第103話 テラとリニ
「ロジャーは、昨日返ってきたのかな?」
「どうだろうな。俺たちが起きている時間には帰ってきていなかったようだけど。部屋に行ってみるか?」
「遅く帰ってきたのなら、もう少し寝かせてあげた方が良いぞ。」
「そうだね。もう少し寝かせてあげようか。」
「じゃあ、サラを起こしてくるか。」
「そうだね。リンジーお願い。」
リンジーがサラを起こしてきて僕たちは食堂に降りて行った。
「テラ姉は、昨日戻って来ませんでしたわ。ロジャーさんは戻ってきたのですか?」
「多分戻っていると思う。中に気配がするから。でも、まだ寝ているんじゃないかな。昨日は遅かったようだから。」
「じゃあ、私達だけで、朝ご飯に行きますわよ。」
王都の宿の朝ご飯は…、まあ、美味しかった。でも、ボーススタッフの宿屋の食堂の食事と比べてどちらが美味しいと聞かれたら…、うーん。迷う。一番最初に美味しいと思った食べ物は強烈に印象に残っている。そのせいだとは思うけどやっぱり…、迷う。
朝食は、時間をかけてお腹いっぱい食べる。それは、この世界の常識だ。そうしておかないと夜までもたない。朝食を終えて、ロジャーの部屋に言ってみた。
ノックをすると中から返事があった。
「うむ。入ってくれ。」
みんなで中に入った。
「すまぬ。テラたちを見つけ出すことはできなかった。」
「そうなんだ。でも、テラたちが行った場所は分かっているんでしょう。」
「うむ。わかっておる。そこでお主らに頼みがある。」
「何?テラたちを探しに行くの?」
「そうだ。しかし、ただ探しに行くだけでは、居場所は教えてはくれぬだろう。それで考えたのだ。服と装備そうだな。スクロール。洗浄のスクロールを届けてくれぬか。」
「それは、
「そうだ。
「分かった。」
「ロジャー様、それでどこに行ったらよいのですか?」
「ヴィルケス商会だ。商店街の外れにある。そこに行って、昨日やってきたテラたちの荷物を持って来たと言うのだ。」
「分かりました。」
「今すぐ行った方が良いのか?」
「うむ。そうしてくれ。しかし、一人ひとり別々に行くようにしてみてくれぬか?テラとリニの荷物は、サラとリンジー、シモンとマルコそれにクーンの荷物はフロンで良いか?フースとルカスの荷物は凛が持って行ってくれ。下着と服だけで良い。武器と防具は持って行かぬようにな。取り上げられてしまう。」
「分かりました。準備してすぐに出かけます。シモンさんたちの荷物はロジャー様が持っていらっしゃるのですか?」
「うむ。預かっておる。そこに出すから持って行ってくれ。」
僕たちはシモンさんたちの荷物をロジャーに受け取った。テラの荷物は僕がまとめて預かっていて、リニの荷物はフロルが預かっている。それぞれ必要な荷物を振り分けて行く順番を決めた。一番に行くのはテラたちの荷物を持って行くサラとリンジーだ。
「
「うむ…。聞いていないことにしておいた方が無難であろうな。行先だけは聞いていたが、何をしに行ったかは知らぬことにしてえくのだ。多分、商会の者もお主らにその訳を知らせはせぬだろう。」
「分かりましたわ。では、行ってまいります。」
サラたちが出かけた後、僕たちは次の作戦を話し合った。
「次は、誰が行ったら良い?」
「次か…、まずサラたちがどの位の情報を掴んでくるかにもよるが、次は凜が行ってみないか。二人分だしな。フース達には銀貨2枚を持っていってみてくれ。フースにあずかっていた服と下着、それにお金を持って来たと言うのだ。二人から銀貨2枚を預かっていたけど、どちらからいくら預かっていたことになるのかは分からないとな。」
「どうして?」
「お金だと、見ず知らずの者に預けられないだろう。直接手渡したいと言い張れる。」
「分かった。言い張ってみる。」
「師匠、凜の次は、何を持って行ったら良いんですかだぞ。」
「フロルには、食い物を持って行ってもらうかのう。凜が持って行ったお金でもダメな時はだがな。まあ、そんなことはないと思うがな。」
「分かったぞ。シモンたちに届ける食い物って凜のお菓子が良いと思うぞ。そして、それなら材料を買いに行かないといけないぞ。」
「僕のお菓子って錬金術で作ったお菓子を持って行くつもりなの?」
「そりゃあそうだぞ。凛のお菓子は、多分王都じゃ食べられないぞ。」
「でも、どういう理由でそのお菓子を持って行くつもりなんだよ。お金や着替えはともかく、お菓子なんて届ける理由ないでしょう。」
「うーん…。シモンは凜のお菓子が食べられないと持病がひどくなるとかはどうだぞ?」
「そうか…。それは良いかもしれぬな。食い物ではなく薬だと言ってポーションを持って行くのは良い手かもしれぬぞ。いつも飲んでいる薬だとか言ってな。でも、高価なものだから直接手渡さないといけないなどと言ってみよ。そして、高級回復ポーションを持って行け。良いな。そのような物を人に預けるなどできぬからな。」
「分かったぞ。凛のお金でダメな時は、凜が作った高級回復ポーションを持って行くぞ。」
