第34話 最終決戦

「や、やったわね!」


 サーラが驚いた後でオレに抱きついた。それを皮切りにみんながオレを抱きしめて、歓声を上げた。オレも安心して一息ついた。


「ふー。なんとかなったな」

「えぇ、すごいじゃない。良かったー!漫画の続きが読めるわ」

「神崎さん、すごい力でしたね!」

「で、まもちゃん。今のなに?」

「おい、アントニオ説明しなかったのか?」

「ふふっ、そんな時間ありませんでしたよ」


 思い思いに興奮を語るのをよそに、、オレはおしくらまんじゅうのように密集した集団から一歩前に出た。アントニオに向けて振り返る。


「さっき頼んだ奴くれるか?」

「えっ?ああ、あれですね。今車から持ってきます」


 アントニオからその物を受け取る。多江ちゃんが首を傾げる。


「なんですか、それ」

「あぁ、これはオレの爺さんがこっちに来た時の転移装置だ」

「へぇー、何につかうんですか?」

「これから決着をつけに」

「へ?」


 みんな首を傾げた。オレは笑いながら告げる。


「オレを待ってる奴がいるんだ。ソイツを倒さないとこの戦争は終わらない」


 サーラやアントニオはピンときたようで真剣な顔をした。


「聖ノブリス王…。でも、貴方勝てるの?」

「さあな。でも、まあ勝つさ」



 オレは任せろと言わんばかりに力強く頷いてみせてから、転移装置のボタンを押した。


「みんな、またな」


 みんな不安な顔をしているのを見ながら、オレは姿を消した。




 そこに大仏の手のひらに乗った喜介が慌てた様子でやってきた。


「すみません!神崎守さんは?!」

「今、あっちの世界に飛んで行ったわ。王様を倒しに行くそうよ」



 大仏に乗っていることから関係者と断定したサーラがさらりと答えると、喜介はショックを受けたようだった。


「そんな…。せっかくお爺ちゃんにエクートを与えて助けてくれたお礼を言おうと思ったのに間に合わなかった…」

「帰って来てから言ったら?」

「えっ?神崎さん、帰って来られるんですか?」

「えぇ。転移装置もあるし、あのエクートならすぐ必要なエネルギーはたまるはずよ」

「えっ?神崎さん、もうすぐエクート使えなくなりますよ?」



「…は?」


「だって、神崎さんは一時的にエクートを取り戻すだけの方法でしたので、あと五分か十分で使えなくなるはずです」




 それから三年が経った。戦闘やビルの崩壊による死亡者五千人、将棋倒しや自死などの関連死五百人、負傷者数不明。平和を取り戻した日本で復興は進み、東京都心には建てかけのビルが何棟も空に伸びる光景はもう当たり前のものとなった。


 三年経過した今もなお、神崎守の生死は分かっていない。

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