メオ過去編

古墳ノスタルジー

 観測者さん、初めまして。

前任の『モノローグ』さんがヒロインの敗北でメンタルズタボロになってしまい、風邪を拗らせたので、過去編を代理進行することになりました『路野 文香ジノ フミカ』といいます。ジノちゃんって呼んでいいわよ、観測者さん。


 まったく、今までのログを見てきたけど酷い進行ね。

 これでは、第四の壁の先にいる読者の精神を破壊しても仕方ないわ。


 いけない、話しすぎちゃった。

それでは早速、女庭メオちゃんの過去編を始めるわね。



 –––– 刻はメオちゃんが小学生の頃に戻るわ。

 ここは旧石器小学校。3年B組の教室内で、メオちゃんは窓の外を眺めていたの。


「何か面白い事ないかしら?ですわ」

遠くの空には入道雲が浮かび、色濃い木々と蝉の鳴き声が夏を演出する時期ね。


「コラ、ミス女庭。ジュギョウに集中シナサーイ」

 そう言ったのは担任のブッフバルト先生だったわ。

 三年B組には金髪の先生がセオリーでありトレンディだとか。 それにしても、なんて設定なのかしら? 作者の頭は大丈夫?


「先生、授業の内容が簡単すぎるのですわ」


 この頃、メオちゃんはちょっと癪に触る才女だったみたい。少しツンケンする彼女は、視線をそのまま窓の外に向けていたわ。


 ––– その時。

裏にある木々に囲まれた小高い丘の頂上部分から光が放たれたの。

 鳥達が一斉に飛び立ち、光の柱は天に向かうと思いきや、Uターンを決めて丘の斜面に激突したわ。

「あれは、なんですの?!」


 しかし、その光景を見たものは、メオちゃんだけ。 授業中に一人叫ぶという黒歴史が生まれた瞬間ね。

 顔を赤らめながら、メオちゃんは放課後丘に行くことを決意、その心中は『何かが起こる』と、期待に胸を膨らませていたみたい。


 –––– 放課後。


「確か、ここは立ち入り禁止ですわ。でも、あの光の正体を確かめに行かないと、歴史改変が起こる気がしますわ」


 もう!過去編で言ってはいけないセリフを、こうも簡単に口にするなんて! ともかく、仕事を引き受けた以上、ちゃんと進行しますけど!

 メオちゃんは、『立ち入り禁止』と、看板が掲げられたフェンスを乗り越え、丘を取り巻く林の中に踏み入ったの。


「鬱蒼としていますわね。確かここは古墳だったはずですわ。探検みたいでワクワクしますわね」

 ほんと、お転婆なんだからッ。みんなは『立ち入り禁止場所』に入ったら駄目よ。場合によっては刑事罰が待ってるわ。

 

 メオちゃんは林を抜けると、小高い丘が目の前に広がったの。そこで目にしたのが……。

「なんですの?! 丘の斜面に穴が出来てますわ」

 ちょうど光が衝突した場所かしら。小さなクレーターができていたの。メオちゃんはそこに踏み込んでいったわ。


 –––– その時よ。

『ああああ…… 現世うつしよの憎きこと。 その理不尽たるや、我を苦しめんとす。 後来こうらいの罪には罰を、相応の報いを望まん』

 これは危険よ。思念の塊が辺りに立ち込めて、メオちゃんを取り囲んでいるわ。


「い、いやぁですわ。ネイティブでネガティブな古代語が聞こえますわ! メントスとコーラを混ぜるって聞こえましたわ! とっても危険ですわ!」

 この作品の登場人物は危機感が無さすぎよ。

今まさに、怨念のような思念がメオちゃんに襲い掛かってるのに!


「駄目…… 私の意識が、乗っ取られてしまいますわ」

 メオちゃんはその場で膝をついてしまったわ。

このままでは、二章もデットエンドでタイムパラドクスが起こってしまうかも。こうなったら、知り合いのタイムリープ出来る女神様に助けを求めなきゃ!


 え?! 丘の上に人の影が。 その人物は女性の侍のようね。

 メオちゃんが意識が朦朧とする中で、その声は凛と響いてきたの。


「鎮まりなさい、穢れた思念達よ。……そうか。貴様らが『ヨクボウ』か。 さあ、アッシが相手だ。かかってくるが良いだよ」


 思念体たち……『ヨクボウ』は、その声の主に襲いかかったわ。


「アッシの奥義を見せてやる。アッシの愛刀、王威お〜い覇仁丸はにまるの錆となるがいい。 顕現虚空けんげんこくう逢史破覇王打世あっしははおだよぅ!!」


 次元ごと切り裂くような一閃が放たれたわ。

一瞬の出来事の中、悪しきの思念は掻き消えたの。 でも、メオちゃんは倒れたままだったわ。

取り憑いた思念が彼女を蝕んでいたのね。

「くっ、遅かったんだよ。この少女を救う手は無いか? 髪留めよ」

 その女侍は、自分の髪留めに語り掛けると渋い表情でメオちゃんを見つめていたの。

 独り言かと思ったけど、不思議な事に埴輪の形をした髪留めは話し始めたわ。


『おおおお、ハオよ。この娘は人の身でありながら膨大な『魔力カンジョウ』を吸収してしまったのじゃあ。体内から放出せにゃ危険だぞう』


「どうするんだよ?」


『この古墳に眠る秘宝、吸収の壺を使えばなんとかなるかもしれんぞう』


 その時、女侍から『ポンッ』と煙が昇り、その姿はメオちゃんと同じ少女の姿になってしまったわ。

「アッシの変身が解けちゃったんだよ」


 なんと、彼女の正体はハオちゃんだったの。

え?気付いていた?

 本当にこの作品は伏線の張り方が甘いのよ。

ああ、早く元の場所に戻りたいわ。

 ともかく、ハオちゃんはモグラのように古墳の中に入っていったわ。そして、手に壺を持って出てきたの。


「これで、この子を助けるんだよ」

ハオちゃんは、壺の蓋を取りメオちゃんに向けると、メオちゃんの身体から魔力が吸い上げられていったわ。


 気が付いたメオちゃんは、ゆっくりと言葉を絞り出したの。

「あなたが…助けてくれたのね。有難うですわ。 私は女庭メオ。あなたは?」


「アッシはハオちゃんだよ。元埴輪で生まれたての魔砲少女だよ!」


 こうして二人は出逢ったの。

メオちゃんは魔力カンジョウを吸収されたものの、少し体内に残ってしまったのね。

 だから『魔砲』を使う事が出来る様になったわけ。

 その後、同じ小学校に通い始めたメオちゃんとハオちゃん。

 でも、その時のエピソードは、また別の話。


 魔力を吸収した壺はというと、ハオちゃんが古墳にそっと戻したようね。



 これで過去編はおしまい。

これで、観測者さんも現在のメオちゃんが目指している場所がわかったかしら?


 じゃあ、私の仕事もこれでおしまい。

少しの間だったけど、この世界線の観測者に逢えて楽しかったわ。


 それじゃ、ハオちゃん救出編に引き継ぐわね。 バイバイ。


           –––– つづく。


※今回登場頂いた『ジノちゃん』ですが、

三丈夕六先生の作品から、登場人物にご出演頂きました。

 こんなふざけた作品に出演を快くお受けくださり、有難う御座いました。

 三丈先生の作品はとても面白いので、是非チェックしてみて下さいね!

  ↓↓↓

https://kakuyomu.jp/users/YUMITAKE

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