第25話 何でも言い合える関係
朝起きると隣でキラさんが気持ちよさそうな顔をして眠っていた。
起こしたらまずいと思いつつも抱きついているキラさんをはがして
布団から出ようとすると
がちゃ
「二人とも~
朝だよ。隆二くんの家に寄るんだから早めにご飯作…
失礼しました~ごゆっくり~」
ばたん
月さんはそそくさどっかに行ってしまった。
いや、誤解だから!
「ん…うーん。」
「あ、キラさん起きましたか?」
「ん??隆二?」
抱き着く力を強くしながら薄目でキラさんは僕の方を見てくる。
正直、寝間着ということもあり目のやり場にすごく困る。
「はい、隆二です。おはようございます。」
「おはよう。隆二」
ようやく先輩から解放されベットから離れることができた。
「ご飯が出来ていると月さんが言っていたので行きましょう。」
「…」
「キラさん?」
キラさんは起き上がろうとしないで僕の方を見ている。
「キス…」
小声で何かを言っている。
「なんですか?キラさん。」
「おはようのキスは?」
「何言ってるんすか!?」
寝起きなのでいつもより幼げな感じで話してくるキラさんは
すごく欲情的だ。
「ん…」
目を閉じてこちらからのキスを待っている。
「駄目です。」
「隆二のケチ…」
拗ねたようにこちらを見てくる。
「じゃあ、起こして?」
両手を広げて待っている。
彼女は朝は弱いのか。幼くなっているように思える。
「いや、でも」
「駄目?」
「…いいですよ。」
甘えるような声で言う彼女に負けた僕は
キラ先輩を抱き起す。
「ちょっ、キラさん!?」
「ギュー。」
キラさんが抱き着いてくる。
「隆二、あったかい…」
「せ,先輩離れてくだ…ひいい!
耳を食べないでくださいいいい」
「はむはむ。隆二の耳おいしい。」
いや、これはさすがにまずい。
色々と意識してしまう。
「隆二…」
キラさんの顔が僕の顔に近づいてくる。
僕は動くことが出来ずそのまま彼女を…
バンッ
「ご飯冷めちゃうからいい加減起きてきなさ…」
ドアを開いた月さんは僕らが抱き合っているのを見て
固まってしまった。
「る、月さん!」
やばいところを見られた!?
突然の事態に思考が止まっていると
「若いからご盛んなのは分かるけど
避妊は必ずするのよ!」
「うん、わかったよ。母さん。」
いい笑顔でこちらに親指を見せながら検討違いなことを言って部屋から離れる月さん。
あと、さりげなく返事を返さない!
「いや、違いますから!勘違いですから!!」
朝から僕の絶叫が合間家に響き渡った…
――――――――――——―
「隆二くん。ありがとうね」
朝食が終わった後月さんは小声で僕にそう言った。
多分、先輩の変化に気づいたのだろう。
いい母親だ。
本当にキラさんのことをよく見ている。
「隆二、行こっか。」
「うん。
月さん泊めていただきありがとうございました。
朝ごはんもおいしかったです。」
「いってらっしゃい。二人とも~
隆二くんもまた来てね~」
「はい、お邪魔させていただきます。」
僕らは月さんに見送られながら、キラさん家の玄関から外に出た。
「じゃあ、隆二。
今日のお昼はよろしくね。」
「美化委員の仕事でしたね。
色々よろしくお願いします。」
学校に着き、キラさんと別れて教室に向かう。
朝は色々あったが登校中のキラさんは特に会話をせず、一緒に電車に乗ってここまできた。
しかし、時折
僕の服の裾を軽く摘まんできたり手を握ってきたりしてくる彼女の姿はいじらしかった。
朝は寝起きだから寝ぼけて僕に甘えようとしてきてるのかと思ったがどうやら違ったようだ。
彼女はきっと僕との距離を計りかねているのだろう。
昨夜、急に変わった関係でまだついていけてないのだろう。
まあ、少しずつ変わっていけばいいだろう。
教室に着き自分の席に着くと昨夜伊万里からあったメッセージを返信する。
こんばんは~せんぱい
せんぱいってあれですよね~
かわいい後輩がいるだけでもあれなのに
キレイでスタイルの先輩がいて良い身分ですね。
あれってなんなんだ。
ともかくすごく嫌みを言われている。
いや、身分もなにもないんだけどね。
しかし、彼女との関係もどうにかしないと…
返信しながら伊万里との関係を考えていると
「おはようございます。隆二くん」
「お、おはよう。可奈さん」
可奈さんも登校していたようだった。
昨日のこともあり少し挙動不審になる。
「昨日はよく眠れた見たいですね。
なんだか上機嫌に見えます。」
「うん、よく眠れたよ。
そう見える?
