ぼっち高校生、何も分からぬまま超高難易度ダンジョンを攻略してしまう
水品 奏多
第一話 目隠しガシャ配信での誤タップはよくある
______________
【初配信】はじめまして、新人Dtuberの名和アザナです
314人が視聴中 0分前にライブ配信開始
______________
場所はダンジョン協会のエントランス。
スマホに表示された自身の姿とライブ中の文字を見て、俺は空中のドローンカメラに向けて手を振った。
「えー、これで見えていますかね?
み、みなさんこんにちは。新人Dtuberの名和アザナです」
コメント
・こんにちは
・ちわ~
・そんな緊張せんでも大丈夫やぞw
どうせ身バレもしないのやし
視聴者から返ってきた温かい反応に、ほっと胸をなでおろす。
何とか無言は回避してるものの、正直心臓バックバックである。
いやあ、ネットの人たちが皆いい人で良かったっ。
「えー、それではまずは簡単な自己紹介を。
俺、名和アザナはとある高校の一年生。今日登録したばかりの新人冒険者です。
今回は面白そうなユニークスキルが手に入ったので、皆さんに見てほしいという意味もあって配信を始めたんですよ」
コメント
・マジの初心者さんなんか
・なるほど スキルの事ならお姉ちゃんたちに任せないっ
・↑勝手に俺たちをTSさせないでもろて……
・どんなスキルなん?
「はい。それじゃあ早速。
どうぞみなさん、ご精査くださいっ」
空中に浮かぶ半透明のステータスボードを操作し、視聴者に見せる。
______________
「死なば諸共っ! どきどき☆スキルルーレットっ」
種類 ユニーク
説明
この世に存在するあらゆるスキルの中からランダムに1つ習得できる。
ただし強力なスキルが選ばれた場合、それ相応の代償が同時に課せられる。
1日1回のみ使用可能。習得スキル・使用回数は0時リセット。
______________
コメント
・はえええ、確かに変わったユニークスキルやな
・死なば諸共っ!(迫真)
・こ、これは……強い、のか?
・何とも言えんなあ 代償の重さ次第やね
思った通り、困惑の色に染まるコメント欄。
冒険者が初めてモンスターを倒した時に得られる特殊な力、それがユニークスキルだ。その名の通り同じものが一つとして存在しないという性質上、実際に使ってみないとよく分からないというのが冒険者界隈の常識だった。
俺も最初は「なんやこれェ」だったからなあ……。
コメント
・それじゃあ今からこれを回す感じ?
「あ、ごめんなさい。そうじゃなくて。
本題はここから。さっき試しに回してみたらやべえスキルが出たんですよ」
画面をスライドさせて、ルーレットの結果が表示された画面へ。
______________
現在セットされているスキルは以下の通り。
スキル① 絶甲結界
発動中、自身は一切の攻撃の影響を受けない。
最大持続時間は3h。クールタイムは24h。
スキル② 明鏡止水
視覚が完全に遮断される。
スキル①発動中は強制発動。
スキル③ 孤高のソロボッチ
パーティを組むことが出来ない。
スキル①発動中は強制発動。
______________
コメント
・>発動中、自身は一切の攻撃の影響を受けない。
は? ただのチートやないか
・いやまてまて その分デメリットがやべえぞ
視覚遮断とソロ固定とかまともに冒険出来ねえやん
・あ、だから配信を始めたのね
「そーゆーことです。
事前に何個かにつき一個のコメントを読み上げプログラムを組んでおいたので、みなさんには目の見えない私の代わりに色々指示を出してほしいんですよ。
「絶対結界」とやらもあるし、「ゴブリンの巣窟」に潜る予定なので何があろうと命の危険はないはずです」
コメント
・なるほどにゃあ
・あそこなら持続時間的でも蘇生的な意味でも安心か
・……これ、普通に誰かと通話しながらやればかなり有用な使い方が出来るでは?(名案)
「スーーーーッ。
えーそれでは早速試してみましょうか。
とりあえず読み上げる速度を5回に1回にしてみますね。みなさんは俺がゴブリンの巣窟にいる
コメント
・なんだ今の間www
・やめてさしあげろ 人間には触れちゃならん痛みがあるんだ……
・うっ、流れ弾が胸に……
・ちょっと待て、指示出すんだっけか?
