第122話 王都の冒険者ギルド

 リニを連れて、一度、冒険者ギルドに向かった。シルバーダウンスターの登録メンバーを確認するためだ。僕とフロル、サラはそのままのはずだけど、テラとリニがどうなっているのかは確認していない。解散届はもちろん、二人の脱退の手続きもしていないからそのままのはずなんだけど…。


今日こんにちは。シルバーダウンスターだが、現在の登録確認をお願いしたい。受理可能な依頼のランクは何までになっている?」


「シルバーダウンスターの受理可能な依頼のランクですね。ギルドカードがあればすぐに確認できますが、ございますか?」


「これが、俺たちのギルドカードだ。」


「少々お待ちください。」


 受付のお姉さんは、ギルドカードを持って奥に入っていくと、直ぐに戻ってきた。


「確認が終わりました。Cランクのポイントは溜まっていらっしゃるようですが、昇格試験をお受けになりますか?」


「王都では、受けるつもりはない。では、Cランクの依頼まで受けることができるということだな。」


「さようでございます。」


「では、俺たちのランクで入ることができて、ポーションがドロップするようなダンジョンは王都から歩いて行くことができる場所にあるか?」


「ポーションがドロップするダンジョンですか?そうですね。一番近いダンジョンでしたらEランクの緑の洞窟カヴェルナ・ヴェルデダンジョンでしょうか。」


「そのダンジョンでは、どの程度の等級のポーションがドロップするんだ?」


 リニが話を進めてくれるから、サクサク進んでいく。


「過去、ドロップした中で最高等級は、高級です。ギルドでの買い取り額は、1本、金貨2枚でした。販売価格は、分かりません。時価ですから金貨4枚から10枚の間と思っていただければ間違いないと思います。」


「そのポーションは、何階層でドロップしたのですか?」


「そんなに深い階層ではなかったと思いますよ。調べてきてもよろしいのですが、ここからは、情報料が必要になります。大丈夫でしょうか?」


「大丈夫です。情報量はいくらになりますか?」


「銅貨3枚になります。」


「よろしくお願いします。」


 僕が、そう答えると、リニは、お姉さんに見えないようにして、ニヤリとして僕の方を見た。そして、お姉さんが、資料の確認に行くと小さな声で話しかけてきた。


「ドロップする階層は、3階層だと思うぞ。」


「そんなに単純かなあ。」


「多分な。」


「サラもそう思いましたわ。」


 横からサラが話に入ってきた。


「お待たせしました。では、先に情報量を頂きますね。」


「はい。銅貨3枚です。確認してください。」


「確かに。では、先ほどのお尋ねの件ですが、ドロップした階層は3階層です。今まで、20回ほどドロップしていますが、全て同階層です。今年になって、4回ほどドロップが報告されています。ドロップする魔物は様々ですね。これまでが銅貨3枚分の情報になります。」


「有難うございます。そのダンジョンまでの地図やダンジョン内の地図は販売していますか?」


「ダンジョンまでの地図は、王都近辺のダンジョンマップを購入して頂けば、確認できるようになっています。ダンジョン内のマップはありますが、3階層までならそう複雑ではないですよ。ほぼ一本道になっていますから、迷うようなことはないと思いますが…。」


「でも、その地図に書き加えるような情報が手に入ったらどうしたらよいですか。」


「そうですね。1階層なら銅貨1枚、2階層なら銅貨2枚、3階層なら銅貨3枚というような情報料で買取させてもらいます。ただし、ギルドが有益だと判断した情報のみですが、そう言う規約になっております。」


「それなら、地図をください。ダンジョン探索もやってみたかったんです。」


「おいおい、凛、やってみたかったんですなんて、遊びに行くんじゃないんだぞ。」


「サラもダンジョンに行くのは、楽しみですわ。絶対、高級ポーションを手に入れます。20本以上は、手に入れて見せますわよ。」


「わかった。王都近辺の地図と緑の洞窟カヴェルナ・ヴェルデダンジョンの内部地図を購入しよう。」


 リニもどうにか賛成してくれて、二つの地図を購入した。そうだ。宿を探さないといけない。ロジャーに、もしも、誰かを連れてくるようなことになれば、宿に戻ってこないようにと言われている。


