしながら歩いた。以外とトンネルは長く、二度右に曲がったところで壁に唐突にドアが現れた。ドアの向こうからはまるでゲームセンターかカラオケ、クラブであるかのように大音量の音楽が漏れていた。
「こんな田舎臭い町の田舎臭い地下道にこんな場所があったなんてね」
「夏の間のお楽しみ施設だよ」
男はドアを開けた。まぶしい光がアオネを包む。そこではたくさんの若者が陽気に笑い、酒を飲みながらトランプやルーレットに興じていた。
「なにこれ。カジノじゃない。あなたたちの永遠に楽しめる遊びって博打のことだったんだ」
「そうだよ」
男は腕を広げる。
「ようこそ。永遠の賭博場へ」
①家に帰る 072へ
②ポーカーの卓に混ざる 035へ
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