商店街の悪夢
皆さまごきげんよう。本作のストーリーテラーこと、『モノローグ』と申します。
以後、お見知り置きを。
前作をご覧頂いた皆様はご存じだと思いますが、最終話で
わからない方は前作で復習して、おとといきやがれ。と、までは言いませんが、是非ご覧になって下さいませ。
古墳中学校にて会敵した魔砲少女のハオちゃんは、埴輪型の髪留めに触れて変身し、昼休みのゴウヨクとバトルを繰り広げたみたいです。
…… え? 速報が入りました。
ハオちゃん勝利。ハオちゃん勝利との事です!!
流石は魔砲少女。彼女の可愛さと強さは健在のようです。
それにしても、ハオちゃんの教室は瓦礫と化しています。 なんて酷いのでしょう。
ゴウヨクという新たな敵は、どうやら手加減とSDG’sという言葉を知らないようです。
おや、ハオちゃんの親友で、サブヒロインの
「ハオちゃんの巨大化のせいで、校舎の半分が破壊されちゃいましたわ」
…… 聞かなかったことにしましょう!
昔から、スクラップ&ビルド無くして、経済の進歩は無いとチェーンストア理論で謳ってましたし!
「やあ! アッシだよ! ハオちゃんは魔砲少女。 元埴輪なクレイドールだよ」
クレイジードールと読み間違えたあなた。今すぐに眼科に行く事をお勧めします。
さて、無事校舎も灰塵と化したので、昼からは休校です。
そうそう、本作はギャグ作品なので明日には学校も元通りになっている設定です。
ご安心くださいね。
ひと仕事終えたハオちゃんは、額に輝く汗を拭いながら、晴れやかな声で呟きます。
「休校って事は、昼ドラの『牡丹と薔薇野郎』が見れるんだよ!」
いけませんッ! 中学生が昼ドラなんて!
薔薇野郎達の繰り広げる愛憎劇は、プロテインのようにドロッドロです。
それに今日の内容は……はぁ、はぁ、ムサシとコジローが、
…… 申し訳ございません、つい、取り乱してしまいました。
さて、ハオちゃんは猛ダッシュで校門を脱出すると、商店街を爆走します。
–––– しかし、人生は残酷な天使のテーゼを奏でたい様です。魔砲少女に襲いかかる悲劇。
それは–––
『お嬢ちゃん、コロッケ揚げたてだよ〜。
サクサク、ホクホク美味しいよぉ〜!
買ってくれなきゃ、この店が潰れちゃうよ〜』
これは! ゴウヨクによる、深刻な店主のテーゼです! 人情につけ込んだ卑劣な商売を見過ごしてはいけません!
「おじさん、一つ買うよ。いくらだよ?」
ああッ!ハオちゃんがゴウヨクの罠に!!
『くっくっくっ、1個189円。税込だぜぇ?!』
なんて強欲な金額でしょう!
便乗値上げも真っ青な金額提示に、ハオちゃんの頭にくっついている埴輪型髪留めが目覚めました。そして、この髪留めはハオちゃんが変身する為の魔砲アイテムなのです!
『おおお…… ハオよ。ゴウヨクの気配じゃぞぉ。変身じゃぁ!』
埴輪型髪留めは、いつも通りナイスミドルな声を響かせました。
「わかったよ。ハオちゃん、変身だよッ!」
ハオちゃんは埴輪型髪留めにタッチすると、逆光に包まれシルエットが浮かび上がります。
そして、その姿はみるみる大人の女性に!
ちょっとクレームが来そうなので、一旦CMです!!
♪♪♪〜
【気高きそのフォルム。洗練された質感。一つ一つ磨き上げられたヒマワリの種が綺麗な花を咲かせます。(当社比) アナタのお庭に彩りと笑顔を。 グッド ラック!!】
〜♪♪♪
……さて、ハオちゃんの変身が終わったようです! ええッ?その姿は一体?!
「ハオちゃんはコンサルだよ」
スクエア眼鏡がお約束、スーツをビシッと着こなした経営コンサルタントになっています。
『なんのつもりだぁ? 偉そうにしてもコロッケはビタ一文値引きしないゼェ?!』
そんなゴウヨク店主に向けて、ハオちゃんは毅然とした態度でメガネをクイクイします。
「値引きを要求するとでも? アッシはむしろ、200円で買うよ」
あまりの出来事に、『なん…だと?』と、ゴウヨクは唖然としています。そこに、ハオちゃんは魔砲を込めた言葉を、ゴウヨクに向けて放ちました。
「コロッケを埴輪型にして揚げるんだよ!SNSで
成る程!現代社会ではバエるが正義!
味なんて二の次ですもんね!
付加価値販売の真理を受けたゴウヨク店主は、愕然とうなだれました。
『なんてこったい。俺は商売の本質を見失っていたというのか……』
そして、コロッケの衣が剥がれるように、店主を支配していたゴウヨクが消え去ったのです。
「悪・霊・退・散!!」
ハオちゃんの
「あ…あ…! 牡丹と薔薇野郎が終わっちゃたよぅ!」
ヒロインに定められた運命。昼ドラすら観れない程に、自分を犠牲するハオちゃんは今日も戦います。
アマプラで放送される、その日まで…
–––– つづく
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