第24話 変貌
ある程度落ち着きを取り戻したダバスドは依頼を受ける旨をナルターに知らせた。続いて残りのメンバーにも知らせ、当日の予定を立てる運びとなった。各々はダバスドの心情変化について言及せず、その意志だけを受け取った。彼らもまた、そうするしかないという理論に振り回されていたからだ。
これまでの変異体の資料、及び戦闘データが揃っているため、話し合い自体は楽に進んだ。相手が奇跡を使えること、教会堂内で何人もの死傷者を出していることなど、作戦を立てるには十分だった。とは言うものの、肝心の作戦は相手が非常に機敏に動き回り、奇跡も使ってくることが判明している点からも、凝り固まったものは用意できそうもなかった。四人パーティで行って帰ってこないケースも何度もあるため、今までの作戦も役に立っていなかったことが見て取れたのだ。四人は仕方なく、なるべく集まり、前衛が徹底的に後衛をガードするという行動パターンを用意し、それを主軸の作戦とすることにした。
当日、赴いたのは話し合いから一週間ほど、最近も他の手合いと戦っていたため、腕は鈍っていなかったが、例によってということで周到な準備を重ねたわけだ。教会堂は馬車で一時間程、廃村の道が続く先にあった。ポツリと辺境の場所にある教会堂だったが、規模は大きく、大所帯での巡礼もできそうなほどだった。四人は村の手前で降ろされ、ここに着いたわけだ。
「空気感が異常だ。まず間違いなく苦戦する。覚悟しよう。」
その教会を見て初めに声を出したのはフライマだった。前は少し余裕がありそうな様子だったが、今回は締まった顔でマスケット銃を撫でていた。
「この先がそうだね。待って。何か聞こえてくる。」
教会の門を開けて直ぐにまた大きな門があり、その先が本堂となっていた。コープルは扉に耳を添えて皆に言った。そこからは聞き覚えのある声で何かを囁いていることが確認できた。
「入ろう。正体は分かっている。」
モータが先陣を切り、扉をゆっくりと両側に開いた。中は長椅子が乱れた状態で並んでおり、壊れて割れたものも幾つかあった。前に教卓があり、椅子が並んでいるだけのシンプルな構造だったが、天井は高く、散りばめられたステンドグラスからは色鮮やかな光を反射していた。椅子には人が何人か腰掛け、ぐったりしていた。ふと隅の方に目をやると、討伐者と判別できる死体が、十何人も無造作に転がっていた。それにより、椅子に座らせられている者も既に死んでおり、討伐者や財団の関係者だったことが予想できた。奥ではカレンが教卓の前に膝をつき、祈りを捧げていた。
カレンは四人の侵入に気づき立ち上がった。その行動、その振る舞い、その全てが前と変わらぬ彼女の姿だった。
「あら、ご機嫌よう。みなさん、ご無沙汰しております。巡礼でございますか?」
なんの変哲もない、いつも通りの彼女だ。死体という証拠に目を瞑れば、獰猛さの欠片もない乙女の姿をしていた。アポカルになり、見た目も変ってしまっていると想像していた故、面食らうことになった。
「カレン。カレン。俺だよ。ダバスドだよ。どこがおかしいんだ?いつも通りじゃないか。帰ろう。」
その姿にダバスドは安心した。動かぬ証拠が目の前にありながらも、恋心を取り戻し泣きそうになった。
「どうしましたか?私、何か悪いことでも…」
カレンはダバスドの様子を見て、不安そうに近づこうとした。しかし、轟音が響き、弾丸がカレンの横を掠めた。
「動くな。おい、ダバスド。死体の山が目に入らんのか。もう彼女はいない。その思いで此処に来たのは確かだろう。」
フライマが引き金を弾き、相手を怯ませた。周りのものがないならダバスドはフライマに殴りを入れていただろうが、正しいのは彼だという事実からは逃れられなかった。よくよく見ると死体の山には剣や槍が刺さっており、カレンが討伐者の武器を奪って戦ったことも観察できた。
