それぞれの戦い

 唇を噛み締め、メオちゃんは振り返る事なく走り続けます。

 カメヘンマイダーのタケシの想いを無駄にしないために。


「ヘイ、タクシー!ですわ」


 ああッ?! 流石はメオちゃん。

合理的判断のもと、文明の利器を使うようです。知能派美少女ヒロイン枠が、彼女の手中に収められた瞬間です!


 メオちゃんがタクシーに乗り込み、「古墳までお願いしますわ!」と、運転手に行き先を告げた時でした。

『お嬢ちゃん、すまないが行き先は決まってるんだじょ? ……目的地は、地獄の一丁目だじょ!』


 じょ、冗談ではありません!!

地獄という地名は愛知県にありますが、目的地とは遠く離れてしまいます!!

 これは白タクも驚愕する程に、遠回り請求される可能性が!!


「運転手さん、アナタ…… まさか、ゴウヨクに!」


『気付くのが遅かったんだじょ!ドアロック完了だじょ!』


 ええっ?! 車内監禁ですって!

『メオちゃん、どうしよう?!』

 テメェ、首飾り。それを考えるのがテメェの役目じゃろがい! おほん、つい熱くなってしまいました。

 変身はとっておかないといけない状況下で、この危機を脱する事が出来るのでしょうか?

 メオちゃんの運命やいかに!!


※一旦CMですわ!!


【 ––––– アナタには大切な人がいますか?

 –––– そこには愛がありますか?


 1ヶ月という短い期間の中で、繰り広げられる出逢いと別れ。

 この夏–––– アナタはかけがえの無い経験をするでしょう。


『カブトエビ育成キット!!』これで夏休みの自由研究はバッチリさ!

 –––– お求めはお近くの雑貨店で! 】



 さて、場面は変わってタケシくんのターン!です。

 カメヘンマイダーのタケシは音撃のサイレーンと対峙していました。


『アナタ、普通の人間ではないですね……。

よもや、魔砲少女以外の危険人物がいるなんて。 ですが…』

 音撃のサイレーンは、またもや大きく息を吸い込み【ウ〜ウ〜、カン、カン、カン】と、膨大な文字で攻撃を仕掛けてきます!


「クソッ! ならば! 必殺、マイダー・チョップスティック!」

 –––– 説明しよう。マイダー・チョップスティックとは、ツルツルするお豆さんすら簡単に摘める高品質で規格外の大きさをしたお箸である!


 タケシは刀を鞘から抜くように、『おてもと』と描かれた袋から箸を抜きました。


『そんな棒切れごとき、あたしの音撃で粉砕してあげる!』

  –––– 刹那、響いたのは『バキィ!』というオノマトペ。 なんて事!! タケシのお箸が折れて……。


「引っかかったな、サイレーン。その衝撃を待ってたぜ」

 折れたんじゃなかったのね! なんと、タケシはサイレーンの衝撃を箸で受け止め、お箸を2本に分けました! タケシの箸は『割り箸』だったのです!


 二つに分かれたお箸を両手に握りしめ、タケシには攻守共に隙がありません。これぞ、ショータイム二刀流!と、解説者が叫んでいます!!


『ほんと、生意気な人間! あたしを本気にさせたわね!』

 いつも思いますが、敵役は何故、最初から全力を出さないのでしょうね?

 ああ、尺を伸ばすためですね!!


『これで死になさいッ! 大怨霊大音量! 【ファン!ファン!前の車止まりなさーいふぉ、ワード・カースト(ップ)!!】』


 –––– 長文です!! ドライバーの心を抉る文言に、この文字数の多さは避けきれません! タケシくんに絶望的な危機が迫ります!


「男はなぁ、引けない時があるんだ!」

ああッ!タケシくんは音撃に向かい駆けていきます! そして……。

「うわぁぁああ!! 俺の出番終わりぃぃ?!」

 タケシくんを中心に大きな爆発が起こりました……。 砕けた2本の割り箸が宙を舞います。 こんな悲しい事があっていいのでしょうか。


『ふぅ、人間ごときが、あたしに本気を出させたのは褒めてあげるわ。 さて、魔砲少女を追わないとね』

 音撃のサイレーンは踵を返した時でした。


「よお、まだ戦いは終わってねーぜ?」

ああ、タケシは生きていました! しかし、その身体はボロボロです。


『何っ?!キサマ、まだ?!』


「言っただろ、男には引けねぇ時があるって。けど、そろそろだぜ!」


 タケシは箸袋に手を掛けます。すると、そこには輝く新しいお箸が!!

 それに!『おてもと』の文字が『寿』に変化しています!! これはッ!! 伝説の祝い箸?!


「燃えろ!俺のハート!!超燃焼どんと焼!! 真念新年斬!!」

 ––– タケシが放った燃え盛る一閃。

それは音撃のサイレーンを捉えました。


『バカなッ! こんな奴にぃぃいい!!』


 –––– 【火薬多め過激演出中】––––


 ヒーローものにはお馴染みの爆発演出も完了し、更にお馴染み爆発を背にタケシが振り向きます。 しかし、その場でタケシは倒れ込んでしまいました。


「メオちゃん、約束は…… 果たした…ぜ」


 でも、きっと大丈夫。この演出で死亡フラグはたちません。後で駆けつける演出が確定しました。 ともかく、ゴウヨク四天王の一人を倒したタケシくん。お疲れ様でした。


 さて、一方のメオちゃんですが……。

おや?タクシードライバーのゴウヨクがパニクっていますね? どうしたんでしょう?


『あああああ!! やべぇだじょ。捕まりたくないんだじょ!!』


「ゴウヨクさん、落ち着くのですわ! 前を見ないと危ないですわ!」


 ゴウヨクは涙目です。メオちゃん、何かした? その答えは首飾りが告げる事となりました。

『メオちゃん、ラッキーだったね。まさか、パトカーのサイレンが聞こえるなんて』


 ここで伏線回収です!

タケシvsサイレーンの戦いで、最後にどんな攻撃がありました?

 そう!『前の車止まりなさい!』と、大音量で放たれましたね!

 これがタクシードライバーのゴウヨクに届いてしまったのです!!


『魔砲少女、早く降りるんだじょ!! お代はいらないんだじょ!』


 こうしてタクシードライバーのゴウヨクは去って行きました。


「悪•鬼•殲•滅? ですわ?」


 時にスタンドアローンは強力なチームワークを生むと、好きなアニメで言ってました。

 さあ、ハオちゃん復活まであゆみを止めてはいけません。

       次話に進みましょう!


            ––– つづく。

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