第109話 地下付きコテージ

 マルヨレインさんのお店から帰ってお風呂を売っている道具屋に行った。風呂桶を買ってコテージにセットするためだ。だって、久しぶりにお風呂に入ってみたい。リニが居たらコテージの地下に浴室を作ってもらうのに…。


「コテージに風呂をつけようと言うのか?」


「うん。コテージの地下にお風呂があったら便利だと思うんだけど、排水をどうしたら良いかな。」


「大き目のマジックバッグを下水溝の所にセットして、たまった水はお主が収納して素材として再利用すればよいのではないか?」


「ええっ…。お風呂に使った水を再利用するの…。何か汚い気がするんだけど…。」


「お主のアイテムバッグは、水を浄化することはできぬのか?例えば、泥水だったり、汚かったりする水を収納して、汚れや混じった物を取り除いて純粋な水として取り出したりはできぬのか?」


「そんな使い方をしたことないよ。それができたら、色々混じった物を収納してもそこから必要な物だけ取り出すことができるんだよね。」


「凛、それってすごいな。俺のストレージでもできるのかな…。出来たらすごいぞ。試してみるぞ。」


「フロルのはストレージだからのう。アイテムボックス程正確な選別はできないと思うのだが…。儂のストレージとは違うからな。サーチもイメージが大切だ。色々試してみるのが良いだろう。」


「うん。頑張るぞ。凜も色々試してみたら良いぞ。」


「うん。飲み水として取り出すんだね。でも、体を洗ったり、水を入れ替えたりするときには、マジックバッグに排水を流し込まないといけないんだよね。それじゃあ、マジックバッグを買いに行かないといけないな。」


 僕とフロル二人で道具屋を回って容量が大きなマジックバッグを買いに行った。見つけた金貨3枚で購入したマジックバッグは、馬車2台分位の容量だそうだ。お風呂だったら7人で入っても3日分くらいは十分収納できるはずだ。


「凛、今から王都の外に出てこのマジックバッグを地下室に取り付けてみようか。」


「でも、地下室を作るのには土魔術が使えるリニが居ないと無理じゃない?」


「俺が地面の土を収納してみたらどうかなって思ったんだぞ。イメージ通りに土を収納する練習だぞ。」


「そうだね。思ったように土を収納して、そこに戻す練習だね。」


「そうだぞ。今から王都の外に出てやってみるぞ。」


「うん。やってみよう。」


 フロルと二人、王都の門を出て、自転車に乗った。自転車で30分程走って草原にやってきた。サーチで人の気配を探ってみたけど50km四方には誰もいない。考えると30分で王都から50km以上離れたんだからすごいスピードで走ってきたんだと思う。


「じゃあ、俺からやってみるぞ。」


 フロルは、手を地面に着くと集中していた。


「収納!」


 フロルの手をついた所から正方形の穴ができた。深さは50cm程度だ。


「四角く土を収納することはできたぞ。」


「それじゃあ、元に戻してみて。ぴったり平らにできる?」


「やってみるぞ。」


 フロルは四角くあいた穴の上に手をかざした。


「ストレージオープン」


 ストっと小さな音がして土が戻され、穴が塞がった。


「フロル凄い!ぴったり穴が塞がったよ。」


「じゃあ、コテージの床の基礎を出すよ。枠に沿って深さをスケールと同じ深さにするんだよ。」


「分かったぞ。出してくれだぞ。」


 コテージの基礎枠を出してスケールの留め具を外す。


「じゃあ、やってみるぞ。」


 フロルは、枠の内側ギリギリに手をついて集中している。


「収納!…、ダメだ。浅いぞ。」


 枠に沿って広く収納しようとすると深くまで取ることができないそうだ。


「一度元に戻して。」


 元に戻した土はぴったりはまって表面に薄い線が見えるだけだ。


「フロル、今のじゃあ深さが半分と少しくらいだったから、半分ずつ収納してみたらどうだ?」


「どういうことだぞ。」


「今から線を引くからな。引いた線からフロル右手側の半分を収納してみて。深さをしっかり意識して収納してよ。」


 僕は、枠の中央に足で線を引いた。その線から自分側の左手側と右手側に分けて収納してみたらどうか試してもらう。フロルが移動して収納したら穴を埋める時に同時に戻すことが難しくなると思ったからだ。


「右側の穴はスケールよりも数ミリ深かったけど大丈夫だと思う。次は左側だよ。同じ深さになるように気を付けてよ。」


「収納!」


「ばっちりだよ。じゃあ、一旦、枠を戻してコテージを建ててみるね。」


「収納。…、アイテムボックス・オープン・コテージ。セットだ。」


 フロルが作った穴にピッタリはまった。やっぱり数ミリなら全然大丈夫みたいだ。


 僕たちは、コテージの中に入って、建物がきちんと建っているかどうかをチェックした。勿論結界は有効にしている。地下室に入って風呂桶を取り出した。洗い場を作らないといけないから僕たちだけじゃ無理だけど風呂桶をセットする広さは十分にある。トイレの場所と別々にしても余裕だ。お湯は、風呂桶から直接汲んでも良いけど、洗い場から風呂桶にお湯を引いて、洗い場用にお湯汲み場をを作っても良いかもしれない。


 洗い場用の床は作っていないけど、せっかく風呂桶をセットしたから、風呂桶にお湯を張ってみたいな…。


「フロル。折角だからお湯を貯めてお風呂に入ろうか。」


「でも、帰る時に冷えて風邪をひかないか?」


「あっ…。そうか。じゃあ、今日はお風呂は諦める。外に出て、コテージの収納訓練をしようか。」


「そうだな。収納は慣れている凜に任せるぞ。」


「OK。じゃあ。結界を消して、外に出るよ。」


 外に出ると直ぐにコテージを収納した。


「穴を埋めてみるぞ。」


「うん。お願い。」


「ストレージオープン」


『ズザッ』


 フロルは、2つ一緒に土のブロックを穴に戻すことができたようだ。


 さっきよりもコテージがあった場所に窪みがはっきり見える。でも、直ぐに消えてしまうくらいの跡だ。


「うまくいったようだね。」


「うん。これでリニが居ない時でも地下室付きのコテージをセットできるぞ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る