「良くありませんね。だめですよ。そんな危ないものをここに持っては。」
優しく、子供に言い聞かせるようにカレンはフライマに話しかけたが、早速狂気の片鱗に見せることとなった。カレンは前衛に急接近し、長椅子に置いてあった直剣を手に持ち、切りつけた。その接近は恐ろしく早く、教卓までは数メートルほどあったにも関わらず、瞬きの猶予時間程でその距離を移動した。
距離が開いていたためガードすることに成功し、カレンの攻撃をダバスドが盾で受けることとなった。
「これでわかったろ?もう構うことはないんだ。」
ランスでモータが横から突いたが、カレンはそれを下がって躱し、攻撃を凌いだ。そこにすかさずフライマが銃弾を浴びせ、仕留めようとしたが不自然な方向にそれは曲がり、命中しなかった。
「奇跡か。厄介だ。」
情報通りカレンは強く、奇跡も十二分に発揮していた。一瞬の出来事で脳が追いつかないダバスドは、なぜ戦闘になったかも思い出せないくらいだった。
「カレン!何をしている!頼むからやめてくれ。」
未だ戻ってくるかもしれないという思いが叫ばせた。確かに敵意はあるかもしれないが、声や振る舞いは彼女そのもので、とても何かに変わってしまったという事実には説得力がなかった。こちらの言葉を理解し、会話になる反応をする。これが普通でなくて何だというのだと。
「私はただ、判って欲しいだけなんです。導きは誰にでも訪れますから。」
カレンは純真な目で、ダバスドを捉えていた。そこには欺きも何もなく、心からの声に見えた。カレンの周りでは仄かな明かりが発せられ、それに包まれていた。
「ダバスド!もうあれはカレンじゃないんだ。振る舞いこそ彼女のものだが、敵意は覆い隠すことなく僕らに向けられている。」
コープルはダバスドを掴み、怒鳴った。こんな再現性の高い狂気があってたまるかという気持ちもあったが、戦闘ということを冷静に捉えていたのだ。
「私は、敵意があるわけじゃないんです。でも誰も言葉で言っても理解してくれないんです。」
カレンが会話の間に入り、自らを弁明する。完全にこちらの言葉を理解しているどころか、性格だって前と瓜二つだった。そんな応答が生まれてしまうからこそ、いよいよ殺し合いと言うのは不利になってくる。
「分かってる!だが…なあ、カレン、止まって話さないか?そしたらお互いの意見も通せる。」
コープルに答えたが諦めきれず、無駄な問答を繰り返そうとダバスドは試みた。他三人もアポカルとは思えない彼女を目の前にし、その行動を強く否定することは難しかった。
「いけません。もう救済の時は近いのです。ダバスドさん、あなたもわかってくれるはず。」
振る舞いこそカレンだったが、やはり変貌した狂気と言うのが見え隠れしていた。ダバスドは歯を強く噛みしめ、戦う準備を整えた。
「カレン。もう眠ってくれ…君はもう居ないんだな…」
噛み合わない行動にはどうやったって違和感が纏わりついていた。どれだけ綺麗な仮面を被っていようとも、それが彼女自身ではないということは伝わるものだ。
「ダバスドさん…どうしてそんなに冷たいのですか?」
それでも仮面は、完璧だった。いつも通りの彼女。その客観的事実も同時に存在していた。戦闘はいよいよ激しさを増し、穏やかな声を裏腹に素早く切りかかり、素早く引くことを繰り返した。俊敏性は尋常ではなく戦闘を得意としなかったカレンからは想像もできない程の身のこなしだった。左右には椅子と言う障害物があるにも関わらず、それをモノともしないで駆け回り、攻撃を仕掛けてきていた。
それに対し、何度も盾で弾き、剣や槍を振るったが攻撃は当たることは無く受けられ、躱されていた。隙が出来たところにコープルやフライマが矢や弾丸を撃ちこむこのの、奇跡で止められ手出しができなかった。動いている所に偏差射撃をした時でさえ、常に守られているという状況だった。積まれた死体は、騙されて倒された者だけではなく、最初から聞く耳を持たなかった者までいた。ただ狡猾だということにあらず、死体の山を作った原因はしっかりとあったのだ。
