第112話 野営の料理レシピ

 朝起きて直ぐにアイテムボックスを確認すると、お好みソースのレシピが入っていた。マヨネーズもあったけど、こちらの世界で生卵を使わないといけないマヨネーズを作るにはかなり大きな出費が必要だろうということが書いてあった。でも、王都にファイヤーバードの玉子があればぜひ作りたい。


「リンジーとフロルは、この後すぐ鉱業ギルドに行くんだろう?」


「おう。朝ご飯を急いで食べないといけないぞ。」

「だよな。急いで食堂に行くぞ。」


 二人とも少し焦っている。そんなにあせる位ならもう少し早く起きればいいのに…。でも、フロルとリンジーが買い出しに行ってもらえないなら、僕とサラで買い出しに行って、手が足りないから、ロジャーにも買い出しを頼まないといけないかな。サラ一人で大丈夫かな…。いや、流石に無理か。やっぱり二人で行こう。サラ一人で王都の市場をウロウロさせていたら誘拐されてしまうかもしれない。


 食堂に行くとサラとロジャーは朝ご飯を食べ終わっていた。


「サラ、マヨネーズとソースや新しい甘味のレシピが手に入ったら、市場に買い出しに一緒に行ってくれないか。」


「儂は良いのか?お主らだけでは、購入が難しい食材があれば、儂が仕入れてくるぞ。」


「それなら、ファイヤーバードの玉子を手に入れて来てくれない。生卵が必要なんだけど、生で食べられる玉子ってファイヤーバードの玉子しかないみたいなんだって。ロジャーは、ファイヤーバード以外に生で食べられる玉子知ってる?」


「生で食べられる玉子を知らぬな。ファイヤーバードの玉子が生で食べられることを今日初めて知った。」


「それで、かなりの高級食材らしいから、僕たちじゃあ売ってもらえないかもしれないからさ。ロジャーが、買って来てくれないかな。それから、小豆も見つけてきてくれたら嬉しい。イチゴも。」


「小豆とイチゴだと…。この季節だとイチゴはかなり希少で高値だと思うが…、王都ならあるかもしれぬな。分かった。全て手に入れて見せる。こう見えても鼻は利くからな。」


 ロジャーが、引き受けてくれて良かった。ロジャーなら全部手に入れてくれると思う。本人がそう言っているし安心していて良いだろう。サラと僕で野菜や醤油の代わりの魚醬なんかを探してみる。醤油もソースの材料になりそうだからって一応錬金術式は送ってくれているけど、醗酵で作られる食材だから、再現できるかどうかが微妙だ。


 大急ぎで、朝食を済ませたリンジーとフロルは、鉱業ギルドに向かい、僕とサラは、市場に向かった。ロジャーとは、別行動だ。食材が揃うのが楽しみだ。


 市場に行ってキャベツに似た葉野菜、こっちの名前は良く分からない。それにオークの薄切り肉。オークのハム。燻製肉やチーズなんかも手に入れた。王都の外に出てコテージを組み立てて、お好み焼きを焼かないといけない。楽しみだ。イチゴ大福用の小豆と砂糖も手に入れた。問題は求肥の材料がもち米って言うことだ。そんなものは、こちらの世界で聞いたことがはない。


「サラ、穀物を色々買って行こう。もしかしたら、イチゴ大福が作れるかもしれない。」


「分かりましたわ。穀物を扱っている商会を片っ端から回りましょう。そのイチゴ大福って絶対食べてみたいですわ。」


「じゃあ、今から、頑張ってみよう。」


 サラと二人、次から次に穀物を扱っている商会を回って穀物を買い集めた。ロジャーがイチゴを狩って来てくれることを信じて。


 正午過ぎ、僕たちが宿に戻るとフロルたちは戻っていたけどクーンとマルコは戻って来ていなかった。僕たちが宿に戻って10分もしないでロジャーが帰ってきた。


「ロジャー、どうだった?食材は全部見つかった?」


「うむ。流石、王都だな。かなり色々な商会を回ったが、今朝凜が言っていたファイヤーバードの玉子とイチゴは手に入れることができたぞ。他にも何種類かの果物と香辛料も手に入った。それから、凜が言っていた苦くて茶色いカカオという物に似たナッツで作った薬も手に入れた。」


