農園の害虫

 今日も古墳中学校には、明るい笑い声が溢れています。


 これも、裏で暗躍する魔砲少女たちの戦いがあってこそ。 世の中には知らない事が幸せなことだってあるのです。


 さて、今日は課外学習があるみたいですね!

そう! 秋といえば、サツマイモ掘りだと閣議決定されています!


「やあ、アッシはハンターだよ。芋野郎を一狩りしようぜ!だよ。略して、芋んハンだよ」

 なんて感動的な埴輪ギャク! 心地よい秋風が目に沁みます。


 さて、農園は古墳中学校の裏手なので、徒歩で移動です。その途中でサブヒロインのメオちゃんは何か気付いたようです。


「みんなは体操服なのに、なぜハオちゃんは私服ですの?」

「アッシは埴輪だよ。裸で芋掘りするんだよ」


 –––– 刻を戻そう!


「あれ?アッシも体操服になってるよ?まあいいか、だよ」


 危機は去りました。大人の事情は知らなくていいのです。

 さて、農園に到着しましたね。そこには麦わら帽子が似合う先生が、待ち受けていました。

 口癖が『農園王に俺はなる!』で有名な先生です。


 ハオちゃんが農園に一歩踏み入れた時でした!

なんと、足元には肥料の牛糞が!! ああっ!!踏んじゃった!!


「……はまさに大後悔地雷だよ」


 いやぁ!アッシじゃなくて『』だなんて!! それに、ハオちゃんの顔が!! 埴輪みたいになってます!

 このままでは美少女キャラの尊厳が保てません! なので、一旦CMを挟みます!!


【 –––– しばらくお待ちください。

    〜♪♪♪


「やあ! 余はハオちゃん。魔法少女よ♡ アナタにも魔法の言葉を教えてあげる♡ そ•れ•は♪」


『チェストォォおおおお!!』


–––– 切れ味抜群『斬鉄剣』

アナタのしがらみを一刀両断します。


『また、つまらぬものを斬ってしまったわ』


お求めは近くのホームセンターで! 】



 さて、我らがヒロインも正気を取り戻したようなので話を進めます。


 農園の先生は生徒に熱く語りました。

『ここのベジータブルは強くてワクワクすっぞ!今日は芋掘りキャキャロットォ!』


 おや?様子が変ですね?

サツマイモはスゥィート•ポテイトの筈です。

キャロットは人参ですが?


『おおおおぅ? ハオよ、ゴウヨクの気配じゃぁ!!』

 埴輪の髪留めが放つ慟哭。

成る程、先生はゴウヨクに支配されていたのです。


『くっくっくっ、農業のノウハウを教えてもらえると思うなよぉ?! 俺の背中を見て覚えやがれ! もちろん、時間外労働は自己育成だから残業はつかんぞ!』


 これはッ! 旧世代の老害的ゴウヨクです。

今の時代に合わない事を教えてあげましょう!!


「ハオちゃん、変身だよ!」

「メオも変身ですわ!」


 二人を包む光は、ゆとり世代も氷河期世代も等しく照らします。 その慈愛の中から変身を遂げた姿とは!


「ハオちゃんは大工の棟梁だよ」

「メオは女房役ですわ」


–––– カーペンターズです!!

地下足袋と腹巻きは男の勲章。それを裏で支える女房の気丈さが全米を泣かせに掛かります。


『おいおい、舐めてんのか? クソったれぇええ!』

 老害のゴウヨクは、推しの球団が負けた翌日の如く不機嫌です。しかし、魔砲少女たちは怯まず立ち向かいます。


「しゃらくせえ!てやんでい、バーロー畜生だよ。アッシの腕を舐めんなだよ!」

 ハオちゃんは大工道具片手に、畑のウネを潰しに掛かります。どうやら農機具小屋を建てようとしていますね。 しかし、その畝には成長途中の白菜が!


けろッ、菜っぱぁぁああ!!』

老害のゴウヨクはハオちゃんの前に立ち塞がります。 そこで、メオ女房はゴウヨクに言いました。


「身を挺して守る、お前さんの野菜への愛は本物ですわ。でも、農業の未来を担う若者に愛を持って接しないと、未来永劫お前さんの素晴らしい野菜は失われてしまうのですわ」

 その言葉に、ゴウヨクは涙を流し、『俺は……間違っていたのか?』と膝をつきました。


 さあ、ハオちゃん。トドメの魔砲を決めるのです。

「へっ、試すような事をしてすまなかったな、だよ。 こんなにも立派な白菜を育てられるんだ。

でもな……。無農薬の白菜の中には大体虫が入ってんだよ! くらえッ魔砲!『虫が入ってたらクレーム不可避』だよォ!」


『良かれと思ってやったのにぃ!規格外になっちまったぁぁああ!!』


 時代は変化するもの。今は農薬タップリの虫喰いすら無い野菜が好まれます。

 ゴウヨクは時代に戦力外を突きつけられ、窓際に至りました。 そう、時代は若者達のもの。

 その行手を遮ってはならないのです。


「悪・霊・退・散!」

「悪・鬼・殲・滅!」


 2人の魔砲少女は、ちゃぶ台でお茶を啜ります。時代に合わせられなかった老害を排除した後に飲むお茶は、何故か少し苦いものになりました。


            –––– つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る