第16話 対決二戦目
強風の中、オレとナルミアは二十㍍程度の距離で向かい合った。
風にナルミアのマントが煽られ、バタバタと旗めいて、人気の無い道路を缶がカラカラと転がる。
ナルミアの顔は昼間と違っていた。今は不貞腐れたような顔でオレを睨みつけている。その目は底無しに暗く、生気がない。オレは"この目"を知っている。
ナルミアは苛立ちを露わに叫んだ。
「アンタのせいで、僕はルールを犯してしまったんだっ!アンタがエクートを使わないせいで僕は!…卑怯者になってしまったんだ!そのせいで兄さんは…、兄さんは…っ!僕ともう一回勝負しろ!今度は全力でだ!」
サーラが慌てて弁明しようとする。
「待ってナルミア!この人は…」
オレは左手を挙げてサーラを制止した。サーラにアイコンタクトを送り、「オレに任せろ」という意味でコクリと頷いてみせた。
「オレはエクートを使えない」
「はぁ?そんな嘘通じないと思ってんの?」
「なら、調べてみろ。だが、お望み通り相手はしてやる」
「どう言う事?」
「道具なしの素手のみ勝負だ」
サーラがオレの肩を掴み、「ちょっと!」と辞めさせようとした。だが、オレはそれを払い除ける。
「オレたちの時代1990年代にはとある不良漫画が流行ってな」
「シローズね」
漫画好きのサーラがすかさず相槌を入れた。ナルミアは訳がわからない話に苛立ち、オレを睨みつけていた。
「誰もが腕っぷしを競って喧嘩に明け暮れる日々だった」
「へぇー、そうは見えないわね」
「で?それがなんなん?」
「つまり、オレも腕っぷしには自信があるってことさ。だから、思いっきりかかってこい。お互い素手ならお前の言う卑怯者にはならないだろう?」
ナルミアは少し戸惑っていた。しかし、オレと視線を絡ませて五秒。マントを脱いだ。
「たしかにね。なら、やろう。アンタを殺すんだ」
「来いよ。エクートなければオレには勝てないだろうけどな」
「貴方じゃ無理よ!ナルミアに敵うわけない!」
「うるさい!口を挟むんじゃねえ。これは男の勝負だ」
「何よ、急に。男らしさなんて微塵もなかったくせに…」
サーラが不満を言うのを無視して、オレはナルミアに向かい歩き始めた。同時にナルミアも歩き出す。あと一歩でお互いの間合いとなる、そんな位置で止まり、見つめ合った。風が吹き荒ぶ中、オレ達は"合図"を待った。
そして遂に、オレの煙草の灰が落ちたのキッカケにして、二人とも一歩踏み込み、拳を振った。
三秒後。
オレは地面に伏していた。
いっっっつたぁぁぁああああああ!
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