第107話 手土産の準備
昨日はロジャーは僕たちが起きていた時間には戻ってこなかった。でも、朝食の時間には起きて来ていた。その時に、正午の鐘の鐘の前にマルヨレインの店に行くことを伝えられた。
その前にお菓子の材料を買ってこないといけないらしい。できればフルーツタルトの材料が良いらしいけど、冬が近くなっているこの時期に果物があるかどうかが分からない。
「分かった。リンジーと僕、フロルとサラで王都中を走り回ってもフルーツタルトとクッキーとええっと何だったっけ。」
その内レミに向こうのお菓子の錬金術式と材料を送ってもらわないといけないな。チョコレートなんかはこっちの世界にはないからな…。代わりになるような材料があれば良いんだけど。
今僕が作れる甘味はフルーツタルトとクッキーもどきの焼き菓子だ。自信があるのはフルーツタルトだけどな。
マルヨレインさんの店に行く1時間くらい前、朝5の鐘が鳴った時、僕たちは材料を持って宿に帰ってくることができた。
「流石、王都なんだぞ。もうすぐ冬になると言うのに色々な果物があったぞ。」
「ミルクプラントの汁もあったわ。」
「薬草や香辛料も見つかったよ。これだけあれば、フルーツタルトもクッキーも作ることができる。」
「うむ。では、クッキーを作ってくれぬか?一応試食もしておかぬと心配ではあるのだ。」
「クッキーもフルーツタルトも作ってみるね。皆で少しずつ試食してみよう。でも、マルヨレインさんの店に行ってみんなで食べるのだからそうたくさん試食で食べる訳にもいかないけどね。」
「アルケミー・タルト生地。アルケミー・クリーム。アルケミー・カットフルーツ。」
材料を先に錬金する。
よし。できた。
「アルケミー・フルーツタルト・10。…、できました。」
アイテムボックスの中には10個のフルーツタルトができていた。次は、クッキーだ。
クッキーは、一発錬金ができる。でも、家庭で作った焼き菓子みたいなものだから、舌の肥えたマルヨレインさんに気に入ってもらえるかどうかは微妙だ。
「アルケミー・クッキー・20。…、できた。」
フルーツタルトとクッキーを作ってみんなで試食をしてみた。
「サラは美味しいと思いますわ。このクッキーは、例えば、ジャムを塗るとか蜂蜜をもっとたくさん入れるなんてできると思いますわ。美味しく食べる方法なんていくつだってありますわ。フルーツタルトは最高ですわ。これは、完成された味だと思いますわよ。」
「俺も、フルーツタルトはうまいと思うぞ。クッキーは、サラが言うように色々な食べ方ができるように何種類かのフルーツジャムと蜂蜜を狩ってきたらいいぞ。」
「俺は、両方ともうまいと思う。何ならフルーツジャムを買いに行ってこようか?俺ができるのはその位だから。」
「リンジー一人に任せていたら駄目ですわ。サラも一緒に行きますわ。ジャムは色々あって美味しいジャムを探すのは難しいですわよ。」
「ううっ。ジャム選びってそんなに大変なのか?じゃあ、サラもついて来てくれ。」
二人がフルーツジャムと蜂蜜を探しに言った後、僕は、マウンテンバイクのタイヤに魔石を合成することにチャレンジしていた。本当なら、シリコンゴムに魔石を合成して、その後タイヤに成型してもらったのをマウンテンバイクに着けて…。つまり、リニに作ってもらった後に錬金術式を作った方が楽なんだろうけど、居ないからしょうがない。
タイヤだけに魔石を合成するなんてかなり高難度だと思う。
「マテリエ・フュージオニス・シリコンゴム、魔石。」
一つ一つの素材をしっかりイメージして合成する。
10分くらいとっても集中して錬金した。できたかな…。
「ロジャー、王都の外に出て行ってタイヤの部分にしっかり魔力が通るか確認してきてくれない?」
「うむ。時間も少ないからな。急いで外に出て確認してくる。任せておけ。」
そう言うマウンテンバイクを受け取ってストレージに収納して外に走って行った。
「凛、マルヨレインさんに術式は全部渡すのかだぞ?」
「分からない。マルヨレインさんが持っている情報次第かな。」
「それなら、どんな情報を何と交換するのかを決めておかないといけないぞ。」
「その辺の駆け引きはロジャーにやってもらおうと思う。僕じゃ無理かな。そもそも、何が重要な情報かが判断できないし。」
「それもそうだぞ。師匠なら、その辺りは、上手く話しを進めてくれるはずだぞ。」
「うん。僕もそう思う。」
暫くして、ロジャーが戻ってきた。笑顔だ。
「大丈夫だったぞ。魔力がうまく通るようになって縮地で空を飛ぶこともできるようになった。」
「よかった。それなら、ロジャーが持っているマウンテンバイクと同じくらいの性能になったんだね。」
「そうだな。身体強化に耐えるマウンテンバイクになっておるぞ。」
「ただ今ですわ。」
サラとリンジーが帰ってきた。
「美味しそうなジャムを10種類くらい買ってきましたわ。それと高級蜂蜜も手に入りましたわよ。きっとマルヨレインさんも気に入ると思いますわ。」
「ねえ、そのジャムの材料のフルーツもある?」
「在りますわよ。でも、錬金術で作れるかどうかは、分かりませんわよ。」
「試してみる。何となくできる気がするんだよね。」
サラからジャムを受け取ると全部アナライズして錬金術式を構築してみた。マーマレードジャムは錬金術式で作ることができなかったけど、その他のジャムは作ることができた。マルヨレインさんのお気に入りがマーマレードジャムじゃないことを祈るだけだ。
「では、出かけるかのう。この人数なら全員で大丈夫であろう。」
「俺も行っていいのかだぞ?」
「なぜそのようなことを聞くのだ?」
「俺は、獣人族だから、行ったらまずい所があったりするんだろ?」
「誰もそのようなことは気にしておらぬ。それに、そのようなところになら全員で行こうなどとは言わず最低人数で行くから気を使うな。お主一人残しておくようなことは絶対せぬ。」
「うん…。分かったぞ。師匠、ありがとうだぞ。」
僕たちは、5人でマルヨレインの店に向かった。ロジャーが持っていた地図の通りに歩いて行ったから店にたどり着くことができたけど、その店の前に到着しても、小さな扉があるだけで、それが道具屋だとわかるようなものは何もなかった。これじゃあ、いくら探しても見つからないはずだ。
その小さな扉についているノッカーを鳴らすと扉が独りでに開いた。ロジャーを先頭にみんなで中に入る。中に入ってすぐ、たくさんの魔道具が飾られている店先の奥、カウンターの向こう側にマルヨレインさんは座っていた。
「あら、えらく大人数で来たのね。いらっしゃい。」
「うむ。ちょっとした手土産を持って来た。歓迎してもらえるかのう。」
「勿論甘い物でしょう。大歓迎よ。」
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