もう1人の魔砲少女
ハオちゃん達が古墳中学校に入学してから、既に半年が経ちました。
刻は10月。そう、ハロウィンの季節です!
皆さんも『トラップ・オア・ニート』の準備は出来てますか?
失礼、『トリック・オア・トリート』でしたね。
そんな、お祭り気分な季節ですが、ハオちゃんのクラスで由々しき事態が起こっているようです。
「え〜、英語のカトリーネ先生ですが、今日も無断欠勤されているので自習してくださぁい」
担任の口から放たれた衝撃の事実! 我々取材班はヒキニートの闇に踏み入れる時が来たようです。
『おおおお…… ハオよ。これはきっとゴウヨクの仕業だぞぅ』
今日も埴輪の髪留めのアグレッシブな声が、魔砲少女を奮い立たせます。
「うん、お見舞いに行くんだよ! これで英語の成績はA評価確定だよ!」
流石は世渡り上級者のハオちゃん!
彼女は野望を胸に学校を抜け出しました。
目指すはカトリーネ先生の自宅。手土産には給食でくすねたリンゴを携え準備万端です。
–––– ハオちゃんが校門を飛び越えた時でした。
「あなた、私に黙って行くつもり?ですわ」
そこに待ち構えていたのはサブヒロインのメオちゃんでした! RPGによくある、仲間に気を使って主人公が抜け出すシーンで、先に仲間が待ち構えているパターンが実現しました!
一説では、仲間はストーカーである可能性が示唆されています。
こうして魔砲少女の2人はカトリーネ先生の自宅に向かいます。 そこに待ち構えている衝撃の展開とは?!
※一旦CMだよ!
【–––– 今日も疲れた大人達が、その門をくぐる。
「やあ、マスター。強いのをくれないか?」
落ち着いた店内にはジャズが流れ、間接照明の光がボンヤリとショウケースを照らしていた。
マスターと呼ばれた人物は「それでは、コレなど如何でしょう?」と、一つの封筒を差し出す。
客の男は、そっと封筒を開くと笑みを浮かべて言った。
「ふっ、流石に強いな。『ミュウ2』か…」
–––– 今日もポケ〇ンカードを沢山取り揃えて、お待ちしています。
カードショップ『マスターの巣』は、年中無休で営業中!】
さて、ハオちゃん達はカトリーネ先生の自宅に到着しました。
築40年を越えていそうなボロアパートです。
その一室、『香取 稲』と表札が出ている扉の前で、ハオちゃん達は脚を止めました。
そう!! カトリーネ先生の本名は、
衝撃的事実の鮮やかな伏線回収、如何でしたでしょうか? それでは引き続き物語をお楽しみ下さい。
「センセー、カトリーネ先生ぇ、お見舞いに来たんだよ!」
ボロアパートのインターホンは高確率で壊れています。それを見越したハオちゃんは、ドアを叩いて柔軟に対処します。
あと、よく見かける猛犬注意のシールは、どこで売ってるのでしょう? 知っている読者はコメントして下さいね。
「返事がありませんわね。ハオちゃん、嫌な予感がしますわ」
メオちゃんの頬を冷や汗が伝います。そして、恐る恐るドアノブに手をかけました。
「あ、空いてますわ!」
はい、セオリー通りですね。
ドアを開き、部屋に駆け込む魔砲少女達の目にする光景は、男を連れこんでいる修羅場か、カトリーネ先生が倒れている展開の2つに絞られました!
『あら、いらっしゃい。学校はどうしたの?』
あら、意外! ぽっちゃりした先生は元気そのものです。
タタタタ……、と、室内にはミシンを走らせる音。不気味な笑みを浮かべながら先生は何かを作っています。
その異様な光景に、たまらずメオちゃんは重い口を開きました。
「先生、無断欠勤していると聞きましたわ。引きこもって、何をしているのですわ?」
『あらぁ、ナニってぇ……。コレはねぇ?魔法少女のコスチューム!アタイは魔法少女に選ばれたのよ! 反夢螺毘様にねッ!!』
–––– ヤバいわ!ハオちゃん!! 少女適齢期からのオーバーエイジ枠が爆誕してしまいます! これは阻止せねばなりません!
