驚愕な展開

 秋も終わりを告げ、冬の匂いが鼻腔を刺激する季節になりました。

 この季節に注意すべきは、インフルエンザと半袖Tシャツ男子のテンションだと、黙示録に記されています。


 本作は超絶美少女作品なので、ハオちゃんはきっと、可憐な冬服姿を見せてくれる筈です。


 噂をすれば、ハオちゃんが走ってきました。 魔砲少女は登校時間すら戦いに明け暮れるのですね!


「遅刻するよぉおお!!」


 なんて事!!

ハオちゃんはTシャツ短パン姿です!!

 更には『ひやむぎ』と、Tシャツにプリントされています! 身も凍るファッションに唖然。これでは、超絶⭐︎少女作品になってしまいます!!


「セーフ!だよ!」

服装は完全にアウトですが、なんとか間一髪間に合いましたね。

 しかし、校門をくぐった先に、銀色の髪と青い瞳をした、古墳中学校には似つかわしくないイケメン男子生徒が待ち構えていました。


『はにわハオ。はじめまして、我はハンムラb……』

「邪魔だよッ!」

『ぐっはぁ?!』


 イケメン男子生徒は錐揉み式に舞い上がりました。

 イケメンだからって優遇されると思ったら大間違いです。ドラ◯もんの映画だって、出来過ぎなキャラクターはハブられる前例もあるんですから!


 さて、教室に駆け込んだハオちゃんでしたが、驚愕の展開が待っていました。

「誰も……いないんだよ?!」


 何があったのでしょう?!

教室には誰一人として姿がありません!


 …… まさか! これはゴウヨクの罠?! 先程登場したイケメンがきな臭くなって来ました。


「そんな…… メオ、ちゃん。みん…な……」

ハオちゃんの顔に絶望が広がっていきます。

 しかし、その時、ハオちゃんは一筋の光を見出したのです。


「今日は……文化の日だったよぉぉおお!!」


 –––– 祝日でしたね!! 

日常系コメディ作品にありがちな鉄板ネタが炸裂しました!


「慌てて損したよ。帰るんだよ」

 ハオちゃんが鮮やかな180度ターンを決め、教室から出ようとした時でした。


『おいおいおい、お前なぁ?! 我を吹っ飛ばして無視するとは、いい度胸じゃないか!』


 さっきのイケメンが熱烈に迫ります。

いけません。本作は年齢指定無しの教育番組なのですから!

 そんな強引な愛情表現では、深夜枠になってしまいます。


『おおおおおお?! は、ハオよ。こやつは……まさか?!』

 埴輪の髪留めは前例がない程に、恐れ慄いています。 え? この少年は……まさか!


「邪魔だよッ!」

『ぐっはぁ?!』


「アッシの邪魔する奴は、My soulで埋葬だよ!」

 ハオちゃんの魔砲が炸裂!! 少年はドリルのように頭から床に埋まりました!

 邪魔する奴は指先ひとつでダウンするのが宿命だと、天麩羅の王が自伝に残しています。


 イケメン男子生徒は『ボコッ』と、床から顔を上げると、怒り心頭で叫びます。

『ふざけんな!テメェ! 我は反夢 螺毘ハンムラビ、ラスボスなんだけど?!』


 –––– ラス…ボス、ですって?!

まさか!打ち切りが決まって、無理矢理、最終決戦が始まってしまうのでしょうか?!

 このままでは、『1年間ありがとうございました!なかと先生の次回作にご期待ください』という、伝説のテロップが出て来てしまいます!

 ハオちゃん! 私のリストラを防ぐためにも、なんとしても阻止して下さい!


「…… 反夢螺毘? ラビ君だなんて、このキラキラネームがぁ?! 許さんのだよ!」


『そこかいッッ?!』


「ハオちゃん! 変身だよ!」

 さあ!髪留めに触れて変身のお時間がやってまいりました!って……… あれ?


「へ…… 変身、出来ないんだよ?」

 なんて事でしょう!

ハオちゃんは変身出来ません!!

