第4話

「弟子にしてください!!」

 何故こうなった?

 私は生まれたて3日、リラ・メイティス。幼馴染も同級生もいないPC、使い主の作業に夢中になっていたところ、背後から忍び寄る神に気づかなかった。

 私はその神に特典を与えられ、目が覚めたら……異世界へ転生してしまっていた!?

 某探偵でも迷宮入り確定の事件だ……

 っと、現実逃避はこれぐらいにして,、弟子?弟子って師弟関係の弟子?

 ……不審者か。

 えーと弟子弟子詐欺の対処法は……うーん、なかなか思いつかないなー。

 ちょっと待て、元々の目的を忘れているじゃないか。

 見た目からしてTHE・冒険者ってかんじだし、街を知っているかもしれない。

 そうと決まれば、街について聞いてみよう。でもその前に返事を返さないといけないかな?

 ……あれ?なんか口が動かない。声を出す練習はしていたけど、いざ喋るとなると口が動かない。どうしよう!?どうしよう!?でもなんか喋らないと、えーっと、えっと、

「うん」

 あ”ぁ”ー、慌てて返したから、OKだしたみたいになっちゃったーー!!

「やったーー!!」

 ま、まあ今じゃなくてもいいかな。街を聞く時に、変にギスギスした感じだと嫌だしね。

「ま、マチニイキタイ」

 くっ、これでは私はコミュ障ではないか!!そんなことない!!コミュ力もりもりの女性になるんや!!

「街ですね!!じゃあ案内しますよ!!」

 キター!

 三日目にしてようやく報われた!

 はっはっはー!今は気分がいいので、弟子にしてやってもいいかも!?……いや、面倒くさい。うん、とてもめんどくさい。


ぐぅ〜


 お腹がなってしまった。意外と恥ずかしい。おい、人間!こっちをみるな!

「お腹も空いてるんですね。昼飯にいいところがあるんですよ。ついてきてください!」

 おぉ!!飯の在り処まで辿り着いてしまった。運がいい!!

 私はコクリと頷いた。

 こんなの拒否する人なんていないよなぁ!!

 感謝!!





 ついていって五十分が経過した。

「ついったっす!ここがタリンという街です!!」

 高い城壁がそびえたっている。門には兵士らしき人が立っていた。トーヤはその兵士に話しかける。

 トーヤというのはさっきの不審者である。うんわかるよ。名前からして日本人な気もするよ。でも不審者には違いない。日本の街中でいきなり、弟子にしてください!なんて言われたことある?私はまだ信じていないのだよ。

 そんなこと思っている内にトーヤと兵士の話は終わったようだ。どうやら、最初に入る人はお金を払うらしいが、もちろん今は一文なしなので、内緒で通してくれってお願いしに行ってくれました。あの兵士とは酒を飲みかわす程に仲がいいみたい。

 私は駆け足でトーヤのところについていく。兵士に『美しい』と言われたが、気にするとまたコミュ力が低下しかねないので、サササと通り過ぎる。

 でも、そうか、美しいか……フ、フフ

「嬉しそうですが、何かいいことでもありました?」

 なに!?顔に出ていたか!?いや顔には出さないようにしていたんだが……エスパーか?エスパーなのか!?不審者でエスパーとはなかなかの強敵だ……しかもちょっと恥ずかしい。

「う、うん」

「そうですか!よかったですね!あ、昼飯なんでもよかったっすか?」

 本当は寿司というものを食ってみたかったが、多分この世界観ではあるかどうかわからないしなー。

「なんでもいい」

「じゃあ、ついたっすよ!」

 トーヤは左を指さす。私はそれに導かれ左を向く。

 横幅四、五mぐらいの建物で、看板にはボア食堂と書かれている。窓からみても、個人業のこじんまりとした食堂のようだった。

「ここのボアの生姜焼きが格段に美味しくて」

 そんなこと聞いていたら涎が垂れてきた。早く入ろうよ。

 トーヤはそれに気づき、『すいません』といい、中へ入っていく。私もそれに続いた。

「いらっしゃい!」

 奥から女性の声が聞こえる。

「席座らせてもらうよー!」

 トーヤが奥に届くように声を張って、席に座った。

 私も反対側の席に座る。

 少し時間が経つと声の発生元であろう女性が駆け足で私達の席の前に立つ。

「トーヤくんじゃない。どうしたの?別嬪さん連れて。もしかして彼女?」

「違うよ!この人は僕の師匠なんですよ!!」

 違うよ?師匠じゃないよ?っと言ってやりたいが、知らない人がいるからか、口が動かない……

 何も言わないのは申し訳ないが、喋れないので、軽く礼をする。

「そういうことにしてあげるわ。で、注文は?」

「ボアの生姜焼きを二つください!」

 女性は『ちょっと待ってね』と言い、奥に帰っていく。多分、奥に厨房があるのだろう。いやー、楽しみだ。

 数分したら、皿を二枚もって机に向かってくる。

「はい、おまちどうさん!!」

 美味しそうな匂いが部屋の中に広がる。

 涎だしたらだめ。涎だしたらだめ……

「いただきます」

 っ!?美味しすぎる!美味しいっていう感覚がこんなにも幸福なんて……

「涙流すほど美味しかったの?有り難いねえ」

 !?

 頬に手をあてると水滴が垂れていた。私は慌てて拭く。

「うん!ここの店はやっぱり上手い。日本を思い出すな……」

 !!

 やはり転生者だったのか!?

「あなたも転生者?」

 てか、そのまま聞いちゃったけど、怪しまれるだろうか?

「! そうですけど、もしかして師匠も?」

「う、うん」

「すげー!!初めて同じ境遇の人にあった!!」

「お、同じ境遇……」

 人から転生と、PCから転生は同じ境遇なのだろうか……

「前世の名前は笹木野冬弥っす!」

 これ、私も名乗らないといけないやつですよね?そうですよね。

「……C……前世はPC……」

「え……」

 トーヤがポカーンという効果音がなりそうな顔をしている。

 ほら絶対こうなると思ったよ。前世がPCってなんですかって思うだろうけど、そんな顔しなくてもいいじゃん。

「すげー……」

「え?」

「そんなの初耳ですよ!!物が転生とかすご!!てことは僕たちが使っている物は生きてるってことですか!?」

 え、ちょっとまって!そんなグイグイ来られたら、テンパるって!!えーっと、なにか返さないと。

「私も詳しくはわからないけど、そんなことカ、カミが言ってたような」

「創造神とかいう人?」

「知恵の神らしい」

 創造神?新しい神だな。

 今確認できてる神の数って3人かな?知恵の神と創造神、あと知恵の神の話に出てきた輪廻の神かな。

「なるほど……」

 そういえば、恰好的にも冒険者ギルドについて知っているかもしれない。そうとなれば、この流れで聞いてみよう。

「あの……冒険者ギルドってどこ?」

「師匠は、冒険者ギルドをお探しですか?じゃあ僕もついでに文句言いに行くので一緒に行きましょう!!」

 キター!!もう、トーヤくんには感謝感激だよー。なぜ文句言いに行くのかわからないけど、さすが我が弟子!

 子弟関係か……なんかそういうのも楽しいかも?

 私たちは昼飯を食べた後冒険者ギルドに向かうことにした。

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