四、朝餉


 ・・・むぐむぐ。うん、美味びみ


 紫は料理上手なのだ。うちの父が下手くそだったこともあり、非常にありがたい。

 とろっとろ、ふわっふわの、あまーいだし巻き卵を口に放り込み、ん~‼️、と悶える。


 今は富貴家の朝餉の時間だ。母の紫、長男の清貴、弟の富貴、末っ子のゆかり、居候の私。そして、里犬さといぬのシロ。里犬とは、野良犬とはまた違った、人家に住み着いた犬のことらしい。2年前ほどから住み着いたらしい。シロは、少し小さく、表情が幼く、真っ白の毛並みだ。

 父は、仕事で遠くにいるらしい。


 朝餉を掻き込んでいる四人と一匹を見て、はたと動きを止める。


 ・・・む。改めてここにいる面子メンツを見渡して、悲しくなってしまう。


 美形、多‼️

 犬まで美形、とまではいかないが、真っ黒の毛並みはつやっつやでもっさもさのふっさふさ。思わずわしわし撫でたくなる。


 紫は女神。清貴は目鼻立ちがしっかりしていて目を引く感じ。紳士、と言うよりも美男ただのイケてる面、かな?ちょっと美少年、いや美少女っぽい。

 富貴は目がゆかり同様大きくて爽やか紳士、な感じ。


 ・・・って、私なに考えてるんだろう?はふぅ、漬物さいこー。



 「葵ちゃん、今日の予定はある?」


 

 「ええーと、・・・特にはありません」



 「じゃあ、お願いしたいことがあるの」


 ・・・嫌な予感がするぞ?


 冷や汗を滴ながら無言で先を促す。


 「ふふっ、うちの、富士神社を貴女に手伝って貰いたいの」


 紫は喜色満面で人差し指を顎に当てている。

 

 「おねがい?ね?」


 ・・紫さぁぁん‼️そこでちゃっかりだし巻き卵を追加しないで下さぁぁい⁉️


 やはり、折れるしか、ないようだ。


 私はがっくし、と肩を落としながら、「私の回りって押しが強いひとが多い・・・」と嘆くのであった。



   ◇◆◇



 食後、紫から渡された巫女服に着替えるまで、逃げられるまで癒しを求めてわしわしとシロの体を撫でていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る