ちょっと悩みも解決したからかもね。」
友達らしい日常会話を行う。
可奈さんは僕のことをよく見ている。
機嫌の機微も分かるなんて…
僕にはもったいない友達だ。
「どんな悩みだったんですか?
私に相談してくれればよかったのに…
友達なんですから。」
「いや、これは僕の問題だから
可奈さんには関係ないよ。」
流石にキラさんとのことは言えない。
口が裂けても言えない。
色々と言えないことしかしていない。
「関係ない?」
空気が変わった気がした。
「可奈さん?」
「隆二くん、関係ない?
私と隆二くんは友達なんだよ。
友達って辛いときは支えあって
何かあったら相談するんじゃないの?
なのに私には関係ないの?」
僕と距離を詰めて責めるような口調で言ってくる。
幸い僕ら以外に人がいないため注目はされなかった。
「いや、本当に可奈さんには関係ない話だから。」
「関係ないかは私が決めるから教えてよ。
昨日どんなことがあって何が君を苦しめていたの?」
「言えないよ。
それにもう終わったことだから気にしなくていいんだよ。可奈さん」
息をすれば届くくらいで聞こうとしてくる。
「ワタシト…リュウジクンハ…ダモン
ナノニ…ゴトスルナンテユルサナイ」
「可奈さん?」
聞き取れないぐらいの早口でなにかを言った。
ぼくはなにか言ってしまったのだろうか?
「隆二くん。
今回のことはこれ以上は聞きません。
ですが、次になにかあったときは私に
絶対相談してださい。」
「分かったよ。可奈さん」
圧を感じ、とりあえず了承する。
そうすると彼女は笑顔になり僕に言ってくる。
「絶対ですよ。
絶対に相談してくださいね。
だって、私たちは友達なんですから」
ーーーーーーーーーーーーーー
おまけ
とある電車の一幕
少女は悩んでいた。
昨日までだったら、
少年に頭をなでたり
抱きついたりして登校の時間を潰していただろう。
しかし、今日はしていない。
正確に言うとできないのだ。
は、はずかしい
昨日までは当たり前のようにできたのに
うまく話したりスキンシップをとることができなくなってしまったのだ。
少女は隣にいる少年の方を見る。
こんな人がいるなかで甘えるなんてできないよ。
本当の彼女は甘える方が好きなのである。
だからこそ、朝は彼に甘えた。
しかし、今は人混みの中、そんな中で彼に抱きついたりするのは流石にはずかしすぎる。
昨日までの自分は棚上げである。
それでもどうにか甘えようと思い
彼の服の裾をつまむ。
彼は少し驚いたようだが
優しい目でこっちを見てくる。
甘えたいのを抑えるためにやったつもりがもっと甘えたくなる。
駄目だ…我慢できない…
私は裾から手を離し彼の手に持っていく。
彼から握ってくれないかな?
恥ずかしくて自分からは握ってとは言えないので
彼の方を見る。
少し赤くなりながら手を握ってくる。
手を握られると私の心が暖かくなる。
その感覚を感じながら私は思った。
あぁ、しあわせ…
ーーーーーーーーーーーーーー
おまけに関しましては
少女の母親により名前を伏せられました。
次回からは自称友達兼同級生の柊可奈の
ターンです。
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