帰宅部なもので
ぐらにゅー島
帰宅
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、一斉にクラスのみんなが席を立つ。放課後、それは僕たち学生にとってのオアシスだった。
「佐藤、一緒に帰ろうぜ!」
今日も僕の席に田中が真っ先にやってきて、僕を誘う。しかし、
「残像だよ」
僕の席に、もう僕はいない。だって、僕は『帰宅部』なのだ。人と話している余裕なんかない。僕は早く帰らないといけないのだ、
「え、佐藤もういないの!? 今日掃除当番なのに……」
教室から田中の嘆きが聞こえる。……え、僕今日掃除当番だったんだ。知らなかったなんかごめん。そう心の中で呟きながら廊下を走って行く。田中にはほんのすこーーーしだけ申し訳ないとは思ってる。いやマジで。
人がいない体育倉庫裏にきた。
「テレポート」
僕はそう呟いて家の前まで転移する。え、チートだって? そんな文句言うなよ。別に僕には帰宅部としてのプライドとかないからさ……普通に早く帰れたらそれで良い。
「あ、佐藤おかえりっ!」
「ああ、ただいま」
家の中から僕の幼馴染の女の子がエプロンをつけて出てくる。なんで幼稚園の頃から高校生になるまでずっと仲良しなのにまだ苗字呼びなのかは謎である。
「ご飯にする? お風呂にする? それとも…帰宅?」
「ここは僕の家なんだが」
「えー」
むすっとする彼女の笑顔が可愛かった。
彼女は不登校になってしまって、もう何年も経つ。彼女には居場所がないから、僕が居場所になってあげたい。1秒でも長く、この子の隣にいてあげたい。
「明日も早く帰宅できるように頑張るよ」
「うん!」
この笑顔を守りたいから、僕は今日も帰宅する。
帰宅部なもので ぐらにゅー島 @guranyu-to-
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