第29話 同級生と水族館

「わー、カクレクマノミです!

かわいいですね。隆二くん」


「はい、かわいいですね。」


目をキラキラさせながらで水族館を歩き回る少女はとてもかわいらしかった。


ーーーーーーーーーーーーーー


駅についてからすぐに水族館に向かう前に一度服屋に向かった。

柊さん曰く

学生服のままだとよろしくないらしい。

それはそうだ。


服を買ってそのまま着替える。

柊さんの服装は

ドーリー系という僕には聞いたこと単語のワンピースで白の生地に小さい赤い三角形の模様がちりばめられていた。

お嬢様みたいでかわいらしい。


「隆二くん。似合っていますか?」

「は、はい似合ってます。

とてもかわいくて童話の世界のお嬢様みたいです。」

「ふふ、ありがとう。

隆二くん」


ぼくが一生懸命言葉をあつめて誉めると

満天の笑顔で彼女はほほえんでくれた。





そして、今に至る。



「魚さんがいっぱいです。

マンボウってあんなに大きいんですね。」

「近くでみるとかわいく見えるね。」

マンボウを二人で観察したり


「あれはエイでしょうか?裏側がちょっと怖いです。」

「あーちょっと不気味かも。」

エイに怯えて可奈さんが腕をつかんできたり


「イルカが跳ねました!すごいです。」

「かっこいいね。」

「キャー、水が跳ねました!」

「すごい迫力だ!…って抱きつくないで可奈さん。」

イルカショーでイルカに水をかけられて驚いた可奈さんが抱きついたり

「隆二くん。隆二くん。

ペンギンさんがいます。

持ち帰りたいですね。」

「駄目ですよ。可奈さん

帰りにぬいぐるみで我慢しましょう。」

「えー」

ペンギンを見て持ち帰ろうとする可奈さんを止めたり



と二人で色々周っていく。

可奈さんは水族館は初めてだったのか。

すごい興奮しているみたいで子供っぽかった。


そんな可奈さんに飲み物を買ってきた。

「可奈さん、はいどうぞ。」

「あ、ありがとうございます。

はしゃぎすぎてしまいましたね。

すみません。」

「いえいえ、僕も楽しかったので謝らないでください。

それにしても、可奈さんの知らない一面がみれて楽しかったです。」

相談と言っていた彼女であったがここにきたら先ほどのようにテンションが上がって相談する雰囲気ではなくなったのだろう。

暗い雰囲気には見えない。

まあ、明るいならそれで問題ないだろう。


「わークラゲです。幻想的です。」

「なんか、夢の中にいるみたいだね。」


それにしても、クラゲゾーンを気に入ったのかずっとここにいる。

たしかに、クラゲゾーンは暗いなか、幻想的な光で照らされているのでとてもキレイだ。


今は人も減ってきてとても見やすくなっている。


「可奈さん。

アシカショーが始まる時間らしい

ですけど行きませんか?」


「いえ、もう少しここにいたいです。」


アシカショーが始まるらしく人が僕らぐらいしかいなくなっても彼女は離れようとしない。


「今、相談してもいいですか?」

「今ですか?いいですよ。」

唐突に相談を持ちかけられて困惑するが元々はそれが目的なので問題ない。


「昨日、運命の話をしましたね。」

「はい。」

「たくさんの偶然が重なりありそれが運命になるって話すごく素敵でした。」

「気に入って貰えたのなら嬉しいよ。」

目をキラキラさせながらこっちに話しかけてくる。


「なぜなら、私もそう思っていたからです。」

「あ、そうだったのか」

自分が言えたことではないが可奈さんも結構ロマンチストなのかもしれない。


「だって、

隆二くんが教えてくれたんじゃないですか?」

「僕が?運命を?」

僕が可奈さんに運命を教える?


「隆二くんは私のことを三回も助けてくださいました。見返りも求めずにこれは運命でしょう?」


「いや、僕は一度も可奈さんのことを助けたことなんてないよ!」

彼女は何を言ってるのだろうか?

僕は彼女にあってからそんな出来事はなかった。


「まず最初は入学式のとき緊張と満員電車で駅のホームで体調不良になっていた私に声をかけてくださいました。」

「いや、それは人として当たり前だよ。」 


違う


「次に学校についてから私にしつこく連絡先を聞いてきてあまつや隣の席に座ろうとしてきた男を立ち去らせて助けてくださいました。

駅で冷たい態度を取った私をですよ。

隆二くんはなんて優しいんでしょうか。」

「僕は席に座りたかっただけだよ。」


違う!


「そして、最後に帰りに人に囲まれて動けなくなっている私を大きな音を立てて抜け出す隙を作ってくださいました。

あの時私は運命を確信しました。」

「それも僕の周りがうるさかったから静かにさせようとしただけだよ。」


僕はそんな人間じゃない。

他人を助けるヒーローみたいなことはしていない。


「そうなんですか。全て偶然というんですね。」

可奈さんは少し俯いてしまう。


「ごめんなさい。

だからそれはー「それは素晴らしいです!」」


全て可奈さんの勘違い

と言う声は可奈さんは大きな声にかきけされた。


「私を助けたのが全て偶然の産物…

それこそ運命ではないですか!!」

顔を紅潮させこちらに詰め寄ってくる可奈さん。

「だから、勘違い。」

「隆二くんから勘違いに見えても私は助けられたのです。

偶然が重なりあったからこその運命。

そう隆二くんも言ってたじゃないですか。」

確かに言った。確かに言ったけど…

これは明らかにーーー


「やはり、あなたは…」


彼女の呟きは聞こえず、僕らは水族館を後にした。


彼女は一体何を言いたかったんだろう?

相談とは一体?


横を見ると彼女は上機嫌なようできれいな鼻歌が聞こえる。


「隆二くん、学校に行きませんか?」


僕は彼女が理解できない。



ーーーーーーーーーーーーーー


今回、おまけはなしです。








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