第二話 あれのみや
いちしの花
こんなに恋いしいのはオレだけか。
* * *
「
見つけた。
あの火事のあと、女官の素性をすぐ調べさせた。
十六歳。
十五歳から女官として、
今は、誰付きとは決まっていない。
一人で歩いていた女官は、鋭い顔つきに、
「オレは
大股で、
「
誉れある地位である。
「あの後は、大事ないか?」
西の方が火事で焼けてから、今日で十一日目だ。
……十日の喪があけるのを待ったのである。
鎌売は頷き、
「……助けていただきまして。」
と、伏し目がちに、膝で礼の姿勢をとった。名家の娘らしく、品のある、綺麗な所作であった。
うんうん、と八十敷は上機嫌で頷く。
もう一歩、鎌売にずいっと近づく。……顔をもっと近くで見たい。
鎌売は、
すうと整った眉、切れ上がった
うんうん、綺麗な
「それでだな。オレの妻になれ。
「はあ?」
鎌売は、ぎろり、と下から
「あたしは
「それは分かってる。だからって、婚姻できないわけじゃないし、いつかは婚姻するだろう? オレの家柄なら、不足はないはずだ。良い話だろ?」
鎌売は、ふんっ、と鼻を鳴らし、忌々しそうに目をそらした。
(ちょっと、あんまりな態度じゃないか?!)
予想より、かなり酷い態度だ。八十敷は不安になり、訊いてみた。
「
調べさせた範囲では、そのような噂はなかったが。
もう既に、意氣瀬さま、もしくは広瀬さまの?
「正面切って言う言葉?
違うわ!」
鎌売が悔しそうに顔を歪めて、大きな声を出した。
八十敷はあわてて、言葉を発した。
「怒るなよ。すまない。オレはおまえに恋したんだ。妻にしたい……。」
「あたしは妻にしてほしいんじゃない!
あたしの夢は、そんなんじゃない!
あんたの妻にはならない!」
鎌売が器用に盆を片手で持つと、
ばっしゃあん。
八十敷の顔に水をぶちまけた。
(ええ───!)
驚きのあまり、声が出ない。
「
並の
(ええ───……。ええ───……、ええ……、何されたの、オレ?)
ぽたぽた、顎から滴り落ちる水滴を感じながら、八十敷は、
↓イメージイラスト。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16817330663699559008
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