「分かった。回復ポーションなら直ぐに作ることができるよ。」
「作っておいても邪魔になる物ではないからな、リンジーたちを待っておる間に作っておいてくれぬか。」
「うん。分かった。」
僕が高級ポーションを100本作り終わってもリンジーとサラは帰ってこなかった。もしかしたら二人はテラとリニに会えたのかもしれない。
二人が出ていってどのくらい時間がたったかな。正午前に帰ってきた。
「テラとリニに会ってきたましたわ。」
サラとリンジーはが笑顔だ。
「サラは、割と大きな商会にいましたわ。それから、特に契約書に変なところはなかったようだと言っておりましたわよ。」
「リニは、工房だった。下働きだけど、仕事を覚えたら、親方の下で鍛冶師の修業が積めると言っていた。ただ、下働きなのに色々な道具を買わないといけなかったらしいんだ。」
「そう言えば、テラも商会の制服を2着も買わされたって言っていましたわ。それに商会で扱っている品物も勉強のために買わないといけないそうですわ。」
「うむ。まあ、一人前になるためには、自分の商会の商品は良く知っておかねばならぬとは思うが、購入させてまで勉強させる必要があるのだろうかのう。」
「じゃあ、次は僕だね。お金を預かっていたから直接手渡したいと言い張るんだよね。」
「まあ、下着とスクロールでも会えたのだからお金だと直ぐに許可されると思うがな。そう言ってみてくれ。」
「うん。じゃあ、行ってくる。」
今回は、僕一人で行く。商会までは20分もかからなかったと思う。でも、お金を持って来たと言ったらフースとルカスの就職先を教えてもらうのに30分くらいかかった気がした。色々な人がいつ預かったのかとか、どっちにいくらなのかしっかし教えろとか色々聞いてきたけど、一月以上前だったから、本人たちにいくら預かっていたかを伝えないと良く分からないこと、もしかした二人とも僕に預けていることを忘れているかもしれないことなんかを伝えたけどそれでもこんなに時間がかかった。
「かなり待っているんですけど、フースとルカスの就職先はまだ教えてもらえないんですか?早くお金を渡して帰りたいんですけど。」
「ちょっと待ってくれ。別に会わせられない訳ではないのだが、フースとルカスの二人は、今訓練中なのだ。発現した属性の攻撃魔術が扱いやすい物だったからな。二人とも傭兵部隊に雇われたのだ。」
「遠征か何かに出ているのですか?」
「いや、王都内には居る。しかし、訓練場で基礎体力訓練や基礎魔術の訓練、剣術の訓練を行っている。あなたをどこに案内したら良いのかが良く分からないのだ。それで、幾ら預かっているのだ?」
「えっ?さっきの伝えたと思うのですが…、二人合わせて銀貨2枚です。」
「銀貨…、銀貨ですか…。どうやってその銀貨を手に入れられたのか知っていますか?」
「依頼です。ロジャーに魔道具を借りていましたから配達の依頼を中心にかなりたくさん受けていました。その時は、僕しかギルドカードを持っていませんでしたから、蓄えたお金は預かることが多かったんです。」
「そうなのですね。分かりました。それでは、今日届けるのはその銀貨2枚だけですか?」
「いいえ。着替えと洗浄のスクロールを置いて行ったままだったんでそれも持ってきました。」
「あなたたちは、洗浄のスクロールをいつも持ち歩いているんですか?そんなに金銭的に余裕があったのですか?」
「いいえ。僕が錬金術で作ることができるようになったんで、材料を集めてきてもらった時に分けてあげたんです。」
「あなたは錬金術師なのですか?いやあ。素晴らしい。まだ成人も迎えていないのにスクロールの錬金ができるとは…。将来有望ですね。」
「僕のことより、フースとルカスにいつ会えるんですか?」
「ああ…、そうでしたね。待って下さいませんか?今連絡を取っているとこなんです。上官に当たる方の許可を貰わないと、訓練を抜けることもできないものですから。まあ、いくらかお金を出せば、直ぐに時間を作ってもらうことができるんですけどね。」
「お金って…、いくらくらい必要なのですか?」
「最低、銀貨1枚ですね。確実に時間を作ってもらうなら銀貨2枚ですかね。」
「えっ?それじゃあ、フースさんたちに渡すお金が無くなってしまいます。」
「そ、そうなんですがね…。訓練がない日を待っていただければ、きっと会う場所と時間をお知らせすることができると思います。どうなさいますか?着替えやスクロールを受け取りの方を優先したいかフースさんたちに聞いてもらいましょうか?」
「わ…、分かりました。聞いてみて下さい。」
少し時間がかかるということだったから僕は商会をでて宿に戻ってきた。連絡は冒険者ギルドにしてもらうようにお願いしている。ロジャーと一緒の宿をとっていることは知られたくない。ギルドにも僕たちの宿知らせないようにお願いしておかないといけない。お金がないのにこんな高級な宿に泊まっていたらおかしい。
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