四、犯人

 「襲撃だー‼️」


 娘の叫ぶ声だ。

 

 菖治しょうじは慌てて立ち上がり、懐刀があるか確かめ、上着を脱いだ。


 宿の女将によると、盗賊やらが多いらしい。


 娘の部屋は突き当たりだったはず、と考えながら駆ける。



 ・・・もしかしたら娘に不埒ふらちなことをしようとしてるのではないか?



 葵はまだ13の生娘きむすめだ。それに、可愛い。


 焦りつつ部屋にたどり着くと、



 見知らぬ男が娘を見下ろしていた。何か問答しているようだ。刀を帯びているため、武士のはずだ。




 相手が悪いなと思いつつ、可愛い娘のため、



 「何しとんじゃワレェ‼️」

 


 と叫んだ。



 武士は激昂げきこうするかと思いきや、不思議そうに首を傾げ、


 

 「何を、と言われても困るのだが。娘と話しているだけだが?」




  沈黙が場を襲う。



 駆けつけた仲間も、菖治も。




 最初に沈黙を破ったのは、葵だった。





 「でっ・・・ですから、私の父は、この菖治という名の者です‼️」




 呆然としていた菖治も、娘の声で我に返り、



 「そっ・・・そうでございますよ‼️この子は私の娘です‼️」





 武士は少し思案した後、



 「ふむ、そうか。そもじらは明日大権現様に御目通りする氷屋だな?」



 菖治は分かってもらえた、と安堵して、



 「そうでございます」


 と大きく頷いた。




 「すまなかったな。ではこれで」



 と武士はすたすたとあっという間に出ていく。


 窓を確認すると、馬で駆けて行く姿が見える。




 一同はふーっ、と息を吐き顔を見合わせた。



 誇らしそうな顔、安堵した顔、喜んでいる顔。





 葵は、嬉しそうに皆に



「本当に有り難うございます‼️」


 と、頭を下げた。

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