第18話 否定と肯定

本日の授業が終わり、可奈さんと一緒に前日同様部活見学に向かう。


「今日も一緒に見て回ろうね。隆二君」

「うん。」

今日は文化部を中心にまわることになっている。

ただ


「あの~可奈さん?

手をつないでまわるのはやめませんか。」

そう僕らはなぜか手をつないで教室をまわっている。


「友達なんだからいいじゃないですか。

それとも隆二くんは私と手をつなぐの嫌ですか?」

悲しそうな顔で言ってくる。

その顔は卑怯だ。


「い、嫌ではないけど」


「なら、問題ありません♪」

一転上機嫌になって歩を進めていく。


吹奏楽部や美術部、軽音楽部など様々な部活動があったが可奈さんが気に入るものはなかったようだ。


「隆二君はなにか気に入った部活はありましたか?」

「うーん。とくになかったかな」

「そうでしたか…」

そう言うと黙り込んでしまう可奈さん。

彼女は彼女で個人的にピアノ教室にも通っているらしいし

なかなか部活動と言っても難しいのかもしれない。

そう考えていると


「私は…」

「どうかしたの?可奈さん?」

「私は隆二君と同じがいいです。」

「え?」

彼女が何を言ったのか一瞬理解が出来なかった。


僕と同じがいい?


「せっかく、お友達になったのに教室ぐらいでしかお話できないのは寂しいです。」

「え、でも」

「隆二さんは寂しくないですか?」


これはいったいどういうことだろう?

確かに僕は可奈さんと友達になった。

しかし、彼女との付き合いはまだ三日に過ぎない。

寂しいという感覚になるほど時間を過ごしているわけではない。

明らかに距離の詰め方がおかしい。


そもそも、高校に入ってから、僕のまわりの女の子たちの距離の詰め方はおかしい。


可奈さん然り

伊万里然り

キラ先輩然り


普通の感覚だとモテキとでも思うのだろうか?

僕には無理だ。

考えれば考えるほど怖くなっていく。


僕はやはり騙されているのだろうか?


誰も疑いたくない!

僕に向ける笑顔を嘘だと思いたくない!


僕は最低だ

人を信じない癖に人を信じたいと思ってしまう。


つらい


つらい


たすけて


「隆二くん!?」


僕は膝をついて頭を抱えてしまう。


人が怖い

裏切られるのが怖い

なによりこんなことに悩む自分が嫌い


その時、抱きしめられる感覚がした。


「隆二君。大丈夫ですよ。」

「ごめんなさい,ごめんなさい。」

「謝ることなんて隆二君はしてないですよ。」

彼女は優しいこんな急に泣き出した僕に寄り添ってくれる。


「可奈さんのことを信じられないんだ!

友達だって言われても裏切られるんじゃないかって怖くなるんだ。

最低だよね。可奈さんに失礼だよね。ごめんね

僕はこんな自分が嫌い。大っ嫌い!!」

全てをぶちまけてしまった。

もう駄目だ。


この場から逃げ出そうとすると


「信じなくていいですよ」

「え」

彼女は僕のことを真剣に見つめて言ってきた。


「でも、そんなの誠実じゃ…」

「誰だって相手のことを100%信じることはできませんから

相手のことを疑うことは酷いことでも誠実じゃないことでもありませんよ。」

「可奈さんを疑ってるって言っても?」

可奈さんの言うことに揺さぶられながらも聞く。


「ええ。会って3日の私を信じろなんて言って信じる人など頭の悪い人かよっぽど育ちのいい人ですよ。」

「これから,疑い続けるかもしれないよ。」

「いいですよ。だって隆二君は疑うだけで離れたりはしませんよね?」

可奈さんはウィンクしながら聞いてくる。


「相手が離れるならまだしも僕からは離れる気はないよ…」

そう裏切って相手から離れていくならまだしも

僕から裏切ることも離れることもしたくない!


「ならいいです。私は隆二君と一緒にいられるなら関係ないですし。」

「…」

言葉に詰まる。


「ずっと一緒に入るんですから、信じる信じないとかどうでもいいじゃないですか?」

「だから、もう一度友達としてやり直しませんか?」

「やり直し?」

「はい、やり直しです。

 私は柊 可奈です。

 隆二君にどう思われようと友達でいます。

 だから、これからよろしくお願いします。」


「は、はい!

 白木隆二です。

 今は誰のことも信じられません。

 だけど、可奈さんのことを信じられるように絶対なります。

 これからよろしくお願いします!」


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


この時の笑顔は見る人が皆惚れるような笑顔だった。





――――――――――――――



おまけ


気に入らない部分




「あ、でも一つだけ嫌なことがあります!」


「やっぱり、嫌だよね」


「何を考えているか分かりませんが多分違います。」


「私が嫌だったことは隆二君が自分のことを嫌いだって言ったことです。」


「最低なのは事実だから」


「隆二君のそういうところ好きですから、

いくら隆二君でも嫌いっていうのはゆるしません!」


「え?あ,でも」


「返事は?」


「は,はい!!」


「よろしい」




――――――――――――――――――――――――――――――



おまけの登場人物は若気の至りということで

人物名が出ていようが詮索しないでください。

































 









































































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