「リニ、宿を探さないといけないんだけど、どこにしようか?」


「そうだな…。今日は、ギルドに前泊まっていた宿の側の宿を紹介してもらうか?凜たちは、宿の住所は分かるだろう。」


「それなら、サラがギルドのお姉さんに聞いてきますわ。もう暫くは、サラは一人で泊らないといけないようですから、サラが、安心して泊まれるような宿が良いですわ。」


「そうだね。じゃあ、サラが決めて良いよ。安い宿を探すよりも、少々高くても安全な宿を紹介してもらえば良い。明日の昼過ぎには、ダンジョンに向かうことになると思うからね。」


「分かりましたわ。一泊のみの泊りだと思えば、少し贅沢をしてもよろしいですわね。」


「じゃあ、サラに任せた。宿が取れたら、次は、シモンの雇い先に言ってみるか?」


「リニも一緒に行くの?」


「そうだな…。それはまずいか?」


「どうだろう。やっぱりまずいかもしれないな。ロジャーが契約している商会が怪しむかもしれない。一度、ロジャーに聞いてみる。」


 僕とリニが話していると、サラが戻ってきた。


「大浴場を持っている宿を紹介して頂きましたわ。今から行きますわよ。」


 サラを先頭に宿屋に向かった。宿までかなりは、かなり用心して歩いた。敵意のある気配がないか、ずっとサーチで探りながら歩いて宿まで移動した。とっても疲れたけど、サーチにかかる気配はなかった。宿屋につくと、サラが一部屋、僕とリニで一部屋を取って宿泊の手続きを行った。


 少しの間リニと話しながら休憩しているとサラがやってきた。


「ロジャーの所には、サラが行きましょうか?凜は、方向音痴だから、サラが行った方が安全だと思いますわ。」


「僕、方向音痴なわけじゃないよ。ただ、ボーススタッフの地理を知らなかっただけだからね。それに、サラが行くよりも僕の方が良いと思うよ。いざとなったら、錬金術の素材を分けてもらいに来たと言えば何とかなるからさ。」


「いざとなったらって、誰に説明するつもりなのですわ。」


「誰にも言わない予定だけど、ロジャーに会わないといけない理由をヴィルケス商会の誰かに説明しないといけなくなった時だよ。」


「まあ、良いですわ。凜に行ってもらいますわ。それでしたら、宿で待っていますから、急ぐのですわ。」


 サラに譲ってもらってロジャーに会いに行った。リニが戻ったことには少しびっくりしていたけど、リニは、一緒にシモンたちの所にはいかない方が良いだろうと言う話だった。テラとリニは別のパーティーだということはヴィルケス商会には話していないそうだ。だから、シモンたちの働き先にもリニの情報が行っている可能性があるということだった。


「リニと一緒にダンジョンに潜るのは、良いのだが、王都の中を一緒にウロウロするのはあまり感心せぬな。それよりも、明日は、マルヨレインの所に行かねばならぬことを忘れてはおらぬな。」


「ちゃんと覚えているよ。それに、対価の錬金術式も準備は終っているし、手土産の錬金もできているよ。」


「うむ。では、明日は、少し早めにマルヨレインの店に行くようにするのだぞ。そうだな。朝、4の鐘が鳴ったらすぐ宿を出るようにするのだ。明日は、ヴィルマとアーベの居場所を聞くことになっておるからな。居場所が分かれば、直ぐに救出の手立てを考えるからな。その準備も頼むぞ。」


「わかった。それなら、明日のダンジョンは、フロルとリンジーに戻って来てもらって、リニと3人で潜ってもらった方が良いかな?」


「そうだな。リニとリンジーに王都の側に戻ってこらせるのは良いかもしれぬな。中継地点は、クーンとマルコが居るからな。エミーリアとベンテの二人ともそろそろなじんできたころであろう。否、クーンとマルコにリニと一緒にダンジョンに潜らせた方が良いであろうな。3階層くらいなら、土属性のだけだが十分であろ。」


「ええっ。僕もダンジョンに行きたいな…。」


「お主とサラには、もう少し救出作戦で動いてもらわねばなるまい。マルヨレインの情報次第だがな。」


「うーん。…、分かった。明日、朝4の鐘が聞こえたら店に行くんだよね。僕とサラ二人で行くの?」


「その通りだ。遅れるでないぞ。」

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