「先生!やめるんだよ! 反夢螺毘は悪者だよ。騙されちゃ駄目だよ!年齢的にも騙せないよッ!!」
ハオちゃんの必死の問いかけに、先生は頬のお肉を揺らしながら反論しました。
『大人はねッッ! 昔抱いた夢なんて幻想だと思い知らされる日々の連続なのよッ! そんな無機質な世界に反夢螺毘様は夢をくれた。魔法少女になりたかった夢を!! 悪い生徒はお仕置きよッ! 変身♡』
なんということでしょう!
カトリーネ先生は、完成した衣装を身につけてコスプレ化してしまいました。フリフリも舌を巻く程のデコレーションにより、視線を逸さずにはいられません!
『アタイが唯一無二の魔法少女♡カトリーネちゃんよ♡』
ふくよかな身体に纏った衣装がミチミチと音を立ててハオちゃん達を威嚇します。
いろんな意味で危機的状況の中、『おおおおお、ハオよ。変身じゃぁ!』と、埴輪の髪留めが鬼気迫った声を上げました。
「ハオちゃん、変身だよ!」
「メオも変身ですわ!」
2人を包む閃光が室内を照らします。
そして、その中から現した姿とは!
「メオは和食居酒屋の女将ですわ」
「ハオちゃんは、常連の中年サラリーマンだよ」
なんと!演歌と熱燗が似合うベストコンビです!! これには先生もたまらず、『いやぁああ!!メルヘンのカケラも見当たらなぃぃいい!』と、絶叫しました。
「おっ、カトリーネ先生じゃねえか。だよ。辛い事があったんか? まあ、こっちで一杯やんな」
ハオちゃん(中年オヤジ)はテカテカした表情で先生を手招きします。
『くッ、そんなふざけた変身なんて許さないわ!』と、先生は反抗しますが、室内に漂う雰囲気の誘惑に勝てず、ハオちゃんの横に腰掛けました。
そこにすかさず、メオ女将が先生の目の前に丼物を差し出します。 このタイミングこそ女将の手腕。見事な着丼を果たしました。
「先生、一杯は一杯でも、牛丼特盛一杯だよ。アッシの奢りだ、遠慮はいらねぇんだよ」
『生娘のアタイを牛丼漬けにするつもりね?! そうはいかないわよッ!』
抵抗を続ける先生に、メオ女将は微笑み掛けました。
「カトリーネ先生。大人は背負うものが多くて大変ですわね。でも、その責任のおかげで、私たちは真っ直ぐ成長出来るのですわ。この牛丼は感謝の気持ち。佐賀牛を使ってるのですわ。元気になって欲しくって……ですわ」
『さ…佐賀牛ですって?!』
戸惑いを隠せない先生に、ハオおじさんはトドメの魔砲を放ちました。
「カトリーネ先生。更にこの佐賀牛はA5ランクだよ!英語の先生だけに、ププッ」
ハオちゃんの見事な魔砲(オヤジギャグ)が、先生のゴウヨクを打ち砕きました。
『なんて、先生想いの生徒なのぉ!』
カトリーネ先生は涙を流しながら牛丼をかき込みます。 そして、それは起こったのです。
–––– ミチ…ミチチ…パァーンン!!
先生のコスプレ衣装が吹き飛びました。
遂に本作始まって以来のお色気シーンが解き放たれたのです!
「あ…うああ、悪・霊・退・散!!」
こうして、ハオちゃんの強制終了にてゴウヨクから先生を救いました。
魔砲少女達の戦いは続きます。
皆んなが安心して牛丼特盛を注文出来る社会を目指して……。
–––– つづく
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