「どうするんだ。いつか死人がでるぞ。」
ダバスドたちは苦戦し、行動パターンを守り後衛には攻撃を届かせなかったが、腕や足を軽く切られ、その度にフライマが手を翳し、それを癒していた。攻撃を加える手段がなければ、倒すことは夢のまた夢だった。こう言っている間にもカレンは動き回り、様々な角度から剣を振るってきていた。
「奇跡の効力は落ちてきている。無限に防壁を生み出せるわけではない。」
フライマが洞察し、相手にも弱点があることを見抜いた。フライマの弾丸も無限ではないことも事実だが、圧倒的に不利と言うわけではなかったのだ。実際、攻撃をいなすことができていたダバスドたちを前に、奇跡が有限であるカレンにとっても打開策が必要だったのだ。
「ああ、不毛です。救済も来ず、これ以上戦う必要などあるのでしょうか。」
急にカレンの動きがピタリとやみ、コープルの矢がバリアに当たって折れた。先程から問いかけはあったが、ダバスドたちは耳にいれないと心がけていた。カレンはダバスドから離れた位置で手から直剣を落とし、その場で膝をついたのだ。明らかに戦意を喪失しているようだったが、流石のダバスドも信じはしなかった。だが、話す隙が出来たため、相手の矛盾を突く。これはカレンの意思と言うよりも、変異体の行動原理を追いたかったからだ。
「お前は、誰も殺さずに英雄になると言っていた。なのに、どうしてこんなに殺して、俺たちにやめてくれなんて言えるんだ?」
ダバスドは止まったカレンにそう言った。カレンは記憶を無くしているわけでもなく、抱えている信念も前と同じように振る舞っていた。
「違うのです。私も戦いたくはありません。本当は、あの和やかな日々に戻りたいと心の底から願っているのです。それでも、導かなくてはいけないのです。」
もう無駄だった。彼女という人間性は保たれているはずなのに崩壊していた。変異体とは常人には理解できない存在だった。人と言う存在を保ちながらも人への敵意がいかようにも向けられるのだ。
「ダバスド、もうよせ。前世の記憶があるのはタチが悪いが、聞いたところでロクな回答はしない。あれだって俺らを油断させる罠だ。」
モータはダバスドを軽く蹴り、やめるように言った。ダバスドも黙って頷き、その通りだという意思を返した。モータの言った通り、数秒後、カレンから強い光が発せられ、教会堂内一帯を包み、ダバスドたちもそれに飲まれることとなった。それはプロダクターの時に使っていた奇跡で、強化されたそれは、盾で防いだもののダバスドたちは昏倒し、意識が飛びかけた。フラフラとする意識の中で、再びカレンが直剣を持ってゆっくりと近づいてきていた。
「ダバスドさん。さあ、こっちですよ。」
優しくカレンがダバスドに話しかけた。その表情は、出会った頃そのものの慈悲に溢れたものだった。
「カレン。わかったんだ。俺は…」
ダバスドは千鳥足で遠のく意識を抑え、カレンに近づいた。そして倒れこむように体を前に倒し、剣を押しがった。剣はカレンの剣で弾かれ届かなかった。
「俺は、君ばかりが生きがいだと。そう思ってた。それは間違いじゃない。だけど、君がくれたこの価値観こそ、俺の生きがいだと。そう思えるようになった。」
ダバスドは剣を握りしめたままカレンに話しかけた。カレンも動きを止め、ダバスドの目を見ていた。
「私が生きがい?嬉しいです、本当に。誰かのために生きるというのが私の生きがいですから。」
カレンは涙を流し、剣を握りしめていた。それはアポカルとしての彼女ではなく、彼女自身の言葉だった。
「そうだ。だから君がいなくなるのは本当に悲しい。だからこそ、それを背負って、生きる意味を噛みしめなければならないと気づいたんだ!」
