三、富貴家

 ミーン_ミーン_ミーン___ジジジジジジジジジジジジジジ‼️


 けたたましく鳴く蝉の声での目は覚めた。


 __ああぁ、もうっ‼️今日もに起こされた⁉️


 苛立つ。非常に、物凄く。


 私はふんぬぅ、と日が差す障子に睨みをきかせながら起き上がり、寝巻きのまま髪も結わずにガラッ‼️と障子を開けた。


 ──毎朝毎朝、ほんっとうに・・・‼️


 「うるさーーーーい‼️」


 と、庭先の蝉どもに力の限り叫んだ刹那、それはピタリと鳴き止んだ。



 静粛になった廊下ではぁはぁ、と肩で大きく息をしていると、奥の方から鈴を転がしたかのような可憐な笑い声が聞こえてきた。


 声がした方に振り返ると一人の女性がたっていた。


 髪は艶があり、綺麗に丸髷まるまげにされ、美しい着物を纏い、笑みを浮かべる姿は「女神」以外に形容しがたい。

 

 「ふふっ、今朝も元気が良いわね~。」


 「・・・むらさきさん‼️」


 紫は富貴の母である。おっとりほわほわしていて若干天然要素が入っているが、素敵な人だ。そんでもって、勘が強くて怒ると恐い。



 「朝餉はもうできているわよ。早くきが・・」


 紫の声はそこで途切れた。代わりに私の隣の部屋の障子がすっ、と開いた。



 「ふあぁ・・・葵姉あおねぇどしたの?大声だして」


 起きちゃったじゃない、と欠伸混じりに言われて反応したのは私ではなく紫だった。


 「どしたの?じゃないわよねぇえ?早く起きなさい?何時だと思てるの?」


 「ヒエェェ」


 朝から顔面蒼白なのは富貴の妹のゆかり。目がぱっちりとしていて、愛らしい。


 ただならぬ、家族。この先には波乱が待っている?

さて、そんな富貴家の長い一日が始まる。

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