第94話 忠告

 僕がギルドに公開しようと思ったのは、ダンジョンで手に入れたスクロールだ。


「どのような錬金術式だ?」


「酸攻撃のスクロールと粘着網のスクロールです。」


「何だそれは。」


「スライムの酸攻撃をするスクロールとダファビーニアの粘着液を網にしたもので攻撃するスクロールです。」


「それは、かなり強力なスクロールではないか。そのような物を公開しても良いのか?」


「完全公開という訳ではありません。それに見合うような攻撃スクロールとの交換であればです。」


「ということは、ギルドが秘匿しているスクロールとの交換ということか…。うむ…。しばし待っておれ。」


 そう言うとギルマスは執務室から出て行った。暫くして。


「待たせたな。この町のギルドにはお主の持っているスクロールに見合うだけの攻撃スクロールは持っておらぬ。持っているのは、エアカッターのスクロールのみ。それで良ければ、交換せぬか?」


「エアカッターのスクロールは所持しいます。残念ですが、錬金術式の交換は、次の機会にということで。」


「残念だが、そう言うことになるな。王都の錬金術師ギルドに行けば、もっと強力な攻撃用のスクロールが秘匿させている可能性はある。あまり勧めはせぬが、お主らがどうしても攻撃用のスクロールが欲しいのであれば、王都の錬金術師ギルドに行って探しても良いかもしれぬな。しかし、あまり勧めはせぬぞ。王都のギルドは何かと良くないうわさも聞くからな。」


「悪い噂?」


「うむ。かなりあくどい方法で錬金術式を集めているらしい。ギルド職員にも裏の仕事に携わっている者がいると言う噂もある。まあ、王都は大きいからな。表の組織と裏の組織があるギルドが多いと言うのも聞く。」


「忠告有難うございます。気を付けます。」


「うむ。しかし、気になるスクロールだな。もしも、可能なら錬金術師ギルドのスクロールの試験場で性能を見せてくぬか?さすれば、その性能に見合ったスクロールを探して出してやるぞ。」


「本当ですか!是非、お願いします。」


 僕は、ギルマスについて試験場降りて行った。試験場は地下にあったからだ。


「まずは、酸のスクロールを見て下さい。」


 僕は、酸のスクロールを構えて、魔力を流した。


『ビュッ、ビュ、ジュッ、ビュ、ビュ、ジュッ、ビュ、ジュッ、ビュジュッ、…』


 酸弾が着弾した場所から煙が上がって刺激の強いにおいが出ていた。


「ほう、これは凄い。かなりエグイ効果だ。素材は傷んでしまうが、自分の命を守るには力になるスクロールだな。」


「次は、粘着網のスクロールです。これは、素材にやさしい攻撃が行えますが、攻撃力は高くないです。じゃあ、見て下さい。」


 僕は、粘着網のスクロールに魔力を込めた。


「ドビュッ、ドビュッ、ドビュッ、…。」


「うぉっ!何だ、それは。」


「粘着網です。どうですか?」


「うむ、使用実績はあるのか?」


「はい。フォレストウルフは、80体くらい討伐しています。」


「そ…それは、凄い実績だな。何人で80体ものフォレストウルフを討伐したのだ?」


「未公開のダンジョンで30体ほど倒して、つい2日程前に50体ほど討伐しました。両方とも12人でです。」


「その12人はCランク冒険者のパーティーが居たのか?」


「Bランク冒険者のロジャーは居ましたけど、ロジャーはシロッコに対応していましたから、僕たちその時はEランクの4人とFランクの3人で討伐したことになりますかね。」


「そうか。そこまでの実績があるスクロールなら、中級以上の価値はあるな。分かった。それに見合う攻撃用のスクロールが手に入った時は、必ず知らせる。」


「あの…、資料室には攻撃用のスクロールってありますか?」


「ん?初級攻撃用のスクロールならあるぞ。係に聞けばすぐに出してもらえると思うぞ。」


「そうですか。ありがとうございます。係の人に聞いてみます。」


「凛。お主らは、王都に行くのなら、マルヨレインの魔道具店に行ってみるが良い。面白い魔道具が置いてある。しかし、その店を勧めるのはそれだけが理由なのではない。マルヨレインは、そこの店主で少々変わり者ではあるがな、表と裏の情報を持っている情報通なのだ。」


「情報通ですか…。あの…、例えば、人探しとかはお願いできる方でしょうか?」


「どうだろうかな。王都では、元締めと呼ばれているらしいからな、頼むことはできるかもしれぬが…。しかし、そこに行く時は、変わった物を土産に持って行かないとならぬぞ。このスクロールはちょうど良い手土産になると思ってな。気に入ってもらえれば、色々と融通を利かせてくれるはずだ。」


「あの、マルヨレインさんは、どのような方なんでしょうか…。その方って、男女どちらでしょうか。」


「そりゃあ、マルヨレインって言うくらいだから女だな。男だったらマレインだろう。」


「それであの、おいくつ位の方なんでしょう?元締めって言われるくらいですからおばあちゃんですか?」


「あっ、それは禁句だ。マルヨレインにそんなこと言ったら、情報を貰えないばかりか、消されるぞ。いいな。おばあちゃんなんとこと絶対言うんじゃないぞ。それから、マルヨレイン様も駄目だ。店主って呼ぶのはギリ、セーフ。そう呼んで答えてくれたらどう呼んで欲しいかマルヨレインが伝えたらそう呼べ。店主から始めるのが正解だ。店主様はアウト。店主さんまでは許してもらえる。」


「手土産と呼び方ですね。店主さんって呼ぶって決めました。」


「そうしてくれ。人探しもお願いしてみるが良い。でも、それ以上にマルヨレインの店で色々な物を見てきて欲しい。きっとびっくりするような物がたくさんあるぞ。」


「はい。ギルマス、色々教えてくれて有難うございます。」


「うむ。どういたしまして。王都でも頑張れよ。」


「はい。」


 資料室に行くとサラは、初級火魔術のファイヤーボール、同じく水魔術のウォーターボールのスクロールを見つけていた。僕が資料室に言った後、初級土魔術のロックバレットと生活魔術のライトのスクロールの錬金術式を手に入れた。ファイヤーボールとウォーターボールの錬金術式も見つけ出した。明日からの護衛の為に10本ずつくらい錬金しておこう。


 お昼前に錬金術師ギルドをでてパーティーハウスに戻った。パーティールームに入るとたくさんの料理が並んでいた。明日からの14日分。朝夕2食とおやつを合わせて20個以上の鍋が並んでいる。この後出来立てが美味しい料理が出来上がってくるらしい。


 僕とフロル、ロジャーのアイテムボックスとストレージの中に収納していった。一番最初に食べる明日と明後日、明々後日の分をフロルが収納して、次からの10日分をロジャーが収納。その後にできるのは出来立てが美味しい料理、熱々のシチューや焼き立てのお肉なんかだ。僕が収納して、時々ご馳走として出すことになった。


 その日は、シモンたちも一緒に夕食を食べたけど、夜暗くなるまで食事の準備にかかっていた。明日には、初の護衛依頼が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る