ダバスドも涙を流し、もう一度切りかかり刃を交える。その会話聞いていたわけではないが、戦う意思を見せているダバスドにフライマが加勢し、弾丸を射出した。四人の中で、攻撃を食らったにも関わらず昏倒から復帰したのは一番早かった。
弾丸は逸れた後に急角度で曲がり、カレンの横から直撃する軌道を描き、向かっていった。それはカレンの防壁をやっと貫通し、そのまま彼女の直剣を折って飛ばすこととなった。先程の奇跡で、力がより弱まり攻撃の隙が生まれたのだった。その攻撃を受けたカレンは大きく仰け反り、長椅子の淵に体をぶつけ、座り込むこととなった。
「カレン。さようなら。」
防壁が完全に取り払われたカレンにダバスドは近づき、剣を振り上げた。武器を失った彼女は必死に祈り、抵抗しようとしていた。しかしそれも届かず、奇跡の一つも起こすことは出来なかった。まるで彼女が死んでしまったあの時のように、死ぬまで祈っていたのだ。
ダバスドは崩れ落ちるようにカレン胸部に剣を突きさした。そのまま座り込み、深々と剣を貫かせた。小さな悲鳴と共にカレンは息をしなくなり、椅子の淵が支えとなり、座ったまま目を閉じた。
コープルたちが完全に意識を取り戻すと、既にカレンの胸を剣が貫通し、それから血が伝って滴っており、戦闘も終わっていた。抵抗できぬまま一人ずつ殺されていくという、昏倒前に予感した最悪の結果を回避できたわけだ。
「最後の最後まで、カレンのままじゃないか…カレン。」
ダバスドはカレンを思い切り抱きしめ、強い吐き気に襲われていた。どうせなら完全に変貌し、全くの別物になっていた方がこんな思いをせずには済んだのだ。あの頃の、あの時の優しさに溢れたカレンを殺したようで、心を深く削り取られたのだ。
「ダバスド。君はやっぱり…」
プロダクターの時と言い、会議の時と言い、様子のおかしなダバスドに何かあるとは察していたコープルだったが、戦闘中のダバスドと今まさにひしと抱いているダバスドを見て、彼のカレンへの思いを確信したのだ。コープルは、お互いに死別の可能性があるが、それでも共に行こうというあの日の契りを思い出し、失望のような何かを感じてしまっていた。このように誰かの生に固執し、感情を崩れる程に揺さぶられているような悲しみ方はして欲しくはなかったのだ。淡白な別れとまではいかないが、冷静に自分の死と向き合って欲しいという思いがあった。愛でそうなっているのは一目瞭然だ。しかし、トレント討伐の時、相手に対してそのような心持で居続けることが、どんな結末を迎えるかをダバスドは知っているはずだった。だから途方もなく重い愛情や友情を持たず、その死を受け入れられるように相棒でいることを約束したダバスドには、そうあって欲しくはないという感情があった。現に、ダバスドは心を強く締め付けられ、壊れそうになっている。自分の最期をそんな風に見送られるのも嫌だった。自分もまたそうなることを恐れ、嫌っていた。それはただの我儘だけでなく、彼なりの優しさでもあった。だが、今は怒りに似たものが確かに沸いていたのだ。
「いくら何でも落ち込み過ぎだ…」
ぼそりとコープルは呟いた。悲しみに暮れるダバスドの横に座り、肩を抱いて泣いてやるようなことはせずに、遠くから追い打ちを掛けるかのように人として疑わしい発言をした。
「俺は、カレンを愛していたんだ!こんなにも、彼女らしいのにどうして…」
それはしっかりとダバスドの耳に届いた。コープルの内情は見えず、ダバスドは自分がこうまで落ち込む理由を叫んだ。
「わかってるよ。でも、それが良い結末を生まないというのは知っていただろう?」
悲しそうな目でコープルはダバスドの背中を見つめる。
「判っていたさ。それでも愛してしまうのが人間だ。お前は機械にでもなれと?人の心がないのか!」