 これはハンムラビの能力なのか? 作者のネタ切れなのかは、皆様の想像にお任せします!


 慌てるハオちゃんを尻目しりめに、ハンムラビはゆっくりと口を開きました。


『–––– その昔、世に絶望したが、神の来臨を願い禁断の魔法を使った』


 どこかで聞いたフレーズですね。

そうそう、前章のクライマックスでハオちゃんのパパが言っていた言葉です。

 皆さんもお忘れだと思いますので、読み返してみましょう! 決してpv を伸ばす為ではありませんからね!


『その男……それは我、反夢 螺毘の事だ。つまり、貴様らの産みの親ってわけさ。創造主に敵うわけがないだろう』


 ああっ!! これが噂に聞く伏線回収です!

たぶん、作者はそこまで考えていなかったはず!奇跡は、たまに起こります!


『はにわハオ。貴様のカンジョウ魔力は全て奪った。これからは変身できないどころか、元の埴輪に戻るであろう。埴輪の擬人化という大罪を土の中で悔いるが良い』

 ハンムラビはそういうと、手のひらをハオちゃんに向けます。

 すると!閃光が放たれ、

………ああッ?! ハオちゃんが、ハオちゃんが! 埴輪の姿になってしまいました!!


 ハオちゃん!! このままでは、本当に終わっちゃうわ。 お願い!返事をして!!


【へんじがない ただのはにわのようだ】



 祝日が明けた古墳中学校の教室。

女庭メオは珍しく取り乱していました。


「ハオちゃん!! 一体何が?! その姿は、どうしたっていうのですわ?!」

 彼女が語りかけているのは小柄な埴輪です。

もちろん、埴輪が話す事などあり得ません。


「ねえ!ハオちゃん!! 返事をして! 私、こんな形でヒロイン枠を得たくありませんわ! 正々堂々勝負したいのですわ!」

 メオちゃんの瞳からは涙が溢れています。

そう、その埴輪こそ反夢螺毘に敗北を喫した、ハオちゃんの変わり果てた姿だったのです。


 メオちゃんの様子にドン引きするクラスメート達。その中の1人が「メオちゃん、その埴輪がハオちゃんなわけ無いだろう?」と、話しかけますが、彼女の沈黙に事の重大さに気づき始めたのです。


 そんな魑魅魍魎な中、メオちゃんの首飾りが声を上げました。

『メオちゃん。ハオちゃんは体内のカンジョウ魔力を全て抜かれてしまっている。元に戻すには、カンジョウを補給しないとダメだ』

 メオちゃんは、その言葉に『はっ!』と、顔を上げます。何か気づいたようですね。


「–––– まだ回収されていない伏線がありましたわ! そう、私が魔砲少女になった、方法なら……。きっとハオちゃんを救えますわ!」


 ここでもまた、作者の思いもしなかった伏線が花開きました!

 本作最大の謎、メオちゃんの魔砲少女になった過去が明らかになりそうです!


「皆さん、私は暫く休学しますわ。その間、学校に災害が降りかかるかもしれませんわ。 それは、『ゴウヨク』という悪しき思いの塊。何か変わった事があれば、皆んなで力を合わせて立ち向かって欲しいのですわ」


 メオちゃんの真剣な言葉に、クラスメートは息を飲みます。そして、ゆっくりと頷くのでした。

「メオちゃん、君は一体……。いや、聞くのは野暮だね。なんか大変な事になったみたいだけど、僕達はクラスメート、なんとかしてみるよ」

 ああ、ここに来て青春が炸裂。迸る友情!

本作は青春路線にまっしぐらです!!


「皆さん、ごめんなさい。 あとを頼みますわ!」

 こうして、女庭メオは埴輪を抱えて教室を飛び出して行きました。


 次回はメオちゃんが魔砲少女になった過去編を挟み、ハオちゃん救出編が幕を上げます。

 メインヒロイン不在の中、物語と私の体調悪化はさらに加速していきます! どうぞご期待ください。 ゲホゲホ。



          –––– つづく。

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