社会見学の罠

 今日も古墳中学校に煌びやかな鐘の音が鳴り響きます。

 キンコン、カンコン。リンゴン、リンゴン、 カル◻︎ス•ゴーン。


 そんな輝かしい学舎には、たくさんの笑顔が溢れています。 そんな青春の1ページを飾る今日は…… 社会見学の日。

 反抗期を迎えた生徒以外の瞳は、大人への憧れで輝いています。


 そんな中、先生は生徒達に今日のミッションを伝えました。

「今日は、最大手の中古車買取り販売店に潜入する。ターゲットの『ビックリ•やってモーター』さんにお邪魔するんで、しっかり勉強するんだぞぅ」


 まあ! 半導体不足による中古車高騰な今に、ピッタリの社会見学ですね!

 これにはハオちゃんもブギウギが止まりません。


「車といえば、海老だよ! 中古の海老はヤバいんだよ!」

 今日もハオちゃんの埴輪ギャグはキレッキレですね! 教室の気温をしっかり下げて、生徒達の熱いハートをクールダウンさせてくれました。さすが、慈愛の魔砲少女は自分の立場をしっかり理解しています。


 こうして、中学校の用意したバスに乗り込み、さあ出発です!


 –––– しかし、この時はまだ誰も知らなかったのです。 思いもよらない悲劇が待ち受けていることに……。


 ※一旦CMだよ!


【夫の転勤が急に決まった。赴任先の社宅は車がNG。⾊々頑張ってみたけれど、どうにもならなくてこの車を捨てる決断をした。

⺟親:ごめんね。ごめんね。どうか、どうか、親切な⼈に⾒つけてもらってね。

NA:優しそうに聞こえても、これは、犯罪者のセリフです。

どんな理由があろうと、車を捨てることは犯罪です。 –––– ⽇本車愛護協会】


 さて、生徒達は社会見学先の『ビックリ•やってモーター』さんに到着した模様です。

 その光景を前に、ハオちゃんの親友メオちゃんが驚きを口にしました。

「まあ、凄い数の車ですわ。総額2億円ありそうですわね」

 メオちゃんの冷静な分析に先生は、「俺の生涯収入以上だな……」と、己れの闇を曝け出しました。


『いらっしゃいまセレナ!! 古墳中学校ご一行様、お待ちしておりましタントォ!』

 販売員の鑑のような声のもとに目を向けると、熱烈歓迎が過ぎたのでしょうか? 1人の販売員が、みんなの乗ってきたバスを金属バットでボコボコにしています。先生はその粋な出迎えに顔面蒼白必至です。


『おおおお…… ハオよ。ゴウヨクの気配がするぞう!』

 埴輪型髪留めがトラディショナルな声で、ハオちゃんに危機を告げます!

 –––– しかし!! なんという事でしょう!

肝心のハオちゃんがうずくまってるではありませんか!

ゲロゲロゲロォォ表現自主規制中!! バスで酔っちまったよぉおお』


 ヒロインを襲う不条理な試練こそ魔砲少女ものには必須です!! しかし!!


『へっへっへっ。アイツがハンムラビ様にたてつく魔砲少女かぁ? タップリ油をさしてやるぜぇ?!』

 なんと、整備所からワラワラと作業員が悪役風味で登場しました!!

 それにしても埴輪に油をさすなんて、なんと残忍な考えでしょう!! とてつもないピンチが訪れます!!


 しかし、その時、うずくまるハオちゃんを庇うように、赤い首飾りを握り締めた少女が作業員の前に立ち塞がりました。


「……そうはさせませんわ」

 そう!! ハオちゃんの親友、女庭メオちゃんです!

『キサマは…… まさか! もう一人の魔砲少女かぁ?!』


「ええ、覚悟しなさい。貴方達のゴウヨクを払って差し上げますわ」


 あらら、ハオちゃんの主人公ポジションが揺らいでいます。あなたの推しはハオちゃんですか?メオちゃんですか? 二人なのでセンター争いは出来ませんが、人気投票での総選挙勃発の予感がします!


『クックックッ、俺たちゃ暗黒ブラック企業戦士の精鋭10人。魔砲少女といえど、2人なんかに負けねぇゼット』


 危ないッ! マニュアル洗脳済みの大人達がメオちゃんに襲い掛かります!

 その時、メオちゃんの握りしめている赤い首飾りが言葉を発しました。


『メオちゃん。準備はいいかい? さあ、変身するんだ』

 そう、彼女の赤い首飾りは変身する為の魔砲アイテムなのです! 詳しくは前作でご確認ください。


「ええ、変身ですわ!」


 首飾りを握りしめたメオちゃんは光に包まれました。

 そして、彼女が変身した姿はッ?!

「エナドリ(※注1)のキャンペーンガールですわ!」

(注1 エナドリ: エナジードリンクの意。エロなドリームではない)


 OH! YES!! ピチピチのセクシーコスチュームに身を包んだ美女に変身です!

 太陽に煌めくサンバイザーは、室内でも着用する義務があるとか、ないとか!

 その姿にゴウヨクの従業員達は生唾を飲み込みました。


『エナ…ドリだと?! 俺たち社畜の聖水じゃねえか? それを…寄越せぇえ!』

 いけません、ゴウヨクの従業員達がメオちゃんに猪突猛進します。 そんな中、メオちゃんは冷静にエナドリをハオちゃんの方に投げました!

 従業員達は方向転換し、ハオちゃん目掛けてまっしぐら! まさか!ヒロインの座を奪う為の裏切り行為なのでしょうか?!


 –––– そして、その悲劇は起こりました。


『『うぎゃぁああああ!!』』


 なんと! 勢い余ったヨクボウの従業員達は、ハオちゃんのゲロで次々とスリップ!

 コースアウトからの集団クラッシュが起こりました!!

 更にはもらいゲロの豪華特典付き!


「悪•鬼•殲•滅ですわッ!」


 なんという美しき魔砲少女達のコンビネーションでしょう!

 これによりゴウヨクの従業員たちは戦闘不能リタイアとなり一件落着です。


「さあ、ハオちゃん。このエナドリを飲んで元気を出すのですわ」

 メオちゃんが、そっと差し出した缶はキンキンに冷えてやがります。

 彼女達の友情はこの先もずっと不滅です。


           –––– つづく

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