第24話 ついに門を閉じる!
オレとサーラは門に正対した。紅い靄のようなものに覆われたオレたちは二人は、強風に煽られながらもただ門を一点に見つめていた。
「いくぞ」
「ええ」
オレが右手を門に向かって掲げ、エクートを発射するイメージを持つと紅い靄が一直線に高速で伸びていき、門の中央部にぶつかった。ぶつかってから約一秒後鐘を打ったような衝撃音が鳴り、門が微振動し、地面が揺れ始めた。
サーラが驚く。
「すごい…っ!本当に門のエネルギーが消失していく」
「でも、これじゃ駄目だ!サーラ、出力を上げてくれ!」
「うっ、そんなこと言われても…っ。今だって限界なのに…!」
「それでもだ!じゃないと、奴らに気付かれる!」
「分かってる…わよ!やってみてるから…!」
サーラがそう言うとオレの紅い靄の噴出量が少しずつ上昇していく。オレは叫んだ。
「ナルミア!この門がしまったら、酒を飲もう!その後、第二王子をぶん殴りに行こうぜ!」
「ナルミアは未成年よ…」
答えないナルミアの代わりにサーラが突っ込む。
「そうか。まあ未成年でも酒は飲める!」
「それに、そういえば…。貴方門が閉じた後…、どうやって連れて行くわけ?」
サーラがこっそり耳打ちする。オレは目を点にした。
「えっ?」
「閉じたら…、複数人が移動できる次元転移装置はなくなるじゃない。まさか何も考えてないわけじゃないんでしょう?」
「えっと…。釈迦さん!日本に次元転移装置ってありますかー?」
「ないわ」
「ババアは?」
「あるわけねぇだろ」
「な、ナルミアは?」
「…」
「ねぇちょっと。本当に何も策無いの?!」
「…」
オレは目をぎゅっとつむり考える。ハッとしてオレは釈迦さんに叫んだ。
「すみませーん!そこのスマホからアントニオに、『オレの部屋にあるこんなやつ探してきて』と伝えてもらっていいですか!?」
「いやよ。なんで私がそんな使いっぱしりみたいなことしなくてはならないのよ」
「そこをなんとか!」
そして、オレは言伝を頼んだ。
「これで何とかなるはずだ!」
「なんなの、それ?」
「秘密。さあ、もう一踏ん張り行くぞ!」
「はぁ…。まあいいわ。私はどの道あの国には帰れないし」
そうしてまた集中して、放射を続けた。集中力を高め、紅い靄を太くするに連れて、サーラの表情は険しく、息遣いが荒くなっていく。
そして、ついにその時が来た。
サーラが後方に見えない力で弾き飛ばされる。二、三十㍍転げた後サーラはそのまま「うぅ…」と苦悶の表情を浮かべながら、立ち上がれずにいた。オレはサーラをじっと見つめる。紅い靄が発露することがなくなり、オレの周りの紅い靄が霧散していく。
ババアが少し残念そうに呟いた。
「嬢ちゃんの方が先に来ちまったようだね」
限界。そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
オレのエクートの量をサーラは扱えなかった。オレたちの間にただ沈黙が降りてきた。
門は悠然とその姿を残したままで。
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