第19話 膠着と期待
「で、どうする訳?」
サーラは呆れながらため息混じりでオレに聞く。オレは大の字に寝そべりながら、星空を眺めながら答える。
「うーん。ナルミアを第二王子に会わせてやりたいからな。そうだ。サーラ、君がこっちに来た時の移動装置とかないのか?」
「ないわよ。ある人に送ってもらっただけだから。片道切符よ。それにそのことよりもまずは目の前の門のことでしょ。時機に開くわよ。エクートのない貴方がどうやって守るっていうの?」
「そうだな…」
そう言って考えるフリを時間稼ぎをしていたところ、たまたま一つの案が思い浮かんだ。
「そういえば、なくもないかもな」
「何よ、どっちなの?はっきりしないわね」
「こう言うのは"焦らし"が大事だろ?」
「はあ…。こんな場面でなんでそんな余裕なわけ?今、貴方のせいで頭抱えているんですけど」
「そっか、すまんすまん」
「すまんは一回でしょ」
「学校の先生かよ」
「で、なんなの?」
「思い出せ。今日一日で出会った人のことを。オレはその中の一人、"ある人物"にこう言われたんだ。『力が欲しいか?』と」
「うーん…。いつよ?」
「ナルミアに斬られた後」
「ふーん…?あっ、確かに!」
「確かに?アンタ寝てなかった?」
「うっ、あぁ、そう!ちょっと夢現で聞いたような気がするっていうか…」
「盗み聞きしてやがったな?」
「…」
「黙るな。小学生かよ。まあ、いいや。つまりだな。オレの力を戻せる奴がいる。一人だけ。それは…」
「お呼びかい?」
サーラの後方からしゃがれた声がした。
スパァー。
紫煙が強風に吹かれて消えていく。真っ赤な唇に、皺だらけの口元。煙草を挟む皺くちゃな細い指に、真っ赤なマニキュア。盛り過ぎたマスカラとパンチパーマ。
この場末感、間違いない。オレは顔を傾けてサーラの後方に目を遣り、ニヤけながら呟いた。
「遅かったな、ババア」
「チッ。普通にババア呼びすんじゃねぇよ、馬鹿タレが」
舌打ちしたババアが煙草の吸い殻をオレに向けてデコピンで飛ばす。オレのデコに乗ったそれはとても熱く、オレは慌てて払い除けた。
「ふざけんな、ババア」
「へっ、自業自得だよ」
「はいはい。ところでババア」
「なんだい?」
「勿体ぶるなよ。分かってんだろ?」
「はあ?生意気な奴だね。ちゃんと口に出しなさいよ」
「はいはい」
「で?」
「オレに力をくれ。アンタなら出来るんだろ?」
ババアが「へっ」と笑い、煙草に火を付ける。ふーっと一息吐くと、こちらに向けて呆れた顔を向けた。え?なんで?
「そんなことできやしないよ」
「はっ?」
「誰がそんなことできるって言ったんだい?クソチンポ」
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