第27話 運命

「白木、仕事を頼んでもいいか?」

従業の間の昼休みに氷川先生に話しかけられる。

「いいですよ。」

「ありがとう。すごく助かる。」

次の時間は自習なので了承する。


「ここでホッチキス止めの作業をしてもらいたい。」

先生に空き教室に案内され仕事の説明をされた。

「あと一人、呼んでいるからそれまで一人で頑張ってくれ。」

「了解しました。」

「頼んだぞ。白木」


パチンパチン


ホッチキスの音だけが淡々と鳴り響く。


パチンパチン


一人になる時間が昨日からほとんどなかったため少し落ち着く。

こういう仕事も僕の性格に合っている。


パチンパチン


土曜日に美化委員の仕事があると山田先生が言っていたが僕も行っても大丈夫なのだろうか?

後でキラさんに聞いてみよう。


ガラッ


教室のドアが開く。


「あ、隆二くん。」

「可奈さん?」

可奈さんが立っていた。

そのまま可奈さんが教室に入ってくる。


「隆二くんも氷川先生に仕事をお願いされたんですか?」

「はい。

まあ、自習をしていても暇なんでちょうどいいかなって思いまして。」

「ふふ、そうですよね。」

可奈さんもそういうこと思うんだなぁ

少し意外に思う。


「私は隆二くんと作業できるだけで楽しいですよ。」

「そう言って貰えると嬉しいです。」

笑顔で言ってくる可奈さんに平静に答える。

少しその笑顔にドキドキする。


パチンパチン


可奈さんに仕事内容を説明を二人で黙々と作業を行う。

可奈さんもいるが思ったよりも意識せずに作業することができた。

それから少しの時間、作業音が鳴り響いていた。

 

「隆二くん。ちょっと聞いてもいいですか?」

「不備でもなにかありましたか?」

「いえ、ただの雑談なのですが。」

「いいですよ。」

まあ、少しくらいの雑談なら特に問題ないだろう。


「隆二くんって運命というものを信じますか?」

「運命ですか?」

質問の意図がまるで分からないが質問の内容に関してはなんとなく分かる。


「僕は運命というのはあるとおもいます。」

「…」

「僕らこうやってここにいるのもたくさんの偶然が重なりあったからこそだと思うんですよね。」

「偶然ですか?」

「そう。偶然。

たまたまと言ったら運命っぽくないですけど

偶然が一つでも起きなかったら僕らはこうやってしゃべったりなんかもしてなかったと思いますし。」



僕らがここに生まれたこと。

僕らがこの学校に通い始めたこと。

入学初日、僕らが駅で話したこと。

僕らが一緒のクラスになったこと。

僕らがゲームセンターであったこと。



一つ一つは偶然である。

しかし、この中の一つでもなかったら僕らは今のような関係にはなっていなかったと思う。

だから、僕は運命を信じる。


「そうですか…」

「なんて。

恥ずかしいこと言っちゃいましたね。」

「恥ずかしくなんてないです!」

可奈さんは顔を少し紅潮させて言ってくる。


「とても素晴らしい考えだと思います。」

「ありがとうございます。」

自分の考えを肯定して貰えるは嬉しい。


「私も隆二くんに会えたことは運命だと思っていますよ。」

「…」

笑顔の可奈さんに照れてしまい、その後は無言で作業を行った。



「リュウジクンモ…トオモッテ」


ーーーーーーーーーーーーーー


放課後になり下校する。

今日は特に予定がないのでそのまま帰る。

部活に関してはどこにも入らない。

可奈さんも帰宅部にするそうだ。


駅の方に向かって歩いていると見覚えのあるツインテールが目に入る。


「伊万里か?」

「せ、せんぱい!」

伊万里は驚いている。

昨日もあっているのにそんなに驚くことだろうか。

「こんばんは。伊万里」

「こんばんはです!せんぱい」

伊万里は元気よく挨拶してくる。

元気は一番だな


「今日はなんか機嫌がいいね。」

「なんででしょうかね~」

こちらをじっと見てくる伊万里。

「伊万里はかわいいな。」

「…っ。ありがとうございます。

 せせせんぱいもかっこいいですね。」

誉められると嬉しいと前に言っていた伊万里だったが

わざわざ僕のことを誉め返してくれるとは思っていなかった。

「あ、ありがとう。」

「あ、あーせんぱい。

もしかして、照れちゃってますか?」

「伊万里に言われたら嬉しいに決まってるよ。」

「ふふふ、せんぱいも伊万里のかわいさにメロメロですね。」

胸を張りながら伊万里はこちらを見てくる。


「せんぱい。一緒に帰りましょ。」

「いいよ。」

「やったー!」

一緒に帰路につく。

彼女はその間ニコニコしていた。


「そういえば、キラ先輩からせんぱいが家に泊まったって写真付きでRINEが送られてきたんですけど何かあったんですか?」


終始、機嫌がいいと思っていたが僕の勘違いだったらしい。


なにやってるくれてるんですか!?キラさん!




ーーーーーーーーーーーーーー

おまけ


偶然という名の必然


「柊、ちょっといいか?」


「はい?なんでしょうか先生。」


「次の自習時間、仕事を手伝って貰えるか?」


「別に構いませんよ。」


「空き教室の方でホッチキス止めの作業をやって貰いたいんだ。」


「了解しました。休憩が終わりましたら向かわせていただきます。」


「ああ、助かる。

あと一人くらい人を呼んでくるから一人で作業というわけではないから安心しろ。」


「あ、氷川先生でしたらーー」



ーーーーーーーーーーーーーー


氷川先生に仕事を頼まれたのは偶然です。


あと、10話くらいで完結する予定となっておりますので応援のほどよろしくお願いいたします。










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