「ありがとう。カカオも手に入れたんだ。僕たちも色々見つけたから、錬金術で作れるかどうか試してみるね。まずは、醤油を試してみる。大豆もあるからね。錬金術で作ることができたら、トマトケチャップや香辛料もあるからお好み焼きソースも作れると思うんだよね。」


「うむ。それは、うまい物なのか?」


「調味料だからね。ソースだけ食べる人は居ないよ。」


「しかし、ソースだけ作っても腹には貯まらぬぞ。」


「ソースができたらお好み焼きも焼きそばなんかも作ることができるようになるよ。食用油を大量に買い込んだら串揚げなんかも美味しいかもしれない。」


「その串揚げというのは、いったいどういう物なのだ?」


「うーん。よくわからない。作ったことないから。でも、お好み焼きはうちでも作ったことがあるから大丈夫だと思うよ。」


「お主は、作れるかもしれぬが、問題は、フロルたちが作れるかどうかだぞ。奴ら、お世辞にも料理がうまいとは言えぬからな。」


「大丈夫じゃないかな…。小麦粉と水と刻んだ野菜と玉子を混ぜてフライパンか鉄板で焼くだけだからさ。」


「そうか…。まあ、奴らに作って見せて、何度か練習させれば何とかなるかのう。まあ、凜が王都を出ることができるようになる2日後まで、待たせればよい。それまでは、菓子と干し肉に自分らで作ったスープとパンか何かで我慢させておけばよいだろう。」


「まあ、そうだね。じゃあ、それまでに焼きそば麺の錬金術式も送ってもらうようにするよ。」


「儂も新しい料理が食べられるのが楽しみだぞ。凛、しっかり頑張ってくれよ。」


「それなら串揚げに使う油の術式と作り方を送ってもらおうかな。ウスターソースの錬金術式もね。」


「ピザというのもう作れるのか?」


「えっ?こっちの世界にはピザはないの?」


「聞いたことはないな。」


「私も、ピザなんて聞いたことがありませんでしたわ。でも、チーズを何かに乗せて焼く料理なんでしょう。でも、チーズを焼く料理は、アスペルヒェス(アスパラガス)のベーコンチーズ巻がありますわ。」


「ええ、そのうなの。チーズフォンデュなんてとっても美味しいと思うんだけど…。牛乳がないからできないかな…。」


「チーズフォンデュは、ワインを大量に使うからな、お主らだと酔ってしまうのではないか?まあ、止めておいた方が良いであろうな。」


「ええっ、そうなの…。じゃあ、諦めないといけないかな…。」


「うむ。どうせなら、ボアか何かを狩って焼き肉でもしたらどうだ。フロルは解体を練習していたようだからな。それならできるのではないか。まあ、追手が来る心配があるなら、難しいだろうがな。」


「それじゃあ、乾麺なんてないの。茹でて野菜や干し肉と一緒に炒めて食べるような物。」


「乾麺か…。市場に売っておるかもしれぬぞ。あまり旨いという印象はないがな。どうやって食べるのかも知らぬからな。」


「ううん…。遠征中は、一体みんな何を食べているの。」


「「干し肉と堅パンだな。」ですわ。」


「それに、水だな。生きて行くために必要な食い物を準備できれば何とかなるからな。」


「でも、私たちは、そんな野営や遠征はしたことないですわね。今回の護衛依頼中も毎日おいしい物ばかり食べていましたわ。」


「お主ら、それは普通ではないのだぞ。大体、護衛任務の最中に狩りをして、肉を手に入れるなどあっても極わずかな量を運良く手に入れられるだけだからな。」


「それなら、僕たち、とっても運が良かったんだね。」


「うーむ…。あれだけ大量の魔物に襲われることが運が良かったと言えるかどうかはちと疑問があるがのう。」


「やっぱり、今日からの食事をフロルたちだけで作るのは無理そうだね。今日の晩の分は市場で買って行くようにしてしばらくは、今、作ることができる物とパンで我慢してもらおうかな。フロルのストレージならパンも5日間くらい悪くならないんじゃないかな。」


「そうじゃのう。そうしてもらうか。」


 結局フロルたちのご飯は、僕がコテージに向かうまで自分たちで何とかしてもらうことになった。まあ、クーンとマルコが居るから、もしかしたら、美味しいご飯が食べられるかもしれない。期待薄だけど…。




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