今の行動を否定されれば誰だってそう思う。心でも無ければ、無感情になることの方がおかしいのだ。二人が言い合いになっているところ、珍しくフライマが抑えようと努めたが、モータがそれを止め、黙って首を振った。
「そうじゃない。そんな風に、もうどうしようもないくらい壊れてしまうなら、討伐者としての関係はせめて絶つべきだろうが。」
コープルの意見は一理あり、そうなることを避けるため、財団側がメンバーの固定を推奨していない理由でもあったからだ。ダバスドは討伐者としてカレンを愛し、関係を持ちたいと思った。それを介することなく出会えたなら、このような惨劇に見舞われることはなかった。死ぬほど愛していたのなら、戦闘を好まないカレンを何とか説得して討伐者以外の道を選ばせることもできたはずだ。
「違う。俺は前に進む。その決心は揺るがない!壊れたりしない。コープル、お前との死別も常日頃から考えている。お前が死んでも俺はこのように悲しむ。しかし、何も出来なくなるようには俺自身がさせない!」
カレンの髪を梳き、ダバスドは答えた。今の奥底からの絶望は揺るぎないものだが、カレンがくれたもの。それを抱えて前に進もうという意思もまた、動かぬものだった。悲しみ明け暮れ、カレンのことしか考えられなくなったようにコープルには映っていたが、ダバスドは今の惨劇を全身で浴び、その苦痛と共に自らを昇華しようとしていた。理不尽だ、あんまりだ。その思いはあったが、感情の袋小路に閉じ込められているわけではなかった。
「そう…か。てっきり僕は…僕の方が未熟だった。僕はそんな風に悲しむことが嫌だから、そんな悲しみに出会ってしまったら、もう立ち直れないから、そうあるべきでないと考えた。でも今の君の行動が、全て悲しみや絶望に由来したものでないと知ってそうじゃないと思えた。」
怒りはすっと引き、ダバスドの行動がコープルの背中を押すこととなった。感情をぶつける行為だったからこそコープルに不安を与えたが、逆にそれがあったことで伝わるものは伝わったのだ。
「ごめんよ。ダバスド。心無いことを言った。彼女を埋葬してあげよう。」
愚かさが染み、忸怩たる思いが彼を責め立て、椅子にもたれかかった。殺し合いに発展してもおかしくない冒涜の言葉に、これまでにない罪悪感もこみあげて来ていた。
「お前が望んだ形ではないのはよく知ってる。実際、俺はカレンに熱い思いを持ちすぎている。そうだな。カレン、もう大丈夫。ゆっくり休んでくれ。いつかまた会えるからな…」
ダバスドの中でも怒りが収まり、動かないカレンに優しく語り掛け、頬を撫でて抱きかかえた。カレンがいつからおかしくなってしまったのか、いつから変異体になったのか、もうそんなことはどうでも良かった。彼女は沢山の希望を運び、幸せをくれた。その事実だけが重要で、人を殺したなんて罪は背負うべきではなかった。彼女は絶対にそのようなことを望む人間ではなかったし、安らかな心に沿った人生であって欲しいからだ。
教会の前で火をおこし、彼女を焼いた。フライマが自分のコートで包んで葬儀を行ったため、惨い焼き方にはならずに済んだ。夕暮れの中を舞う灰を見て、誰もが涙を流していた。死傷者は出なかったが心の傷は皆が負った。変異体が合理的に話し、応答も行うという事前情報のイメージとは全く違い、何度も言う様に、行動以外は何も変わらぬ姿は理不尽さを際立たせる要因だった。変異体というものに対する知識は少ないものの、恐ろしく、自分たちもああなってしまう可能性を秘めていると思うと鳥肌がたった。
皆は火が落ち着くまでそこに居て、カレンが天国に行けるのを祈っていた。結局、そこを出たのは日が沈み切ったあとで、どうにも収まらない胸のわだかまりを抑えたまま、その場を立ち去ることとなった。
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