第133話 冒険者ギルドの査定

「ええ~、もうこのダンジョンを出るの?サラは、もう少しこのダンジョンでポーション集めがしたいですわ。」


「でも、粘土は手に入ったし、ポーションづくりのための素材も手に入っんじゃない。さっき、アナライズしたら、素材は揃っているんだよ。もう、このダンジョンで素材集めする必要がないんだ。」


「まだ、1本しか手に入っていないのでよわよ。それだけじゃ、テラたちの借金を返せませんわ。」


「だから、もう、百本分以上の素材が揃っているんだって。」


「ひゃ、百本…!?」


「そう。百本じゃないよ。百本以上だよ。」


「そんなにたくさんあるの?」


「うん。だから、もう大丈夫なんだよ。」


「じゃあ、もう王都に戻るの?」


「そうだね。サラと僕は、王都に戻ろうかな。まだ、お昼を過ぎたばかりだからさ。調剤ギルドか冒険者ギルドでポーションを査定してもらったらすぐにお金になると思うんだよね。」


「おいおい、じゃあ、俺たちはどうするんだ。たったこれだけじゃ、何か消化不良だ。」


「もう少し下まで行ってみても良いかもしれないけど、危なくないかな。」


「凜の、スクロールがあればなんとかなるかもしれないぞ。とくに、風刃のスクロールは、絶対役に立つぞ。」


「スクロールを渡しておくのはかまわないけど、サラが居なくても大丈夫?」


「どうして、サラは一緒に行けないのですか?サラは、ダンジョンでもっと素材集めと魔術の練習をしたいですわ。」


「サラ、ダンジョンでは、魔術の練習をしているんじゃないからね。大丈夫、俺とフロルとリンジーにマルコが加わったんだ。それに凜のスクロールがあれば、もう1~2階層下に降りても余裕だと思う。」


「そうだぞ。リニの言う通りだぞ。だから、凛、風刃のスクロールをたくさん置いて行って欲しいぞ。」


「了解だよ。ちょっと待ってね。今持っている素材で、錬金できるだけのスクロールを作るからさ。…。」


 15分程、待ってもらった。その間に上位ゴブリンとブラッドホースがちょっかいを出してきたけど、リニたちが簡単に討伐した。昨日までこの階層で苦労していたって言っていたけど、どうしてだろう。


「できたよ。一人、30本ずつ渡しておくね。」


 それぞれに、風刃のスクールを渡してサラの方を向くとサラはほっぺを膨らませていた。


「本当にサラは凜と一緒に王都に戻らないといけないのですか…。」


「そうだよ。このポーションを冒険者ギルドか調剤ギルドに販売して、テラたちを引き取りに行かないといけないでしょう。」


「それが、終わったら、またこのダンジョンに来たいですわ。」


「うーん…。それは、どうかな。もっと面白いダンジョンがあるかもしれないし、分かっているメンバーを全員助けたら町に戻らないといけないような気がするんだよね。」


「そうでしたわ。シスターたちにベンテお兄様たちを合わせてあげないといけないんでしたわ。」


「それもそうだろうけど、それ以上に神父様から話を聞かないといけない気がする。信用できる大人も一緒にさ。例えば、冒険者ギルドのギルマスなんかも一緒に。」


「そうなんですかですわ。でも、テラたちを連れ出したら、一度町に戻っても良いかもしれないですわ。マウンテンバイクで戻ればすぐなのですわ。」


「そうだね。リニも戻ってきたから、マウンテンバイクのタイヤを魔石を融合したものに付け替えてもらえるからね。そうだ、リニーっ!」


「うん?何だ?」


「魔石と融合したゴムを渡しておくらさ、リニたちのマウンテンバイクのタイヤもそれに付け替えておいてくれない?そうしたら、少々身体強化してマウンテンバイクを走らせてもタイヤがダメになることがなくなるみたいだからさ。」


「へえ~。すごいな。分かった。マルコのマウンテンバイクのタイヤは、付け替えてるのか?」


「まだだよ。今日は、コテージに戻ったらいいよ。お風呂も付けておいたからさ。」


「そうか。じゃあ、日が暮れる前にコテージに戻れるようにこのダンジョンの探索は早めに切り上げるかな。わかった。マウンテンパイクのタイヤも付け替えておくな。じゃあ、一攫千金作戦、宜しく頼む。」


「うん。頑張るよ。行ってきます。」


 僕とサラは、マウンテンバイクでダンジョンを駆けあがって行った。魔物を置いてきぼりにして魔物と戦うことなくダンジョンの外にできることができた。マウンテンバイクのタイヤはかなりボロボロになっていたから、ダンジョンの外に出て修理の為の錬金を行った。2台の修理錬金は5分程で終わって、王都の夕日の門に向かってマウンテンバイクを走らせた。


