第31話 柊可奈(後編)


「ごめん。僕は可奈さんとは付き合えない。」

僕は肩を掴んで可奈さんとの距離を離した。


「ど、どうして?」

動揺する可奈さん。

「僕、好きな人がいるんだ。」

可奈さんのことを受け入れようとしたとき

ようやく気づいた僕の気持ちを伝える。


「でも、まだ付き合ってもいないんですね。」


「うん。思いも今、気づいたばかりだよ。」

嘘偽りのない本当の気持ちを


「でしたら!

私は、あなただけを見てあなただけに尽くします。

そんな叶うか分からない思いなど捨てて私と付き合ったほうがいいですよ。

私は絶対にあなたを愛します。」


「ごめん。可奈さんそれはできないよ。」


「どうして…

あの金髪女か女先輩に騙されてるのですか?

一方通行な恋愛で思い続けたり失恋して苦しむぐらいなら

友人として好きな私にしてください。」

僕に抱きつきながら言ってくる。


「別に騙されているわけではないよ。

可奈さんの気持ちは嬉しいだけど

ここで中途半端な気持ちで可奈さんと付き合うのはよくない!

必ず後悔する!」

「後悔してもいいじゃないですか!

辛くても私がその辛さを埋めるくらい隆二くんを愛します!!」

泣きながらキスをしてこうようとする可奈さんを引き剥がす。


「そうじゃない。

後悔するのはもだ。」

僕は声を強めに言った。


「私も?」

「そう。

可奈さんと付き合っても必ず僕は好きになった子を思ってしまう。

きっと、それは可奈さんを一生苦しめる。

そんなこと、絶対にしたくない。」


そう。こんな中途半端な関係で付き合って

可奈さんを見ないであの子のことを思い、可奈さんがその事に傷つく。

そんな歪なのに付き合ってるなんて関係で幸せになれるわけがない。


「でも…私はあなたのことを愛しているんです。」


「ごめん。可奈さん

自分勝手で最低な理由だけど君のことは受け入れられない。

僕も好きな気持ちに嘘はつけないんだ!!」


「隆二くん…」 



「気が済まないなら、

暴力でも受け入れるから好きにしていいよ。」


僕は衝撃に備えて目をつむる。


本当に自分勝手で最低だ。

だけど、撤回はしない。


本当に好きな人に思いを伝えずに

後悔する方がよっぽど僕は嫌だから!


彼女が近づいてくる。

叩かれるのだろうか?

殴られるのだろうか?

どちらにせよ

僕は彼女の思いを無下にしているから

受け入れる。  


そう思っていると頬に感触があたる。


「可奈さん…?」

目を開けるがそこにはもう後ろを向いている可奈さんがいた。


「これが私を振った罰です。」

「い、今のは」

「初恋のだったんですから、

頬にキスぐらいは

いいじゃないですか。

駄目なんですか?」

「い、いやいいけど」

暴力がくると思ったから予想外の行動に驚く。


「あ!それとも口でもよかったんですか?

 今からしてもいいですか??」

「だ、だめ!

 可奈さんはそれでいいの?」

「ケチです。

 私を振った人がなにが「それでいいの?」ですか?言い訳ないですよ。」

「うっ」

確かに振っておいて構うのは最低だ。


「まあ、いいです。

そうやって後悔しててください。」

手厳しいなこの人は


「分かりました。」


「それに別に諦めたわけではありませんから。」


「え?諦めたんじゃ」

この期に及んで何を?


「確かに振られましたけど、

隆二くんが誰かと付き合ったわけではないじゃないですか?」


「まあ、そうですね。」


「だから、さっさと振られてフリーになればいいと思います。

そしたら、私を振る理由もなくなるでしょ?」

なんというか、強かだ。


「今は退くだけです。

あなたが惨めに振られて私に無様に泣きつくを待つために。」


「可奈さん…」


「だから、そんな惨めなあなたの愛しかたを考える時間が欲しいので出てってください。

邪魔なんですよ。」


「わかったよ。

最後に一つだけ

可奈さんは美人でなんでもできて少し天然だけどかわいい僕の友達です。

だから、自信を持ってください!」


「…」


可奈さんは無言だったが、教室から飛び出て

なにも考えずに家まで帰る。

家に着くと辺りは真っ暗になっていた。

僕は着替えないでそのまま布団の中に入る。


「…っ」 


泣くか!

泣くもんか!

一番辛いのは可奈さんなんだ!

振った僕が泣いて言い訳がない。



自分のことを好きな人を振るって

こんなに辛いんだ。


胸の痛みが止まらない。

僕はそのまま眠るのであった。



ーーーーーーーーーーーーーー


おまけ


その後


「 ううっ うっうっ…」

少年が立ち去った後、

少女が堪えるように泣いている


「よかったです。

隆二くんに泣いてるところ見られなくて」

少女にあったのは振られた相手に慰められるなんて絶対に嫌という意地だけだった。


「私が恋して振られるなんて一週間前の私が見たら笑われちゃいますね。」

無理矢理笑おうとする。


「うっ…うっ…辛いんですね。

 失恋ってこんなにも今まで振ってきた方々もそうだったんでしょうか?」

堪えきれず内定しまう。


「最後の私、最低でしたね。」

好きになった相手に悪態をつくような態度をとってしまったことを思い出す。

だけど、何か一言を言ってやりたかった。

だから後悔はしていない。


「醜いの私の方なのに」

振られても惨めにすがり付こうとする姿は滑稽の一言でしかない。

だけど、そこまでしても彼が欲しかった。

本当にこの一週間は楽しかった。

彼と

遊んだり

話したり

仕事をしたり

彼のことを家で考えている時間も幸せだった。


「ヒック…楽しかったなぁ」

思い出して嗚咽がでる。


最後に一つだけ

可奈さんは美人でなんでもできて少し天然だけどかわいい僕の友達です。

だから、自信を持ってください!


「何が自信持ってくださいですか…

そんなもの、好きな人に振られたら意味ないじゃないですか…」










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