<<前にゴブリンに二体。右に迂回しようか>>
「了解です……と、こんな風に皆さんの操縦に従って俺が動くわけです。
あ、もし他の冒険者がいたらちゃんと教えてくださいね。こっちの事情で迷惑をかけるのは申し訳ないので」
コメント
・おかのした
・はえー、結構面白そうやな
・>操縦 えっちなのはいけないと思います!
・これで可愛い女の子だったらなあ……
それから何回か練習を繰り返した後、エントランス中央のダンジョンポータルの前に立つ。
目の前に広がるのは、黒板の10倍はありそうな巨大なタッチパネル。同僚らしき冒険者たちがその前に集まり、各々楽しそうに談笑していた。
ダンジョン、それは世界各地に出現した異世界。
ここダンジョンポータルは、その全てのダンジョンへの移動を可能にする超高性能設備ーー簡単に言えばダンジョン専用のどこでも〇アである。
操作方法は実に簡単。行きたい場所の名前をタップすればいい。
「ダンジョン一覧」から「国内のダンジョン」を選んで、念のために「絶好結界」を発動させて、と。
「それじゃあ……
【「目隠し&コメントの音声指示」でゴブリンの巣窟を攻略してみたっ!】
挑戦スタートですっ」
コメント
・よっしゃ 腕が鳴るぜっ
・どんどんパフパフッ
・あれ、今……
・ちょっと待て。ここってーー
視界が闇に包まれると同時、「ゴブリンの巣窟」をタップする。
俺の体を襲う浮遊感。
まるで内臓をひっくり返されたかのような気持ちの悪い感覚の後、鼻が土っぽい匂いを捉える。
よし。これで国内最弱ダンジョン、「ゴブリンの巣窟」に転移できたはずだ。
何か最後の方変な感じだったけど……まあ気のせいやろっ。
時は20××年。大勢の人間が
後にとある意味で伝説になる一人の新人Dtuberが現れた。
彼の名前は名和アザナ。特殊なスキルを持っている以外は至って平凡の高校生である。本来なら彼も沢山いるDtuberのうちの一人として埋没するはずだった。
しかし、彼の運命は
「蒼龍迷宮」。
出現して30年経っても尚、未だ制覇者が現れない未踏破ダンジョン。
その特徴は何と言っても「蒼龍」と呼ばれるドラゴンだ。最初の部屋に待ち構え、数多の高ランク冒険者を死地に追いやってきた最強最悪のモンスター。
そんな化け物が今、身を震わせて咆哮を上げていた。新たな贄がまた性懲りもなくやってきた、と。
「はええ、本物のゴブリンはこんな風に鳴くんですね」
コメント
・!!!?????
・ドラゴン来ちゃあああああ
・お客さん、来るダンジョン間違えてますよっ!!
・オイオイオイ 死ぬわあいつ
<<うんち!w>>
ーーさりとてアザナは気づかない。
何も知らぬまま、何の気概のなく奴の前に立っている。
かくして賽は投げられた。
これはただの初心者が「目隠し&コメントの音声指示」スタイルで未踏破ダンジョンからの生還を目指す物語である。
______________
スキル① 絶甲結界
発動中、自身は一切の攻撃の影響を受けない。
最大持続時間は3h。クールタイムは24h。
_____________
アザナが死ぬまで残り2時間59分。
ぼっち高校生、何も分からぬまま超高難易度ダンジョンを攻略してしまう 水品 奏多 @mizusina
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ぼっち高校生、何も分からぬまま超高難易度ダンジョンを攻略してしまうの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます