七、大きな木

 ・・・嘘‼️信じられない‼️?何故?


 葵は宿の部屋でうずくまっていた。


 どんな量の金子だったのか。不本意ながら葵にはあのふてぶてしい指が示した数がわからない。悔しい。


 しかし、改めてなんという人生経歴だろうか。


 0~9歳、桐という名で上方に住んでいた。

 10歳、葵という名で富士山の麓に逃れてきた。

 13歳、葵という名でよく知らない武士の養女になる。



 ・・・武士の養女になる・・・


  「・・・嫌や・・・‼️」


  「養女になんて・・・なりとうない‼️」


 絞り出すような小さな声。此の言葉は上方で使っていた言葉だ。

 父に強く禁じられていたため、こっちのほうに来てからはじめて使った。


 

 父の顔を思い出し、顔をしかめる。父の顔など見たくもない。



 「逃げようか・・・」



 家に帰って荷物を持って母の所へ行こう。




   ○●○



  「・・・どこ?」



 葵は森にいた。富士山が見える。つまり、家に近い。それだけが救いだ。


 辺りを見回していると、一本の大きな苔むした木が、あった。


 宿から乗ってきた馬を近くの木に繋いで、葵は向かう。


 まるで吸い寄せられるかのようだ。足元が雲の上を歩いている感覚がする。



 葵は木に寄りかかり、壮大な自然に身を委ね、目を閉じた。


───────────────────────────────────


 いつもありがとう存じます。椛 風月です。


 本作も8話となりました。


 さて、これからはたくさん上方の言葉、つまりは京都弁が出てきます。

 自分自身にも馴染みがあまりないせいか、拙い京都弁になっております。


 御手数ですが、おかしい、変更が欲しい場合は、応援コメントにてお知らせ願います。改善致します。どうぞよろしくお願い致します。

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