第28話 僕の友達  

家に帰った。

今日も両親は帰れないそうなので一人だ。


昨日はあの後伊万里に問い詰められた。

キラさんとは友達になったと説明したのだが

泊まりの件についてはおかしいと散々聞かれた。

あの日のことは墓場まで持ってかないと…


キラさんからもラインが届き

ごめんね(てへぺろのスタンプ)

で送られてきた。


うん。反省してないなあの人。


ーーーーーーーーーーーーーー



今日は一人で登校する。

キラさんもラクロス部の朝練が始まったららしく朝一緒に登校できないのを寂しがっていた。

久しぶりの一人通学で電車に揺られていると

隣から肩を叩かれる。


「おはようございます。隆二くん」

「可奈さん。おはよう」

可奈さんと同じ電車に乗っていたみたいだ。

「偶然ですね。」

「そこは昨日みたいに運命って言ってくれてもいいんですよ。」

「い、いやあれはですね。」

さすがにそんな浮いたことはポンポン言えない。


「今日の約束覚えていますか。」

「はい、覚えていますよ。」

今日一緒に下校することだろう。


「楽しみにしていますからね。」

「はい。こちらも真剣に臨みます。」

相談を引き受ける手前キチンとしなければ


二人で改札を出て学校に向かったところで


「せんぱい!おはようございます。」

朝から元気な友達に挨拶をされた。



「隆二くん。この子だれ?」

「せんぱい!その美人さんは誰なんですか?」

二人は僕に対してお互いのことを聞いてくる。


「伊万里、おはよう。

彼女は同級生の柊可奈さん。」

「同級生…」

伊万里は少し暗く返事をする。


「可奈さん。

この子は黒森伊万里。

中学生で学校も違うけど僕の友達。」

「友達…」

可奈さんも伊万里と同じような反応をする。


「黒森伊万里です。。

せんぱいとは仲良くさせて貰ってるので

柊先輩もよろしくお願いします。」


「柊可奈ともうします。

隆二くんは私の大切な友達です。

よろしくお願いします。」


義務的な挨拶が行われている。

この二人相性がよくないのだろうか?


「じゃあ、遅れるかもしれませんので行きましょう。

隆二くん。あと放課後もよろしくお願いします。」


「あ、可奈さん。

じゃあ、行くよ。伊万里」

「せんぱい…」

そういって僕の手をとって歩いていく。

一応、伊万里にも挨拶をしたが悲しそうな顔をしていた。

その顔を見て僕の胸が痛んだ。


そのまま、学校に着き、教室まで行く。

さすがに下駄箱で手は話してくれた。


「急にどうしたんですか?可奈さん。」

「…」

教室に着くと可奈さんにさっきのことを聞いたが返事をしてくれない。

少し時間がたつと




「隆二くんは私の友達ですよね。」

吸い込まれそうに黒い目でこっちに話しかけてくる。


「勿論ですよ。

僕と可奈さんは友達です。」

「なら、いいです。」


そう言うと可奈さんは授業の準備を始めた。




お昼になり、美化委員の活動を行う。

今日はキラさんと一緒に水撒きの作業作業をしてる。

「あまり水をやりすぎないようにね。」

「そうなんですか。」

「やりすぎると根腐りするから枯れやすくなるんだよ。」

「キラさんは物知りでかっこいいですね。」

「…っ。ふふふ、そうでしょそうでしょ!」

キラさんは

赤面したりどや顔したりニコニコしたりと

コロコロ表情が変わる。

他の部員の人たちはそれに対して…


「合間さんってあんな顔をするですね。」

「合間先輩、かわいい。」

「クールな合間さんとのギャップが…」


驚いているようだった。


美化委員の仕事が終わり昼ごはんの時間になる。


「隆二、そういえばいまりんのことごめんね。」

「あ~、あれですか。別に問題ないですよ。」

嘘だ。おおありだった。


「いまりんとRINEしてたら、隆二みたいにしゃべりやすいから、ついしゃべりすぎちゃって…ごめんね。」

僕の服の袖をつまみながら理由を説明してくる。


「二人が仲良くしてるみたいならよかったです。」

僕なんかのことの話題で二人が仲良くならそれに越したことはない。

むしろ、役得でもある。


「これからも伊万里と仲良くしてやってください。」

「隆二に言われなくてもそうするよ。」

キリッとした感じでキラさん言ってくる。


「隆二はいまりんのことが大事なんだね。」

「だって、大切な友達ですから

もちろん、キラさんも」

「そっか…」


そう言って楽しく昼御飯を食べたのであった。



ーーーーーーーーーーーーーー

「じゃあ、行きましょうか」

「はい。」

今日は午前中で授業も終わりで

終わり次第、可奈さんと二人で教室を出る。


「少しお金を使うところに行きますけど大丈夫ですか?

私が払ってもいいですけど。」

「はい、大丈夫です。

可奈さんに払って貰うのは流石に…」

お金の貸し借りは流石にしたくない。


電車にいつもとは違う駅に降りる。

あんまり人に聞かれない場所で相談をしたいのだろう。


「これから、どこに行くんですか?」

「水族館に行きます。」


「え?」

これって相談なんだよね。

いや、もしかしてーーーーー




ーーーーーーーーーーーーーー

おまけ


このオモイの正体は?


せんぱいの背中が遠ざかって行く。

私はただ見ていることしかできなかった。


せんぱいがきれいな女の人と手をつないで

歩いていく。

私はただ見ていることしかできなかった。


胸が少し痛くなった気がした。


きれいな女の人はせんぱいの友達らしい。

らしいというのは彼女は私に対して敵意を向けてきたからだ。

挨拶をするときにせんぱいは自分のだから手を出すなと遠回しに言われた。


せんぱいと私はなのに


せんぱいからはあの後謝罪のメッセージが届いた。

その文面はとても丁寧で私を気遣ったものだった。

その文面を見て胸の痛みがなくなった。


なんだろう。この気持ち


放課後、たまたま

せんぱいを見かけた。

話しかけようとしてやめた。

隣にはあのきれいな女の人がいた。

どこかに出かけるのだろう。


私はただ見ていることしかできなかった。


胸に痛みが走った。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る