 ダンジョンから30分程で、王都に到着した。もちろん、マウンテンバイクは収納して歩いて王都に入った。まず、ロジャーが止まっている宿に向かった。もうすぐ正午になる時間だったけど、ロジャーは、宿に待っていてくれた。


「ロジャー、ダンジョンで高級ポーションを手に入れたよ。」


「うむ、して、錬金できそうか?」


「うん。王都に戻ってくるまでに錬金が終わって、今、100本くらい持ってるよ。」


「100本は、ちと目立ちすぎるな。しかし、全員を救い出すなら金貨200枚は、手元に持っていたいのう。23本を調剤ギルドで販売しようかのう。その前に、冒険者ギルドに行って査定をしてもらうのだ。ダンジョン産と錬金して作った物に差があれば早めに確認しておいた方が良い。それに、調剤ギルドなら効き目で査定してもらえると思うが、冒険者ギルドで違いを見分けられるかも確認しておいた方が安心だからな。」


「今日、ダンジョンで手に入れたポーションは、分かっておるな。」


「うん。」


「儂は、一緒に行くことはできぬからな。」


「サラがついております。ご心配なくですわ。」


「じゃあ、今から行くのは冒険者ギルドだね。」


「はい。行きますわよ。」



 僕とサラは冒険者ギルドに着くといつもの受付係の列に並んだ。


「いらっしゃい。早速ダンジョンに行かれたのですか?」


「はい。それで、このポーションを査定して頂きたいのですが…。」


 僕は、受付台に2本のポーション出した。


「こ、これは…、高級ポーションでしょうか?」


「こちらは、教えて頂いたダンジョンの3階層でドロップした物です。そして、こちらは…、内緒ですが、今回の探索で手に入れた物です。」


「同じように見えますが、手に入れた場所が違うのですか?」


「ですから、まだ、内緒です。査定をお願いします。」


「分かりました。査定には1時間以上時間がかかるかもしれませんが、ギルドでお待ちいただけますか?」


「待ちますわ。凛、食堂で何かいただきましょう。そうですわ。ついでに、魔物の皮やボア肉を買い取っていただきましょうか。それで、何か美味しい物がいただけるはずですわ。」


「そうだね。じゃあ、ええっと、ボア肉が、20個150kgくらいあると思います。ボアの皮が10枚でしょう。角ウサギの毛皮が、18枚。ブラッドホースの皮が2枚です。それから、同じくブラッドホース魔石が1個あります。これを引き取ってもらえますか?」


「これを、今日一日で手に入れたのですか?」


「いいえ、数日かかりました。頑張ったでしょう。」


「はい。頑張りましたね。中級冒険者以上の量ですよ。では、査定させていただきます。こちらの方は、10分もかかりませんから、ここでお待ちください。」


 そう言うと、お姉さんは、台の上の素材をカートに乗せ換えて奥の方に入って行った。暫く、待っているとお姉さんがお金が入った袋を手にして戻ってきた。


「すべて引き取りさせていただきます。素材の代金は全部で金貨1枚と銀貨3枚になりますが、内訳をお聞きになりたいですか?素材の状態が良かったのと量が多かったので少し高めに引き取らせてもらっていますよ。」


「内訳は、何かに書いていただけると嬉しいのですけど…。」


「冒険者カードに記録されていますよ。記録の確認の仕方は御存じないのですか?」


「そうなんですか?ええっと、どうやって確認したら良いんだろう。教えて頂けますか?」


「はい。宜しいですよ。」


 冒険者カードの情報の見方やギルドポイントの確認の仕方なんかを聞いた後、食堂で飲み物を飲みながらポーションの査定が終わるのを待っていた。


「凜様、サラ様、査定が終わりました。受付までおいで下さい。」


 受付のお姉さんの声が聞こえたので、受付に行って査定結果を聞いた。結論から言うと、僕が錬金した物とダンジョンでドロップした物は、同じものではないということだが、性能と成分はほぼ同等だということだった。


「どちらかと言うとドロップ品ではない方が、高性能らしいです。」


「それで、冒険者ギルドではおいくらで引き取っていただけるのでしょうか?」


「はい。共に同等の性能ということで、1本金貨12枚で買い取らせていただきます。」


「分かりました。では、買取お願いします。あっ、冒険者ギルドと調剤ギルドでは、どちらが高く買い取っていただけますか?」


「それは、分かりません。でも、普通は冒険者ギルドから調剤ギルドに卸しますからね。もしかしたら、調剤ギルドの方が高く買い取ってもらえるかもしれませんが、調剤ギルドに加入していないと買い取ってもらえませんよ。」


「大丈夫です。調剤ギルドには既に加入していますから。」


僕は、お姉さんに調剤ギルドのギルドカードを見せた。

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